うちの一歳になる息子には、人を指さす癖がある。
そして指をさされた人間は、
例外なく、必ず三日後に死んでしまう。
それまで息子に指をさされた人は、親族の中でも3人ほど。その全員が正確に三日後に命を落としてきた。
その死と息子の指差しとの間に、因果関係があるのは明らかだった。
仕方なく息子には日常的に手袋をはめさせることにした。
親指以外の4本の指がまとまったタイプのものだ。こうすれば人を指さすことはできないはず。
指を自由に動かせないのは発育に悪いし、何より哀れだ。私も妻も心こそ痛んだが、致し方のないことだった。
しかし、その日から息子は人を指さす代わりに、ジッと見つめるようになった。
息子に見つめられた知人は、
やはり三日後に亡くなった。
まるで邪視のようだ。
もはや手袋の意味もなく、息子による死の宣告は避けられないものだと、妻ともども腹をくくった。
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息子も三歳になり、言葉を話せるようになった。
ある日、ふと息子の方を見た。
・・・彼は私を見つめながら指をさしている。
いや、正確に言えばその視線も指先も、私の背後の虚空を指しているようだった。
息子が口を開く。
「パパのうしろ、コワイひといる」
作者つぐいら。