「おい、F子早く乗れよ」と珍しくS君はF子に対して怒っていた
「Sアニキ!!ちょっと待って」とF子は急いでロケ用のバスに乗り込んだ
珍しく合同での撮影となったらしい
それでこの2人遅刻しそうというか遅刻した
カメラマンやモデル、スタッフなど総勢15人の合同での撮影会だったようだ
ロケ地は九州のある場所で景色のいいところだと言っていた
東京から九州まで2泊3日の撮影会
1日目の時に不思議な体験をしたとS君は言っていた
宿泊するホテルまで後1時間というところで大渋滞にはまった
なかなか前へ進まない
時間だけがどんどん過ぎていく
交通事故か舗装工事か
よくわからないが大渋滞
20分に1メートルも走れればいいほう
東京を朝早く出発する予定だったが2人が遅刻したために1時間遅れの出発になった
高速に乗り休憩をしながらやっとホテルまでおよそ1時間ほどまで来た時にこの状況だ
もう時刻は夜の8時を回っていた
明日は朝6時から準備をして撮影会となる
ホテルへ着くのに遅れれば遅れるほど睡眠時間がなくなる
やっと工事看板が見えてきた
どうやら舗装工事をしてるようだ
作業員や警備員が大勢いた
「舗装工事かよ・・・もう夜だぜ・・・いつまでやってるんだよ」とS君は文句を言った
ちょうど警備員が赤旗を水平にして「止まれ」の合図をしていた
ロケバスは指示通りに止まった
そこから全然警備員は赤旗を降ろさない
「おいおい・・・」とロケバスからのため息の声
私は腕時計を見た
もう午後9時を過ぎていた
こりゃ・・・睡眠時間が無くなるぞ
警備員は無線で相手と何か話していた
警備員がこちらを見て一礼をして赤旗を降ろした
ロケバスがゆっくりと動き出した
「あれ・・・重機とか工事をする機械がないぞ」とS君は窓から外を見て驚いていた
みんな一斉に外を見てS君の言うとおりに道路には何も無かった
あれだけいた作業員や警備員はどこ行った?
あそこだけ工事をしていたのだろうか・・・
「あれ・・・後続車が来てないな」とバスの運転手がしきりにサイドミラーを見ていた
S君も後ろを見てたしかに後続車が来ていない
このロケバスだけ行かせたのだろうか
セキュリティコーンだけが延々と並んでいた
そのセキュリティコーンも無くなった
みんな頭の中が???となった
「あれ・・・警備員はいなかったぞ、作業員も・・・どうなってるんだ・・・」とS君はF子に「外を見ろよ」と指を指した
「たしかに・・・誰もいないよね・・・どうやって相手側の車を止めていたの?」とF子は首を傾げた
「というかよ、対向車が一台も無いぞ・・・この道路は片方は工事をしていたんだ・・だから片側交互交通誘導をしないと正面で鉢合わせになるよ
てか・・・ロケバスだけ・・・後続車もいないし対向車もいない
そんな馬鹿な・・・」とS君は窓の外を見ながら皆に聞こえるように話していた
ロケバス内は騒然となった
前方にまた工事看板が見えてきた
500メートル進んだところで警備員が赤旗を水平にして立っていた
「え・・・またかよ・・・」とS君は小声で文句を垂れた
しかし、今度はすぐに赤旗を降ろして白旗を垂直にして振った
その時にS君は相手の警備員を見て驚いた
「え・・・うそだろ・・・1番目の所にいた警備員だぞ・・・」
1番目と違い作業車や重機がものすごい音をたてながら工事をしていた
「すげぇ・・騒音」とS君は耳を塞いだ
やっと相手の警備員が見えてきた
「やれやれ・・・工事路線はここで終わりだな」とS君はつぶやいた
しばらく走るとまた工事看板が見えてきた
「おいおい!!!3つ目だぞ・・・なんだよ、ここの道路は・・・とびとびで工事をしてるんかい・・・」と半ば呆れた顔をしながら文句を言った
進んでいくと赤旗を水平にした警備員が立っていた
5分過ぎ10分過ぎても旗を降ろさない
対向車は1台も来ない
しびれを切らしたバスの運転手が窓を開けて
「おい・・・いつまで待たせるんだよ」と警備員に聞いた
「ちょっと待っとれ・・・今、相手と話してんだから」とタメ口で答えてきた
バスの運転手は少しムッとしたが仕方ないので待つことにした
なかなか旗を降ろさない
もう30分も待たされた
「おいおい・・いつまで待たせる気だ、早く行かせろ」とバスの運転手は怒鳴った
「はぁ?・・ちょっと待っとれといったんだぞ、そんなに死にたいのか?」と警備員は怒っていた
対向車は1台も来ない
「おい、その口の利き方はないだろ」とバスの運転手は怒った口調で怒鳴った
「だから、「待っとれ」と言ってるんだ、今さっきは素直に待ってたろ」と警備員はこっちを見て怒鳴りつけてきた
「今さっきって・・・」とS君は警備員の顔をよく見た
「ええ・・・1番目の警備員じゃねーかよ・・・なんでここにいるんだよ・・・」とびっくりした顔になった
「あぁ・・そうだよ、1番目にいたさ・・・」と警備員が答えてきた
S君はびっくり
どうやって移動したんだよ
「おまえらな・・いや・・・おまえらを助けてるんだよ」と警備員はそう言いながら赤旗を降ろした
どういう意味だろ?
しばらく走っていると対向車がどんどん走っている
後続車もいた
「え???」とバスの運転手はびっくりして声を上げた
みんなもびっくり
しばらく走っていると警察官たちが交通事故の処理をしていた
「よぉし・・事故の時間は午後9時前後だな・・・もうそろそろこっちは終わる・・」と警察官が無線で話をしていた
玉突き事故で15台ほどの車が事故っていた
午後9時ごろ・・・ちょうど1番目の所で足止めされていた時間だ
そのころに事故が起きていたんだ
え・・・・まさか・・・あの足止めって・・・この事故から守るため?
バス内もそれに気づいたのか騒然となっていた
事故現場を通りかかったときに警備員が立っていた
「だろ・・・こういうことだよ」と聞こえてきた
振り返ったら今さっきいた警備員がいなくなっていた
ロケバス内はパニックになった
「おお!!、ホテルが見えてきた!!!」とバスの運転手が叫んだ
やっとホテルに着いた
「あれれ・・・皆さん、早いお着きで・・・午後9時ごろにつくものだと思っていましたよ・・」と出迎えた女将が笑顔で迎えながらそう言った
ホテルにある時計を見て全員が立ち止まった
午後7時過ぎ
全員唖然となった
私は腕時計を見た
午後7時過ぎなのだ
目を疑った
もう午後10時は過ぎていると思っていたから
一体どういうことだ
あれだけ渋滞していたのに・・・
作者名無しの幽霊
この話をS君から聞いた時には鳥肌が立った
あの道路工事の区間だけが異次元の世界だったのかな
まぁとりあえずは巻き込まれなくてよかった
とにかく交通安全
工事看板が見えてきたら迂回もしくは警備員の指示に従う
事故になれば一番被害を被るのは工事を請け負っている業者と警備会社
事故を起こした者が被害者だけど加害者でもある