最近、また家の中での怪異現象が起こるようになった
ラップ音は今まで通りなのだが家族のだれでもない声が聞こえるようになった
その声を私もはっきりと聞いた
今日は十五夜の日
昼間に団子など十五夜にいる物を買いだしに行った
夜になり月が囂々と輝いていた
お祭りの開始だ
庭に台を置きそこに十五夜のセットを置いた
昼間の暑さに比べ夜は少し肌寒い
客間の外にある縁台に子供たちが座り各々おしゃべりをしていた
大人たちは客間に座り月を見たり十五夜のセット見たりしていた
月明かりで客間はふんわりとした柔らかい空間になっていた
まだ外は帰宅する人や車の往来で騒々しいのだがこの客間の空間は静寂さが支配していた
むしろ庭にいるほうが外の騒音がよく聞こえる
「おい!オヤジ、酒を飲むなら仏間で飲めよ!!」と私はオヤジが客間で日本酒を飲んでるの見て怒鳴った
「え・・・ちっ!」と言いながらオヤジは日本酒を持って仏間へ行った
「じいちゃ・・・かわいそう」と葵が私に言ってきた
「いやいや・・今夜はお酒を飲む祭りじゃないからね
お月様を眺めるのが主だからね」と説明をした
3人娘たちはオヤジの傍に寄り添った
「じいちゃ・・・月を見ようよ」と楓が話しかけていた
「そうだな・・縁台で月を見るか」とオヤジは3人娘と一緒に縁台に座った
おやつとジュースを飲みながら月を見るのは幸せの時間
ゆったりとした時間が過ぎていく感じだ
「お・・・もうそろそろF子たちが来るよ」とS子に話しかけた
「アニキ達、今夜も撮影とか言ってたけどね、大丈夫なのかな?」
「ここで撮影すればいいと思うけどな」
玄関の方からチャイムが鳴った
「アニキ!!こんばんわ!!!」とF子の大きな声
「あ!F子姉ちゃんだ!あたちが迎えに行くんだぞ」と葵が急いで立ち
走っていった
「カナも~~」と言いながら葵の後を追いかけていった
玄関が騒がしくなった
「アニキ!!これお土産!」と饅頭とジュースをたくさん客間のテーブルに置いた
「おやっさん!!いい酒を手に入れたよ」とS君がオヤジに向かって叫んだ
「おう!!さすが!!」と満面の笑みを浮かべていた
2人で仏間へ行き酒盛りがはじまった
F子が縁台に座ると子供たちが寄り添ってきた
私は思わずスマホで写真を撮った
ん・・・何かの気配を感じた
もしかして・・・和尚様が来そうな予感がする
絶対にオヤジは呼んでるはずだ
時間は夜の10時を過ぎた
「もうそろそろお開きをしましょうね」とおふくろが月見セットを片付け始めた
全員、客間に集まり団子をみんなで分けて食べた
「ここって本当にホテルか民宿の部屋みたい・・・自分の家にいる感じじゃないよね、アニキ」と珍しくF子が私に話しかけてきた
「え・・ゴホッゴホッ」とむせでしまった
思わぬF子の問いかけにびっくりした
「さぁさ・・子供たちはもう寝る時間だよ」とおふくろの優しい声
「3人娘たちは仏間で寝ておくれ」
「Sちゃんたち、酒を飲むならリビングへ行っておくれ」
渋々、仏間から出ていく2人
1時間後に案の定、和尚様が来た
3人はリビングで酒盛りをしていた
仏間には私と子供たちとおふくろとF子とS子とカナちゃんの母親
「私たちも眠くなってきたからね、アニキ、おやすみ」とF子とS子とカナちゃんの母親は寝室へ行ってしまった
「私も疲れが出てきたみたいだよ、F、先に寝るわね」とおふくろ
3人娘たちは布団の中に入りながらおしゃべりをしていた
私もウトウトとなりはじめた
眠気に負けじと瞼をパチパチしはじめた
ガクンとしたときに
ドンッという大きな音がした
娘たちやおふくろがびっくりして起き目が点になった
「パパ・・今の音は何?」と楓がびっくりした顔で言ってきた
「わからない・・・なんだろう?」
「すごい音がしたんだぞ、パパ」と葵までびっくりした顔になっていた
何か物が落ちた音ではない
何かを上から叩き落した音のように聞こえた
「あのぉ~~今の音は何でしょうか?」とカナちゃんのお母さんまで仏間に来た
「アニキ!!ドタバタしたら駄目だよ、もう夜中だよ」とF子のきつい言葉
「いやいや違う違う・・・」
「パパ・・・何の音?」
「全然わからない」
「おい!!F!!何、暴れてるんだよ、酔いが一気に冷めたぞ」とすごい勢いでオヤジが怒鳴り込んできた
「いやいや、暴れてないってば」
「そっか?・・・」
ピンポーン
と突然、玄関のチャイムが鳴った
「わぁ!!!玄関のチャイムだぞ」
「おいおい・・・」
「こんな時間に誰なんだぞ」
「あのぉ~~夜分、すいません、和尚ですぅーー」
え・・・和尚様!?
今日来るって聞いていない
まさか!!・・
「本当に申し訳ないですわい・・・開けてくだされ・・・」
オヤジが玄関へ行った
「おい!!くそ坊主!!てめぇ!!今、何時か知ってるんか?」
「おやじさん・・・すまんのぉ・・・」
「今、開けてやる」
え・・・開けるんかい?
大丈夫なのかよ・・・
「こんばんわ・・・すいませんのぉ・・・」
和尚様だった・・・
「おいおい・・・くそ坊主、来るなら来るで連絡しろよな!!びっくりするだろ!!」
「え・・・オヤジさんからのメールで「家へ来い」と言うから来たんですわい、あれれれ・・・」
「いや・・俺はくそ坊主にメールをした覚えはないぞ」
「えええ・・・そんなぁ・・・これ・・・メールですわい」
「どれ・・え・・確かにな・・・俺のメールアドレスだな
でもよぉ・・メールした覚えはないぞ・・・」
「いや・・この時間にメールを送信してますわい」
「今日だよな・・え・・この時間帯は客間で酒を飲んでた時だぞ」
「和尚様・・・メールを見せてください」と私は和尚様のスマホを覗いた
私はメールの送信時間を見た
私がオヤジに怒鳴った時間だ
たしかにオヤジは酒を持って仏間へ行った
とてもメールをする時間はなかったはずだ
どういうことだ?
私の直感が当たった?
「あ・・そうそう・・和尚様、家に着いたときに何か大きな物音、聞こえませんでしたか?」と私は和尚様に尋ねた
「いやいや・・・聞いておりませんですわい・・・ただ、この家へ来る直前に黒い色をした車が猛スピードで走っていったのは見ましたわい・・・フロンドやリア、全部の窓が真っ黒けだったですわい」
黒い車・・・って・・・まさか・・・・
「オイ・・オヤジ・・・黒い車・・」と私はオヤジの顔を見た
「あ・・・まさかよ・・」と少し驚いた顔をした
「何か?ありましたんですかい?」
「はい・・・」
今さっきの大きな音のことを話をした
「そうですかい・・・何なんでしょうね・・」
「私と和尚様で2階にいる息子たちの様子を見に行きましょう」
「はい、ついていきますわい」
2階へゆっくりと階段を上がった
息子たちの部屋を覗いた
2人とも良く寝ていた
(すごい神経をしてるな・・・)
娘たちの部屋も覗いた
何も異常はない
「和尚様、娘たちの部屋にいてほしいです
万が一のために」
「わかり申したわい」
私は階段を下りてリビングの様子を見た
別段、何もない
そのまま仏間へ戻った
ギィーー
パタン
「え・・どこかのドアが開いて閉まった音がしたぞ」
「俺も聞こえたぞ」
「おっちーー!!おかしいんだぞ、全部のドアは私がすべて鍵を閉めたんだぞ」
しばらく様子を見た
足音は聞こえない
仏間と客間には和尚様と息子たち以外は全員いた
だれも外には行っていないはずだ
私は念のために和尚様にメールをした
和尚様に息子たちの様子を見てもらった
相変わらず良く寝ているとのこと
私は念のために各部屋を見て回った
各部屋は明かりは点いていない
何も変わった様子はない
「あ・・・もしかしたら・・・」とおふくろが何かを思い出したような口ぶりをした
「S子ちゃん・・・もうひとつ、ドアがあるの知ってる?」とおふくろはS子に質問をした
「おっちーー、もう一つのドア?知らないんだぞ」
「F、S子ちゃん、付いてきて・・・」
おふくろの後についていった
「あのね・・今は使っていないのだけど・・・ここ・・・」とおふくろは荷物をとけて指をさした
確かに勝手口みたいな感じのドアがあった
ちょうど、洗濯場の隣だ
ここから庭へ出られる
私は全然知らなかった
荷物が置いてあるのもそうだがまさか勝手口だったとは知らなかった
「昔はここから直接、庭へ出たのよね
でもね・・・段々と使わなくなって荷物をここへ置くようにもなったし・・・」とおふくろは昔話をし始めた
念のためにドアをガチャガチャした・・・
開いたのだ・・・
「え・・・開いたんだぞ・・・」
「ま・・まさか・・・ちゃんと鍵を閉めたはず・・・閉めていなかったのね・・」
ここではなさそうだ
「おふくろ・・・さっきみたいな感じで他にドアはあるの?」と私はおふくろに質問をした
「ううん・・・もうないはずよ・・」という返事だった
では一体、あの音は何だったのか?
「オヤジ・・・すまんが廊下にいろよ」
「そうだな」
オヤジは廊下に座り込んだ
もし誰かが外から入ってきても必ずこの廊下を渡らなければいけない
しばらく様子を見たが何の異変も起きなかった
「もうそろそろ眠たい人は寝てもいいよ」と私は全員に言った
私とおふくろとオヤジ以外は就寝に入った
時計は深夜の1時をさしていた
静寂さが支配をしていた
娘たちはなかなか寝付けないのか3人とも、目を開けていた
「おいおい・・もうそろそろ寝ないとね」と言うと
「うん・・でも・・パパ・・なんか・・・トイレやお風呂場あたりが気になるんだよね」
「でも、ここからはトイレやお風呂場は見えないだろ?」
「うん・・・でも・・・あっちのほうから何かしらの気配を感じるんだよ、パパ」と楓はしきりにお風呂場の方向に目を向けていた
私は仏間からお風呂場あたりを見た
別段何もないのだが・・・
「おい、どうした?」とオヤジが聞いてきた
今さっきの楓の言っていたことをオヤジに話をした
「そっか・・・俺は何も感じないんだが・・・楓ちゃんが言うなら気を付けてお風呂場あたりを見ているよ」
ギィーーー
パタン
「ヒッ!・・・」と私は思わず声が出てしまった
やはり・・隠し勝手口があったあたりからだ
風呂場やトイレもあるけれど・・・
仏間から廊下を見た
オヤジもやはりトイレやお風呂場あたりをジッと見ていた
「おい!せがれ・・・今の音聞こえたろ?」と小さな声でオヤジがつぶやいた
「あぁ・・聞こえたよ」と返事をした
「誰もこの廊下には出てきていない・・しかし・・人の気配がするんだ・・
家族なら必ずこの廊下を行かないとお風呂場やトイレへは行けない
2階からだれも降りてきていない
3人娘も目を大きく見開いていた
「パパ・・・寝れないよ・・それに・・トイレ行きたい・・・」と楓が訴えてきた
「あたちも・・・」
「カナも・・・」
「わかった・・パパと一緒に行こう」
3人娘を連れてトイレまで歩いた
トイレの前に着いた
トイレのドアを開いて中を覗いた
別に何もない
3人娘たちは順に用を出した
ギギギィーー
パタン
娘たちは一斉に悲鳴を上げた
「パパ!!!聞こえたよ、聞こえた!!!」と楓は私の腕をつかんできた
葵もカナちゃんも私の体にへばりついてきた
なんか変だ
トイレやお風呂場のドアは開いていない
やはり・・あの隠れ勝手口あたりからだ
しかし、施錠もしたし物を置いてある
ドアが開くとは思えない
何かおかしい
音をする方向は確かにお風呂場やトイレなのだがどちらもドアは開いていない
この音は現実の音なのだろうか?
ふと私は思った
なにかこの世とあの世のドアが開く音じゃないかと思えてきた
つまり幽霊があの世からこの世へ来ているのではと・・・・
私はオヤジに小声で「あの世からこの世へ・・・」と話をした
「かもな・・・」とオヤジも同様なことを考えていたらしい
しかし、音はするもののそのドアらしきものが見つからない
方角的にはトイレやお風呂場あたり
物理的にドアがあるわけではない
和尚様も首を傾げ
「おかしいですのぉ・・・音はするのにドアがない・・・
一応・・この家の結界はきちんと機能しているので危害が出るとは思えませんわい
まぁ・・何かありましたら連絡してくれればいいですわい」と和尚様は帰って行った
作者名無しの幽霊
なんだろう?
音はするけど物理的なドアが見つからない
この現象は1か月ほどで止んだ
とりあえずは今のところ異常はない
段々と霊現象に慣れてきた感じで多少の現象には驚かなくなった
といっても毎日現象が出るわけではない
週に1回程度だ
家族にも異常はない