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中編3
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路地裏の喫茶店

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大学生の高田君の体験した話。

高田君には行きつけの喫茶店がある。

家から歩いて数分の路地を入ったところにある

『EMILY』という小さな喫茶店だ。

初老のマスターが1人でやっており、暗めの照明にレトロな店内、

口数の少ないマスターが淹れてくれるブレンドは、他では味わえない心地よさを与えてくれる。

講義がない日は決まってこの喫茶店でブレンドを飲みながら本を読んだり課題の勉強をしに来ていた。

自分以外のお客もまばらで、静かな雰囲気が好きなのだ。

その日も俺はブレンドを飲みながら、読みかけの小説に目を通していた。

ところが、この日はいつもと違うことが起きた。

『高田さん、すいませんがミルクを切らしたので買ってきたいのですが…15分〜20分ほどで戻るのでお店にいてくれませんか?もしお客様が来ましたら、すぐ戻る旨をお伝えしてほしいのです』

とマスターに声をかけられたのだ。

いつもブレンド一杯で長居させてもらってるので

『はい、わかりました。』

と二つ返事で留守番を引き受けた。

『どうもすいません、では行ってきます』

マスターが入口のドアを開けて出ていった。

カランカラン…とドアについている鈴が小さな音をたてたが店内はすぐ静かになった。

マスターが出てから5分くらい経ったころ、カランカラン…と鈴の音が聞こえた。

ん?お客さんが来たのかな?と思い

『あ、マスターは今買い出し行って…』

と言いながらドアの方に目を移すが…そこには誰もいなかった。

それどころか、ドアが開いた様子もなかったのだ。

あれ?気のせいかな?と思い、読みかけの小説に目を移す。

小説を読み始めて1〜2分経った頃だった

視界の端で何かが動いているような気がして何気なくそちらに視線を向けると…俺は心臓が飛び出るかと思うくらい驚いた。

入口から一番遠いテーブル席に女の人が座っていたのだ。

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え?あんな人いたっけ?いや、客は俺1人だったはずだ!

今日は俺が来た時に入れ違いで客が出ていき、店内に他の客がいないことを覚えている!

いつの間にかいた女を視界の端に捉えながら観察する。

まず違和感を感じたのは服装だ。

今は8月、半袖でも陽射しが暑いのに、黒の帽子に赤いコートを着ている。

僅かに見える口元も真っ赤な口紅が塗られていて印象的だった。

早くマスターが帰ってきてほしいと願いながら、俺は再び小説に目を移した。

すると今度は、何か水が流れるような音がした。

音の発生源は…やはりあの奥のテーブル席、女のいる辺りだった。

恐る恐るそっちを見ると…俺はあまりの光景に『ひゃああ?!』と間の抜けた声をあげた。

女が…まるで水飴のようにドロドロに溶けて床に水溜りを作っていた…

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だが…溶けていく女の目は…確実に俺を見ていた。

もう耐えきれなくなった俺は、マスターの帰りを待たずに店を出ようと思いドアに駆け出した。

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カランカラン…

ドアの鈴が小さく鳴りドアが開いた。

買い物袋を持ったマスターが帰ってきた。

マスターは慌てふためく俺の事を見て首を傾げていた。

俺はマスターに奥のテーブル席を指差して

『お、お、女が!あそこにいて!と、溶けて…』と要点を得ない言葉で必死に状況を説明した。

マスターと一緒にテーブル席を見たが…水溜りどころか、水滴1つついてはいなかった…

ただ、何か香水のような香りだけが微かに残っていた。

『……ミユキちゃん…』

悲しげな顔のマスターがぽつりと呟いた。

それが誰なのかは聞けなかった…

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@アンソニー この話はここで終わりです。
あの女は何者なのか?それはマスターしか知らないのかもしれませんね

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