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この日Aさんは仕事でトラブルがあり、終電でなんとか帰宅の徒についた。
ところが、最寄り駅まであと5駅というところで事故で電車が停まってしまった。
駅構内では駅員が慌ただしく駆け回っているが復旧にはかなり時間がかかりそうであった。
乗り換え駅でもないので他の路線で迂回もできず、タクシー乗り場は長蛇の列でいつ乗れるかもわからない状態であった。
どうしようかと途方に暮れていたAさんは近くのバス停に自分の家がある方面に行くバスが停まっているのを発見した。
停車するバス停を確認したところ、このまま電車の復旧やタクシー待ちの列に並ぶよりは早く帰れそうだったのでそのバスに乗って帰る事にした。
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バスにはそれなりに乗客はいたが最後部の座席が空いていたのでそこに座り、すぐにバスは発車した。
途中のバス停で他の乗客は降りていき、最終的に乗客はAさんだけとなった。
次がAさんの降りるバス停なので降車ボタンを押そうとした瞬間
ピンポーン♪「次、降ります」とガイダンスが流れて降車ボタンが点灯した。
程なくしてバスは停まり、Aさんは運賃を支払いバスを降りた。
ここからは夜の暗い道を1人で歩いて帰るしかなかったのでAさんは自宅に向かって歩きだした。
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ところが、歩いている最中ある事に気付いたAさんは全身から血の気がひいた。
乗客が自分しかいないバスの車内で降車ボタンを押したのは誰だ?
バスの最後部に座っていたので自分以外に乗客がいなかった事は確認できている。
暗い夜道も相まって気味が悪くなったAさんは近くのコンビニに飛び込みタクシーを呼んだ。
数分後にタクシーが来たので乗り込んだのだが、タクシー運転手にこう言われた。
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「あれ?お連れさんは乗られないんですか?今御2人で乗られましたよね?」
作者死堂 鄭和(しどう ていわ)