長編12
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ラジオ

モワァ~~~

蒸し暑い

7月でこの蒸し暑さ

夏休みもあと1週間前だ

夜なのに蝉がうるさく鳴いている

蒸し暑いのか外を出歩く人が多い

人の声と蝉の声でさらに蒸し暑くなってきた

夕食も終えて

私とオヤジと2人娘は仏間でくつろいた

カナちゃん親子は和尚様のお寺にいる

たまには義理の親子水入らずで過ごすのもいいとおふくろが提案をした

和尚様も快諾してくれた

朝早くに和尚様が迎えに来た

お盆まで滞在予定だ

8月13日ごろには私たち家族もお寺へ行く

オヤジは早速ラジオにスイッチを入れた

落語や歌謡曲などを聞くためだ

オヤジの唯一の癒しの時間だ

娘2人もオヤジの傍で聞いている

クーラーを全開にしても何となく蒸し暑い

冷たいジュースとおやつを娘たちは食べたり飲んだり、おしゃべりしたりと仲の良い姉妹だ

ほとんど姉妹で喧嘩などしない

リビングのほうからおふくろたちの談笑がよく聞こえた

夜も10時過ぎにS君たちがやってきた

週末は「家に寄ることにした」とF子から聞いた

とにかくおふくろの実家の屋敷内は静かすぎて怖いのだという

月曜日から金曜日までは撮影や現像・編集で忙しく疲れてそのまま寝てしまう

土曜日、日曜日は休みにして過ごしているのだけれど夜はかえって静かすぎて寝れないらしい

ここだとお話し相手はいるので安心だとさ

S君が仏間に来た

「おやっさん!蒸し暑いですぅ!ビール買ってきたんで飲みましょう」

「おおお、よくわかってる、飲もう飲もう」

2人で勝手に宴会を始めた

娘たちはラジオを持って私の所へ来た

「パパ・・・じいちゃんたち、宴会始めた・・・パパの所でラジオを聴くね」と楓と葵は私の横に座った

「いいよ、ここでのんびりすればいいよ」

しばらくすると・・・ラジオに雑音が多くなってきた

「電池がなくなってきているのかな」と思い新しい電池に変えた

しかし・・・雑音は収まらずにさらにひどくなった

どの局に合わせても雑音で聞きづらい

「あぁ・・どうしよう・・じいちゃのラジオ壊れたかも」と楓はラジオを振ったりしたが雑音は収まらなかった

たまに雑音に交じって何かの声?音?が聞こえた

「じいちゃ・・・ラジオ壊れたよ」と楓がオヤジにラジオが壊れたことを言った

「え・・ラジオ・・・叩けば直るぞ、楓ちゃん」

「え・・・叩くの?いいの?」と言いながら楓はラジオを叩いた

「じいちゃ、直らないよ」

「直らないかい・・・いよいよ寿命がきたかな・・・どれどれ」と言いながらこちらに来た

「う・・ん・・・電池は変えたんだな・・寿命かな・・・」

((ダ・・・コ・・ドモ・・・ニ・・・ホシ・・・ナ))

「ええ!!はっきりと聞こえた・・・どこの局だ・・・え?・・どの局でもないぞ・・・

雑音に交じって声がしている

何かをしゃべってる

((サイキン・・・ココヘ・・・ニンゲン・・・コナイヨナ・・・ヒル・ニハ・・キテルラシイケドナ・・・ヨルハ・・・コナイヨナ・・・ニンゲンノニクホシイヨナタベタイヨ))

「うわぁつ」とオヤジは叫んでラジオを落としてしまった

「オヤジ!!・・・何だ今のは・・・どこの局だよ・・・」

「いや・・どこの局でもないんだよ・・おかしいな・・・」

ザッーーザッ・・ザッザッーー

ノイズだけが聞こえる

「気味が悪いんだぞ・・・パパ、じっちゃ・・・」と葵が驚いた声を出した

「じいちゃ・・・完全に壊れてるよ、ラジオ・・・」と楓も不審そうにラジオを見ていた

「そっかな・・・」と言いながらもう1度局に合わせた

普通に音楽が流れてきた

「あれれ・・・治ってる・・・」とオヤジは安堵の顔をした

「でもな・・今さっきの・・・声の内容・・・気になる・・・」とオヤジに話しかけた

「確かに・・人のどうのこうのと聞こえたし・・・わからんな」と頭を横に振った

しかし・・蒸し暑い

クーラーが効いていないのではと思うほど暑苦しい

各部屋にある

3台のクーラーがフル稼働してる

こりゃ・・・ブレーカーが飛ぶぞ・・・

本当は書斎で古文書の整理をしたかったけれどとても無理だな

客間の部屋で整理しよう

古文書を客間に運んでクーラーのリモコンのスイッチを入れた

バンッ!!

ブレーカーが落ちた

部屋が真っ暗になった

「あ!!パパ!!部屋が真っ暗けになったじゃん・・・」と楓の大きな声

「ごめん・・ごめん・・・」

リビングのほうから

「もう!!!びっくりするでしょ」とおふくろの声が聞こえてきた

廊下の100均で買ったライトだけが光ってた

2階からも息子たちの抗議の声がした

私は慌てて電源盤へ走った

ブレーカーを元に戻した時に

((おじ・・さん・・・))

と小さな声が耳元で聞こえた

私は「えっ!」と声のした方へ顔を向けたが誰もいない

気のせいだろうと思い客間へ戻った

娘たちも客間へ来て手伝ってくれた

その頃、お寺では大変なことが起きていた

カナちゃんがいなくなったのだ

トイレへ行くと言いながらなかなか帰ってこない

トイレを見に行くと誰もいない

和尚様はじめカナちゃんママや和尚様の奥さんもお寺の中や外を探しに行ったのだが見つからない

突然、私のスマホが鳴った

びっくりしてスマホを見ると和尚様からだった

「夜分、申し訳ないですわい・・・カナちゃんがいなくなり申したわい・・・

お寺の中や外を探したんですけれど見つからんのですわい・・・まだ探しているんですけれど・・・もう少したったら警察へ連絡しますわい・・えらいことになりましたわい」

私はオヤジを呼んだ

ことの詳細を伝えた

「うそだろ・・・やばいぞ・・・とりあえず、お寺へ行く準備をしろよ」

「そうだな・・・急いで準備する」

S君にも教えた

「え!・・いなくなったのか・・・」

「じいちゃ!!!こっちに来て!!」と楓の大きな声

慌ててオヤジが仏間へ戻った

((オイシイ・・・モノ・・・ガ・・・キタ・・ヨウジャデ・・オサナ・・コ

・・・タベ・・・ヨウ))

ラジオからまた雑音とともに声が聞こえてきた

「ま・・ま・・まさか・・・カナちゃんのことか・・・」とオヤジはラジオに耳を傾けた

「おい!!せがれ、ちょっと来い」とオヤジのでかい声が聞こえてきた

「どうした?」

「今な、変な声が聞こえてきたんだが・・・どうも・・・カナちゃんのことかもしれんぞ

・・どうもこいつらの声・・どこかで聞いたぞ・・・あ!!!もしかしたら・・・そこの山の神社の連中かもしれんぞ・・・」

「オヤジ、まさかあの連中がカナちゃんを誘拐したのか」

「あり得るぞ・・・油断したな・・・う・・・とりあえずはあの山の神社へ行ってみるか・・」

「わかった、S君、留守番頼む、オヤジと行ってくる」

「わかった、気を付けてくれ・・・」

私とオヤジは急いで山の神社へ向かった

車から急いで降りた

神社の中はシーーンとして静まり返っていた

ふと私は自宅の方を見た

自宅の家がはっきりと見えた

前の家が3軒更地になり自宅がしっかりとよく見える

私はS君に電話をしてスマホの明かりを点けてもらい振ってもらうように頼んだ

しばらくして・・・家の方から光が見えた

はっきりと見えた

私は次は自分のスマホの光を振るから見えるかどうか頼んだ

「あ・・・よく見えるぞ・・・」

「そっか・・・こりゃ・・何か対策をしないといけないかもな

神社から丸見えというということは物の怪の連中も見えてるということだよ

3人娘たちを見たらえらいことになる・・・」

「だろうな・・・カーテンをしっかりとして外から見えないようにしないとな

昼間はいい景色が見えるんだけどな・・・」

これは対策をうたないといけない

今のところ、夜は仏間にいるからいいのだが夕方になったらカーテンをしっかりと閉めて中を見られないようにしないとな

木を周りに植えよう

それしかない

あれ・・オヤジはどこ行った?

家のことを考えている間にオヤジは神社の奥へ行ったようだ

私はS君にそこから見える範囲内でいいから何かあったら知らせてくれるように頼んだ

神社にはポツンと一つだけ街灯が点いていた

「オーーイ、オヤジ、どこだ?」と少し大きめな声をかけた

「シッ!、声を出すなよ」とオヤジの声

周りを見渡すと茂みの中に隠れていた

「どうした?」

「いや・・何かの気配を感じるんだよ・・・あの社殿の方から・・

それでここに隠れて社殿を見てたんだけど・・・今のところ・・・

いや・・やはり・・・何かゾッとするものがいるぞ・・・」

「マジかよ・・・見えないけど・・・」

「よく耳を澄ましてみろ・・・何か聞こえるぞ」

「え・・・えええ・・・確かに・・・何か聞こえる」

「だろ・・・もうすこし近づかないとな」

とオヤジは腰を低くしてさらに前へ出た

私も腰を低くしてオヤジの後ろからついて行った

確かに複数の声がする

「オヤジ・・・こりゃ・・」

「物の怪の連中だろ・・・3いや4体はいる感じだ・・・もう少し前へ行かないとな」

オヤジはさらに前へ出た

何か黒い物体がユラユラと見えた

「俺にははっきりと見えるが、お前には何か黒いものが見えるんじゃないのか」と聞いてきた

「そうだよ、黒いものがユラユラと動いてる」

「そっか・・・そのユラユラの中心くらいに何かビニール袋みたいな感じなもの見えるだろ?」

「確かに・・・黒いビニール袋みたいな物が落ちてる」

「見えるんだな?よぉし・・・俺が大きな声を出すからその時にその黒い袋のところへ行き抱きかかえて一目散に神社から出ろ、俺のことは気にするな、とにかく走れ、いいな!」

と言いオヤジはでかい声を出した

私はすぐにその黒い袋、目かけて走った

抱きかかえて即座にその場から離れ猛ダッシュで神社から出た

オヤジの怒声と物の怪たちの叫び声が入り混じって聞こえてきた

私は神社から出て車のところへ向かった

私はその黒い袋を地面にそっと置き中身を見た

やはり・・・カナちゃんだった

寝ているようだった

外傷はないように見える

私は声をかけながらカナちゃんの体を揺さぶった

すこし体が動いたように見えた

「カナちゃん、おじさんだよ、聞こえるかな」と何度も声をかけた

「う・・・・ん」とカナちゃんは目を開けた

「あ・・・おじさん・・・」と小さな声だが聞こえた

「よかった・・・おじさんだよ・・・」

「うん・・おじさん・・・カナ・・・怖かったよ」と震えていた

私は車の後部座席にカナちゃんを乗せエンジンをかけた

「もう、大丈夫だからね」とカナちゃんに声をかけた

「うん・・・」と小さな声で返事をした

私はすぐに和尚様にカナちゃんを保護したことを話した

和尚様はびっくりしていた

神社の奥から獣みたいな声が響いていた

およそ10分間後・・・沈黙した

オヤジ・・・まさか!!!

しばらくすると鳥居の奥からヨレヨレと歩きながらの

人影が見えた

オヤジか!?

やはり人影はオヤジだった

「オヤジ、大丈夫か・・・早くこっちへ来い」

「おお・・・ちょっと待ってくれ・・・」と弱弱しい声だがオヤジの声だった

助手席のドアを開けた

オヤジが助手席に乗りすぐにドアを閉めて急いで神社から離れた

オヤジの衰弱はひどいものだ

カナちゃんもだいぶ落ち着いてきたようだがやはり怖かったのかうつむいたままだ

「カナちゃん、もう大丈夫だよ、前にはじいちゃんもいるからね」と優しく声をかけた

「うん!おじさん、じいちゃ、もう怖くないよ、カナ」と笑顔で答えてくれた

S君から電話がかかってきた

「こっちから見てたけど大丈夫か?」と聞かれ

今の状況を話した

「そっか・・おやっさん・・・まぁとりあえずはカナちゃんの救出ができてよかった」

「カナちゃんはだいぶ落ち着いたから」

「とりあえず、S君、そこにいて神社の様子を見ててくれ」

「OKOK、様子を見てるよ」

家に着いた

「オヤジ、歩けるか?」

「おう!大丈夫だ」と言いながら車から降りて家の中へ入っていった

「カナちゃん、ゆっくり降りてあわてないでいいからね」

「うん!!」

カナちゃんも車から降りて家の中へ入っていった

私はしばらく車の中にいて周囲を警戒をした

30分ほど周囲を見ていたが別に異常はないと判断して私も家に入った

リビングではカナちゃんの周りに葵や楓が心配そうに声をかけていた

オヤジもソファに座って横になっていた

とりあえずは全員無事に帰れた

二階からS君が降りてきた

「あれから神社のほうは別に異常はなかったよ

とりあえずは無事でよかった」

私は和尚様に電話をして事の詳細を伝えた

「そうですかい・・・よかったですわい・・・一件落着ですわい

こっちもごちゃごちゃと騒がしくなって大変でしたわい

とりあえず、少し落ち着いたらカナちゃんのママと一緒にそちらへ行きますわい

着いたら詳しい話を聞かせてくだされ」

私はおふくろにカナちゃんの体を見てほしいと頼んだ

体に傷がついていたら大変だ

「わかったよ、カナちゃん、おいで、お風呂場へ行こうね」とおふくろはカナちゃんの手を握ってお風呂場へ行った

しばらくしておふくろとカナちゃんが戻ってきた

「大丈夫、体には傷はないよ、よかったよ・・・3人娘たちをお風呂へ入れるわね」と言い

おふくろと3人娘はお風呂場へ行った

「おっちーー!!よかったんだぞ、びっくりしたんだぞ、今晩は3人娘たちをパパたちしっかりと見ててほしいんだぞ」

「わかってるさ、S君と交代で見るよ」

「おう!ちゃんとみてるからよ」

3人娘たちがお風呂から上がってきた

3人ともおしゃべりしながら戻ってきた

「さぁさ・・・3人娘たちはもう寝る時間だよ、仏間へ行こうね」とおふくろは3人娘たちを仏間へ連れて行った

「さぁてとお風呂へ入ってくるか」

「大丈夫か?起きてよ」

「あぁ・・・だいぶ楽になったぞ、お風呂入って俺はもう寝るわ」とオヤジは起き上がってお風呂場へ行った

夜も11時を過ぎた

「S子、F子、もういいよ、寝てくれてもいいよ」

「うん・・・そうするね、アニキ」

「おっちーー、パパたち、先に寝るね、娘たちをよろしく頼んだぞ」

「パパ・・俺たちももうそろそろ2階へ行くね、おやすみ」と2人の息子たちは2階へ上がっていった

リビングの電気を消して仏間へ行った

3人娘たちはまだ起きてておふくろとおしゃべりをしていた

「今夜、何こともおきなきゃいいけどね」とおふくろは心配そうに私に言ってきた

「あとで、和尚様も来ますしカナちゃんママも帰ってくるから・・・おふくろ、安心して寝ていいよ」

「そうかい・・・孫娘たちを見ながら寝るわね」

「ばあちゃ・・・私たちも寝るよ」

「そうしておくれ」

オヤジがお風呂から上がってきた

「じい・・ちゃ・・ありがとう」と小さな声でカナちゃんがオヤジに礼を言った

「いいってことよ」とオヤジは小さな声で返事をした

「いい風呂だったぜ・・・俺も疲れた、寝るぜ」と言い布団に入ってすぐに寝てしまった

「あんたたち、すまないけどここにいておくれ・・・孫娘たちがトイレへ行くようなら付いて行っておくれ」

「わかってるよ、もう寝ていいよ」

「F、俺、2階へ行ってもう1度神社の様子をみてくるよ」

「そうだな・・・しばらく見ててくれ」

「おう!」

深夜3時ごろに和尚様たちが来た

「すいません・・・カナのことでご迷惑をおかけしました」とカナちゃんのママが謝ってきた

「カナちゃんは大丈夫ですよ、3人娘たちはしっかりと寝てます」

カナちゃんママはカナちゃんを見て安堵した顔になった

「お母さんももう寝たほうがいいと思います」

「そうですか・・・すいません・・・私、寝ますね」と言い客間へ行った

「オヤジ殿、大丈夫でしたか?」

「はい・・・すごい怒声とわめき声が聞こえていましたけれど・・

一応、戻ってきたんで・・」

「そうでしたか・・・やはり・・あの山の神社の物の怪たちがカナちゃんをさらったんですかのぉ・・・」

「そうです・・・オヤジの勘が当たっていました・・・」

「オヤジ殿・・・」

「とりあえずは今のところ異変は起きていません、二階にS君が神社の様子を見てます

から」

「2階から神社が見えるんですかのぉ」

「はい・・丸見えです・・・」

「それは・・ちょっと見たいです」

「でわ2階へ行きましょう」

私と和尚様は2階へ上がった

「S君、おつかれさま・・・仏間へ行って休憩してくれ」

「おう、わかった、今のところ異常はないよ・・休憩してくる」

「これわ・・・危ないですわい・・・丸見えですわい

それに風向きが神社方向だと人間の臭いを嗅ぎ付けてきますわい」

「そうなんです・・・それであの辺りに背に高い木を植えるつもりです

少しだけ神社が見えるようにはしますけど・・・」

「それわいいですわい・・・しかし、景色がいいですのぉ・・・しかし・・この風景・・・どこかで見たような気がしますわい・・・どこじゃったかな・・・夜だとわかりにくいですわい、朝、もう1度2階から景色を見たいですわい」

2階から見る風景は格別な気がした

今まで建物で全然見えなかった風景が目の前にある

山々が連なって神秘的な美しさ

ここで食事をしたらさぞかし美味しいだろう

午前4時を回った

静かだ

昨日の蒸し暑さが無くなり過ごしやすい

徐々に空も明るくなってきた

ふと・・神社を見た

何か光ったような気がしたからだ

気のせいか

神社の街灯が見えるだけだった

Concrete
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