短編2
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トビラ

私は写真を撮りに行くのが趣味だ、旅行に行けば色々な所に写真を撮りに行く。今回はそんな写真を撮りに行ったときの話。

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11月の話なんだけど、1ヶ月I県ヘ出張になったんだ。全くあと少しで免許が取れるのに勘弁して欲しいものだ、と言っても仕事なので行かねばならない。

文句を言ってても仕方が無いし時間もあったので駅前でレンタサイクルを借りて山道へ紅葉狩りヘ行く事にした。

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紅、緑、黄…色鮮に染まる山を電動のクロスバイクで駆け抜ける。しばらくすると別れ道が見えて来た、片方は観光地へ繋がる道、もう片方は…アプリのマップにはそもそも道として認識されていない、何も表示されていないのだ。となると好奇心の赴くままに未知の道ヘ踏み込みたくなるのは人間の性、私は迷わず未舗装の道へ入った。

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道とは言ったが電車のレールの下に敷かれる石みたいなのが大量に敷き詰められているだけの道に微かに轍が残るだけの坂道を登る、とても電動でなければ登れない様な道、車輪を石の上で派手に空転させながら進む、暫く進むと石碑が見えてきた、良く読めないが何かの慰霊碑らしい。一礼して更に先に進む、すると徐行の標識が見えてきた、なんの事はない普通の標識なのだが、色褪せ錆び古い字体の標識は少し不気味だった。

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その奥も同じ様な道が続く、すると脇に少し開けた場所とその奥に古ぼけたコンクリートの壁にアルミとガラスのプレハブのドアが付いてる感じだ、端っこには消えかけた文字で〇〇観測…と書いてある、おそらく国か何かの施設なのだろう、少なくとも昔は。

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道から外れ扉を開きに行くか、そのまま帰るか迷いながらその扉にレンズ見向けてファインダーを覗いていると上の擦りガラスになっている部分を肌色の何かが横切るのが見えた…何か嫌な予感がしたので私はカメラを仕舞い自転車で来た道を引き返す、扉に近づく勇気は無かった。暫く引き返して少し安心した私はふと近くに良い紅葉の木があるのを見つけたので写真に収めようとカメラを出しファインダーを覗いた。

ピピッ。

大きく、それこそカメラの寸前に迫らないと出ない様な顔認証システムの枠が表示された。

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結局その後は何も起きて無い、あの建物は、顔認証システムは何だったのだろう。また行ってみる勇気はもう無い。

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