短編2
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真っ赤なランドセル

天音空歌の部屋には真っ赤なランドセルがある。空歌のものではない。空歌が背負っているランドセルは、空のように透き通った水色だ。

その真っ赤なランドセルは、空歌がランドセルを買う前から…空歌が物心をついた頃には既にあった。

空歌はこのランドセルに常々思っていることがある。

(何が入っているのだろう…。)

このランドセルは時々、小刻みに揺れる。その事に気づいたのは小学校一年生の時。今も初めて気づいたときも、まるで中に生き物がいるかのようにガタガタ揺れる。しかし、そのことに気づいてから4年経った今でも空歌は中身を見たことはない。見たいという気持ちは十分あるのにも関わらずだ。その理由は明確である。空歌の心の中では、好奇心よりも恐怖の方が勝っていたからだ。

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しかし、今日は違っていた。空歌はお母さんに30点のテストが見つかってこっぴどく叱られて、自暴自棄な気持ちになっていたのである。そして、ずっと側にあるのに中身を知らないという事実に焦れったさを感じてしまったのだ。開けない方がきっと良いという本能を押し殺し、空歌はランドセルの前に立った。空歌は何故かイマイチ盛り上がらない気分を上げようとカウントダウンを始める。

「開けるまで…3…2…1…。」

息をすぅっ…と吸って

「0!」

少し大きい声を出し、真っ赤なランドセルを開けた。

……意外な事にそこには何も無かった。ランドセルの黒い黒い底が見えているだけだ。

(…な~んだ。何もないじゃん…。)

空歌がそう落胆したとき。ランドセルの底が盛り上がった。…いや、空歌がランドセルの底と思っていたのは人間の頭のてっぺんだった。

「開けてくれてありがとう。」

グシャグシャに潰れた少女の顔の口角がつり上がった。

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おっかないよー!ランドセルの底から人の頭!怖いよ!

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