短編2
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悪戯

「トリックオアトリート!」

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玄関を開けると、扉の外に白いシーツを被った子どもが居た。

身長は110cm程度しか無く、被った布には、目の部分にビー玉程の小さな穴が空いている。

おそらくオバケの仮装をしているのであろうその子の声には、聞き覚えがあった。

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「えぇと…ゆいちゃん?」

ゆいちゃんは、近所に住む兄貴の子どもで、私にとっては姪っ子にあたる。

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「ちがうよ!オバケだよ!お菓子くれなきゃイタズラしちゃうんだよ!」

「いや、ハロウィンは先月末に終わっちゃったんだけど…」

「うぅ…い、いいの!私はオバケなのっイタズラしちゃうの!」

白い布の下でバタバタする少女は、両腕を上げて威嚇のポーズをする。まるでコアリクイのようだ。

ゆいちゃんは私の家までこうして遊びに来る事が度々あった。

小学校に上がったばかりの彼女には、つい最近妹のあいちゃんが産まれたばかりだった。

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「叔父ちゃん叔父ちゃんっ、ゆい、お姉さんになったんだ〜!」そう笑顔で以前話してくれたが、大好きな母親が妹に付きっきりの今は少し寂しいのか、近頃はここへ遊びに来る頻度が増えていた。

兄貴からもどうか構ってやって欲しいと言われていたのを思い出す。

月末は繁忙期で帰りが遅く、私も姪の相手が出来ていなかった。

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「…叔父ちゃん、りんごってね、皮を剥いちゃうと直ぐにおばあちゃんになっちゃうんだよ“せんど”っていうのが落ちちゃうんだって。

だからね、私ね、あいちゃんが早く大っきくなればママを一人占めしないって思ってね、あいちゃんのりんごみたいなほっぺをね…剥いちゃったの。

でもね、あいちゃん泣いちゃった…私お姉ちゃんなのに、意地悪しちゃったの。

だから、ごめんなさって言ったの。でも、それでも泣き止まなくて、だから“おあいこ”にすれば許してくれると思って…」

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震えるオバケの裾から、ピーラーを握る小さな手が伸びる。

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「イタズラのつもりだったの…」

ぱさり、と白い布が落ちた。

Concrete
コメント怖い
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