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約束の日からちょうど10年、俺は母校である中学校の校庭に来ている。
卒業式の日、クラス全員で10年後の自分に向けた手紙を書いて缶にしまい、校庭の隅に埋めた。
今日はタイムカプセルを埋めてからちょうど10年なんだ。
懐かしい顔ぶれが続々と集まってくる。
一緒につるんでバカな事してたキョウヘイとタクミ
クラス委員長だったユウコは驚くほど美人になってたし、空手部だったサオリは2児の母になっていた。
クロシマ先生はすっかり白髪が増えているが、優しい雰囲気は10年前と変わらなかった。
クラス全員で35名だったが、連絡がつかなかったのも何人かいた。
不良グループだったレイジ、カツヤ、ユイだ。
それに…飼育委員だったケンジも。
それ以外の31名とクロシマ先生でタイムカプセルを掘り出した。
程なくしてタイムカプセルは10年ぶりに姿を見せた。
皆して『俺何書いたかなー?』『楽しみね、早く開けましょう!』と興奮と期待が辺りを包んでいた。
タイムカプセルには俺の書いた手紙もあった。
はやる気持ちを抑えて手紙を開く。
「10年後の俺へ ずっと夢見てた海外での仕事につけているかい?」という内容の手紙だった。
俺は今、10年前の誓いどおり貿易会社の営業として日々を過ごしている。
他の皆も夢を叶えたり、違う幸せを見つけたり、まだ夢に進む途中だったりと様々だった。
そんな中、タイムカプセルには4通の手紙が残されていた。
今日来れなかった4人のものだ。
クロシマ先生が『せっかくだ、あいつらのも見せてもらおう。なんとか連絡を取って届けてやりたいからな』と言い、不良グループだった3人の手紙を開けた。
ところが、手紙を見ていたクロシマ先生の様子がおかしい、顔色がみるみる青ざめていくのがわかった。
手紙を見ながら冷や汗を垂らして震えているようだ。
『先生?どうしたんですか?』とクラス委員長だったユウコが後ろから声をかけ、その手紙を見た。
ユウコも『ひっ!な、なにこれ!』と声をあげた。
全員が不良グループの書いた手紙を見て同じように恐怖の声をあげた。
手紙にはこう書かれていた。
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レイジ「たすけてたすけてたすけて しにたくないしにたくない」
カツヤ「なんでだよ いやだいやだいやだ」
ユイ「いやいやいや おねがいたすけて」
かろうじて読める字で、紙いっぱいに同じ事が書かれていた。
そして、俺はタイムカプセルに残された最後の1通、ケンジの手紙を開いて中を見た。
「レイジは潰される カツヤはめった刺し ユイは焼かれる ぼくが地獄に引きずり込む おまえらはぼくと一緒に苦しみぬいて死ね」
皆もケンジの手紙を見て凍りついてしまった…
10年ぶりの再会は、身の毛もよだつ恐怖で終わった…
その後、クロシマ先生から連絡があり、あの日来なかった4人のその後を知ることとなった。
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レイジは工場の作業中に機械に挟まれ、全身を潰されて死んだ。
カツヤは浮気がバレて交際相手に刃物で十数か所をナイフで刺し殺された。
ユイは交通事故を起こし、燃える車の中で焼死した。
そして…ケンジは中学卒業の数日後、家を出たっきり行方不明になっていた。
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あのタイムカプセルを埋めたのは卒業式の日。
俺は、笑顔で手紙を書いていたレイジ、カツヤ、ユイの顔を思い出した。
3人が死んだのはケンジの呪いだったのか
手紙の内容はケンジの呪いで書き換えられたのだろうか…
今となっては何も知ることはできないのだろう…
作者死堂 鄭和(しどう ていわ)