え・・・・写真が・・・・

中編7
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え・・・・写真が・・・・

珍しくS君が珍しいお客さんを連れてきた

一応S君はあれでもプロの写真家だ

そのお客さんは以前にS君が家族写真を撮影したときに知り合いになったようだ

そのお客さんを仮にBさんと呼ぼう

そのBさんも色々と旅行へ行っては当地の撮影をする趣味があった

まぁ私たちと同じ共通の趣味なのだが・・・

夕方に来られたのでBさんも一緒に夕食をとった

Bさんはしきりに頭を下げていた

こんな時間帯に来るつもりではなかったと頭を下げて謝っていた

いつもの賑やかな夕食になった

食事も終わりリビングで寛いでいた

S君が私を呼んだ

ここではちょっと・・・ということになり

私の書斎室へ私とS君とBさんは部屋に入り座った

もともと狭い部屋なので3人も入ると窮屈で仕方ない

S君が私の耳元でヒソヒソ話をしてきた

まとめると

このBさんは5年前に家族を交通事故で亡くし

今は一人で暮らしている

自分だけどうにか助かってリハビリを受け何とか歩けるようになったとか

一人で家にいると何となく人の気配がする

特に寝室にしている部屋が何となく視線を感じるとか

家に帰ったらテーブルのコップの位置が変わっていたとか

などなど・・・

Bさんはゆっくりと私たちを見ながら話した

一通り話が済むとBさんはため息をついた

「こんな感じなのですよ、我が家は・・・仕事から帰ってリビングの灯りをつけると何となく椅子に誰かが座っていたような感じがする時があるんですよ

もちろん、よく見ると誰もいません

もうあの事故から5年が経ちました

私も重傷を負い何とかリハビリを終えて歩けるまでにはなりました

暇な時間があればあちこち写真撮影をしています

でも・・・何か・・・何か大切なものを忘れてるような気がするんですよね」

と、また、大きくため息をついた

確かにBさんの顔色はあまりよくはない

家に帰ってもだれも話す相手がいない

いつも一人で帰りにコンビニに寄り弁当などを買って一人で食べている

TVをつけながらドラマや映画を見たりしながらの食事だけれど何か満たされない

仕事の疲れて早めに寝てしまう

早く寝る割には疲れが全然取れない

休みの日くらいはとカメラを持ってあちこち撮影をしている

「まぁ・・・こんな話をしても・・・誰も聞いてはくれません

「疲れてるんだよ」とか「病院へ行ったほうがいいよ」とか

わたし・・・職場でも・・・一人なんですよね・・・・

仕事を辞めようかと思うのだけれどももうこんな年では・・・転職は無理だな・・と

ズルズルと・・・ここまで来てしまいました」

ため息をつきながら淡々と語るBさん

私とS君は黙ってBさんの話を聞いていた

「ゴホッ・・・Bさん・・・・もうそろそろ本題に・・・」とS君は咳をした

「あ・・・はい・・・あのぉ・・・ちょっと・・・相談したくてSさんに・・・」とBさんは何かモノを挟んだような口調で話し出した

「まぁ・・俺が話すよ、Bさん」とS君が割り込んだ

S君がスマホの写真を私に見せた

Bさんの家族が写っていた

「それな・・・はじめて俺が写した写真だ・・・

これが最後なんだが・・・・」

私は最後の写真をS君から手渡されて見た瞬間に血の気が引いた

そこには・・・顔や体から血が滴り落ちていた

そう・・・交通事故にあった感じだ

「おい・・・なんだよ、これ・・・」と私はS君の顔をにらみつけた

「おいおい・・・そう睨むなよ・・・俺もこれを見てゾッとしたんだからさ」

「これ・・合成じゃないよな?」

「もちろんだ・・・合成じゃない・・・時間の経過とともに写真の中身が変わっていったんだよ・・・そうだろ?Bさん」

「そうなんです・・・あの日の交通事故から徐々にこの家族写真の中身が変わっていったんです・・・それで私は撮影してくれたSさんに連絡をして確認してもらったんです」とBさんは顔を下に向けた

「Bさんから連絡を受けて確認をしたんだよ、あれは事故から1週間後かな」

「そうです・・・この写真は家族全員が写っている最後のものですから寝室に飾っていたんです・・・ところが・・・1週間が過ぎ2週間過ぎと時間の経過とともに写真の中身が変わっていったんです・・・1週間目の時にSさんを呼んだんです・・・」

「俺も・・・まさか・・という気持ちで写真を見たよ・・・はじめに写したものと少し違うとすぐにわかったさ・・・それでBさんに1週間おきにスマホでこの写真を写すように頼んだよ」

「はい・・・Sさんから言われたとおりに1週間おきに写真を写しました・・・もう・・時間の経過とともに写真の中身が変わっていって、私、正直・・・途中でやめようかと思いました・・・見てて辛いんです・・・」とBさんは今にも泣きだしそうな顔をした

S君が時間の経過とともに変わっていく写真をスマホから見せてもらった

背筋が凍った・・・

間違いなく写真の中身が変わっていっている

どんどんと血の量が増えていた

子供たちも・・・痛みのせいなのか顔が歪んでる

奥さんもだ・・・段々と顔つきが鋭くなっていた

「もう私、耐えきれなくなりSさんにこの写真の処分を頼んだんです」とBさんはS君を見た

「まぁ・・・それで今日、Bさんを連れてきたわけ」

処分っていっても・・・俺に言われてもな・・・

こりゃ和尚さんを呼ばなきゃ

「まぁ・・とりあえず・・・少し休憩しましょう」

私はリビングへ行った

(あれ・・・なんで明かりがついてるんだ?・・・確か消したんだけとな・・

オヤジかな・・・)

3人分のお茶をコップに入れ書斎室へ戻った

「もうそろそろ寝ようか」とS君は自分の腕時計を見た

もう午前2時を過ぎていた

「だな・・・眠くなってきたし」と私

「もうこんな時間・・・本当にすいません・・長話をしました」とBさんは頭を下げた

S君とBさんは娘たちの部屋で寝てもらうことにした

もちろんBさんにも薬とお守りを持ってもらった

私はBさんの詳細をメールに書き和尚様へ送った

私も眠くなってきた

リビングへ行こうかな

おい・・・まただ・・・リビングに明かりがついていた

おかしい・・・

確かに消したはずだ

オヤジかぁ・・・

いや・・・リビングへ行くには渡り廊下を通るはずだ

誰も通っていない

眠気が・・・・

ウトウトと・・・

1時間ほど寝たのかな・・・目を開けた時に部屋が暗くなっていた

消した覚えはない・・・

背筋に氷のような冷たい冷気が走った

時計を見ると午前4時を過ぎていた

誰だ、明かりを消したのは・・・

午後に和尚様が来てくれた

事の詳細を私やS君、Bさんが話をした

和尚様も話を聞くうちに段々と難しい顔に変わっていった

「わしゃ・・・こりゃ・・・この写真を見たときに・・・奥さんたち・・相当なこの世の未練を残しておりますわい・・・一旦、この写真を寺へ持っていき供養はしますわい

ですが・・・この事故・・・いや・・・とりあえずはわしゃは一旦戻って準備をしますわい

明日には必ず、おやじさん、F君、S君、Bさん、お寺へ来てくだされ

一昼夜の供養になりますわい」といいつつ写真を和尚様に渡した

私はふと和尚様が「この事故・・」と言ったときにBさんの顔が一瞬強張ったような気がした

わたしは何か違和感を感じた

さて・・・明日へお寺へ行く準備をしないとね

夕方になり大問題が発生した

なんと!Bさんが見当たらない

どこへ行った?

お昼過ぎまではいたはずだ

私は急ぎ和尚様にBさんがいなくなったことをメールをした

私の携帯が鳴った

「メールを見ましたわい・・えらいこっちゃ・・・

この供養の真の目的はBさんなんですわい

もちろん奥さんやお子さんも供養はしますが

一番肝心のBさんがいないと供養の意味がないんですわい

とりあえずは供養の準備は出来てますわい

最悪、3人で来てくだされ」と言い切れた

本当に最悪

主役のBさんが行方不明

とりあえずは和尚様の寺へ行ってきた

写真を供養し私たちの体に憑いている諸々の霊などもお祓いをした

憑いていたといってもそんなに力のある霊ではない

ただ、そのまま憑かせているといろいろな霊が寄ってくるからとついでにお祓いをしてもらった

楓を連れてきて正解だった

やはり相当なこの世の未練を残していたようだ

納得させるのに相当時間がかかった

楓の力を貸してもらい何とかという感じで一応は供養は終えた

さて・・・肝心のBさん・・・

後日にやはりというか・・・何というか・・・自殺というか・・・変わり果てた

姿で発見された・・・それも場所が場所だ

なんで例の墓場(私の家から500メートルほどに墓場がある、昼間はともかく「夜は絶対に行くな」と町内会できつく言われている)で死んでるんだ

それも死後1週間が過ぎていた

それにしては腐乱状態がひどかったと例の捜査課長が家に来た時に話をしてくれた

「これは捜査機密だけど・・・」といいBさんの変わり果てた死体写真を見せてもらった

何というか・・・1週間でこんなに変わるものなのか・・・刑事課長も頭を傾げていた

どうみても1週間じゃない

1か月は過ぎてる感じだ

本当に後味の悪い結末だ

Concrete
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@アンソニー
ありがとうございます
はじめて「怖い」と言われました
普通に書いたんですけれどね

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