中編7
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お兄ちゃん

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皆さんは子供時代、どんな遊びをしていましたか?

山に遊びに行く、家でゲームをする、外で戦隊もの等のごっこ遊び、おままごと、公園で砂遊び、鬼ごっこ…

色んな遊びがありますよね。

自分はよく公園で遊んでいました。戦隊もののごっこ遊びや、鬼ごっこをして遊んでいました。その当時体験した話をしようと思います。

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「さーん、にーい、いーち、ぜろ!…お前ら卑怯だぞー!それはルール違反だろ!」

「そんな事ないよ!ギリOKだしー」

「俺が移動するから、タッチできそうなとこまで行くから」

「お前鬼になりたいのかよ!」

「うん。鬼の方が楽しいよ、鬼になりたいね」

「あっそ!」

近所の仲の良いメンバーで遊んでいた。いつもは自分を含めて4人、公園で遊ぶことが多かった。その日はたまたま一人、習い事があると言って公園に来ていなかった。

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「はい、タッチー!お前おーにー!ほら皆降りろ降りろー!」

思い切り脚を叩かれた。敢えて手の届きやすい場所に移動したのに技と大袈裟に強く叩かれた。はいはいと文句を言いながら鬼を交代しました。

10から0まで数えると皆それぞれの位置に移動し、誰が一番手が届きそうか考えていると一人がヒソヒソ声で言いました。

「ちょっと、ちょっと、こっち来て…」

「なんだよ、お前も鬼になりたくなった?」

「鬼になりたくないよ…そうじゃなくてさ」

こっちこっちと忙しなく手を動かし言いました。どうやら自分達が高鬼をしているのをじっと見ている男が居るというのです。相手に気づかれないようにゆっくり後ろを振り向くよう言われ、何かを探しているふりをして見ました。振り向き少し視線を動かすと公園のベンチに座り時折こっちを見る男が座っていました。年は20代前半位で白いシャツに黒いパンツを履いていました。見ている時間が長かったのか、男と目が合いました。

男は薄く笑うと軽く手を振ってきました。気まずくなり、咄嗟に会釈をしてしまいました。

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「なにやってんだよ、怪しい人に声かけられたら無視しろって親に教わらなかったのか?

「声はかけられてないだろ」

「お前らさっきから何しゃべってんだよ、高鬼やらないのかよ」

「いや、変な男がさっきからずっとこっち見てたから、気持ち悪くて」

「手を振られたから、挨拶を返して…」

「ああ、あの人か。あの人は大学を留年して働かずに家にずっといるって聞いた。変な人じゃあないらしい、よく知らねーけど。無視して続きやろうぜ」

「うん」

「そうだな、続きやろう!」

男の存在は無視して高鬼を再開することにしました。

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楽しい時間はあっという間、すぐに日が沈み辺りはだんだん暗くなってきました。

男が座っていたベンチを見ると、男の姿はなくホッとしました。

公園には3つ出入口があり、自分と友人の一人は帰り道が同じなので一緒に帰りました。

もう一人は自分たちとは反対方向でした。

「じゃあ、また明日なー!」

「バイバーイ!」

「バイバイー!」

友人と二人で公園から出ると、自分たちの反対側の公園出口からあの男が足早に出てきました。自分たちが公園内に居る時に姿はどこにもなかったのに。

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shake

ガシッ

友人に右腕を掴まれました。

カツッ カツッ カツッ カツッ カツッ カツッ カツッ カツッ

男は自分達に真っ直ぐ向かって来ると、くるっと友人の横を曲がり、通り過ぎ様にスッと顔をこちらに向けました。

「暗いから帰り道気を付けた方がいいよ、変な人出るから」

男が友人の横を通り過ぎると二人で駆け出しました。時折後ろを振り返り男が追ってきていないか確認しました。

息切れし走れなくなったところで立ち止まると、お互い顔を見合わせ、特に何も話さずその場で別れました。

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それから公園で遊ぶ度に男が公園内に居るかチェックするようになりました。

男は決まってベンチに座り本を読んでいたり、何もせずただそこに座っていました。

何度か公園で遊んでいる子供と話している所や、一緒に公園を出ていく所を見かけました。

日が経つにつれて、怪しい人という認識から、ただ公園に来ている人へ変わっていきました。

とある日の放課後、いつもの公園で友人達を待っていました。

当時は今のように携帯電話が広く普及していなかった為、自分達の中で待ち合わせをする時はひたすらその場で待つ、なかなか相手が来ない時は相手の家に公衆電話で電話するという方法がとられていました。

その日はなかなか友人達が来ませんでした。お互い通っている学校が違う為、それぞれの予定を確認することが難しい状況でした。公園内に来ている常連の子供達の何人かに聞いてみても分からない、知らないと言われるのみでした。

友人達をいくら待っても来ないのでもう帰ろうかと考えていた時、不意に声をかけられました。

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shake

「こんにちは」

あの男でした。

男は軽くしゃがむと視線を合わせてきました。

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「お友達は一緒じゃないの?」

「えっと…はい」

「君のお友達、見たよ」

「リョウ達、どこにいました?」

「どこだったかな…もうしばらくしたら来るんじゃないかな…リョウ君来るまで、お兄ちゃんの家で待ってればいいよ。リョウ君の家族と仲いいから、大丈夫だよ。最新の〇〇のゲーム機あるし、お菓子も沢山あるからさ」

「〇〇!すごい!いいなー」

友人の家族と仲がいいという事、当時流行の〇〇というゲーム機の名前を出された事により気持ちが揺らいでしまいました。家はすぐ近くである、外で待っていても退屈だからと適当な理由を言う男の口車に騙され、男の家に行ってしまいました。

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男の家は確かに公園の近くにありました。綺麗なマンションのエントランスを通るとエレベーターに乗りました。

家の中に先に入るよう促され、自分は呑気に部屋の奥へ入っていきました。

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shake

ガチャ…ジャリッ…

リビングに行くと確かに最新のゲーム機やお菓子がセットされていました。

今考えるとそのリビングの様子に違和感を感じますが、子供の頃の自分は気が付きませんでした。

飲み物を出されましたが、喉が渇いていなかったので飲みませんでした。

この時、男は何度も飲み物を飲むよう言ってきましたが頑なに断りました。

ゲームをやっている間、男はどこかへ行っていました。

暫くしてトイレにいきたくなり、トイレを借りることにしました。

用を足してリビングに行く途中、ドアが薄く開いている部屋がありました。

開けてはいけない、見ない方がいいと思いつつ、そっとドアを開けてしまいました。

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ギィ…

中は広く奥行きがあり、ビニールに入った何かがたくさんハンガーにかかっていました。

中から一つ手に取ると、ビニールの中にコートが入っていました。ざっと見渡すと色々な服がビニールから透けて見えました。どんどん奥に入っていくと、床に蹲っている人を見つけました。黒い髪の女の人が土下座のような姿勢で地面を這っているようでした。

初めに見たときはびっくりしましたが、その女性はただ地面を這っているのではなく、コートが掛けられている所の下にある物を探しているように見えました。

下を見てみると少し奥にブローチの様な物が見えました。

きっとこれだと思い手を伸ばすと簡単に取れました。

女性に近づき、それを渡しました。

「…ありがとう」

女性の顔は想像とは違って優しい顔の人で、違う意味で驚きました。

「おーい、どこにいる?」

男の声が聞こえました。

急いで部屋から出るとリビングへと走りました。

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「どこ行ってたの、心配したよ」

「トイレ…あの、部屋のドアがいっぱいあるから、部屋がわからなくなっちゃって」

「ふうん」

どうにか誤魔化してその場をやり過ごし、もうそろそろ公園に戻りたいと言いました。

「うん、そうだねでもその前に見せたいものがあるからこっち来て」

男は急に早口になると急に手を掴んで別の部屋へ引っ張っていきました。

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shake

ガチャッ 

部屋に入ると、そこには大きめのベッドが置いてありました。シルクの様な高そうな布がかけてあり、高級感を感じさせました。

全体的に部屋の家具は黒く、あまり物は置いてありませんでした。

shake

バン…ガチャッ…

ドアを閉め、カギを掛ける音に反応し後ろを振り向くと、男が真後ろに立っていました。

ゾッとし、心臓の鼓動が一気に早くなりました。

慌ててベッドに乗り上げると突然両手で肩を力強く後ろに押されました。

勢いよく後ろに倒れ、ベッドの上なので怪我はしませんでしたが押された衝撃は強く体が大袈裟に跳ねました。すぐに起き上がろうとした時。

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バンッ!!

男が馬乗りになり、自分の顔の左右に手をつき顔をグッと近づけてきました。

「あの部屋に入ったのか?入ったんだろう」

口の中が渇き、手の先が冷えていくのを感じました。あの部屋と言われ、頭の中に部屋でみた女性が頭に浮かびました。

「入ってません!知りません!もう帰してください!」

懇願しても男の顔は真顔で何を言っても響いていない様子でした。

再び男の顔が近ずいてきた時、顔を横に向けました。

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ベッドの傍にクローゼットが置いてあり、そのクローゼットの下に女の人が腹ばいになりこちらを凝視しているのが見えました。

それを見て大声で叫びました。

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「お姉ちゃんー!!!!」

shake

バァアンッ!!

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叫ぶと勢いよく部屋のドアが開きました。

男が怯んだ隙にベッドから飛び降り、走って玄関まで行きました。自分の靴を掴むとドアから飛び出し、一気に階段を駆け下りました。

脚がもつれて転びながら1階のエントランスに着くと、そこから出口へ一気に走りだしました。

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shake

マンションから飛び出ると誰かに横から掴まれました。

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「どうした…探したぞ」

いつまで経っても現れなかった友人の姿がそこにありました。

「リョウ!お前今までどこにいたんだよ!何してたんだよ、すごい怖い思いしたんだぞ」

友人に会えた、顔が見えた安心感からか一気に緊張が解け目から涙が溢れました。

公園には行かず、自宅に友人達を呼び、後から集合したメンバーにも何があったかを話しました。

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この時体験した話は、親には話すことができませんでした。

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“あの部屋”に居た女性、クローゼットの下に居た女性は一体何者だったのか、

今でも分かりません。

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