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中学二年生の夏休みの時の話です。
お化け、幽霊、出てきません。
オチもありませんが、聞いてください。
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僕はその時、まさに中二病で、いろんな事に独自の意味付けをして過ごしていました。
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スマホやPCなんて無い時代で、僕の部屋にはTVもなく、何もする事なんてないけど、大好きな宇宙を、夜空を見上げて感じていました。
そしていろんな妄想をしていたら、何時間だって一人でいられました。
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布団を敷いて寝転んだ頭の先には、ベランダに通じる大きな窓。
枕に頭を付けたまま目を開けていると、丁度夜空が見えます。
田舎に住んでいたので、2Fの窓からは、障害物もなく良く見えました。
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「僕が夜空を見ている様に、どこかの宇宙人が僕を見ているかもしれない。」なんて考え、まるで夜なんて明けないかの様に感じ、一人だけの長い夜を楽しんでいました。
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うつぶせになって窓を見ると、少し離れた距離に集合住宅が見えます。
12:00を回っても、まだ少しの家に灯りが点いています。
中二病が発動し、「あの住宅の灯りが全部消えても起きていたら、僕は日本で唯一の起きている人になれるかもしれない」と考え、意味もなく、ただただ寝るのを我慢しました。
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日本中で僕だけが起きている人になれば、僕だけに何か起こるかもしれない!と…。
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しかし1:00も過ぎると、中二の僕は眠くなりました。
もし住宅を見て、まだ灯りが点いていたら悔しいので「もう全部消えた。僕だけ起きてる!」と思い込み、住宅を見ないままカーテンを閉めて、寝る準備をしました。
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うとうとした時、部屋が明るくなった事を、寝ぼけながら感じました。
隣の家のおじさんは、毎日遅く帰ってきます。
車で回り込んで庭に停車するので、毎晩僕の部屋を照らします。
おじさんの帰宅だ…と思い、毎晩の慣れた事なので気にもせず眠り続けようとしました。
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…。
あれ?
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しかし寝ぼけながら「おじさんではない」と感じました。
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だっておじさんは車で帰宅するので、タイヤが砂利を走る "ジャリジャリ" という音を立てながら帰ってきます。全く音がありませんでした。
しかも、部屋が明るくなるのも、一定方向を照らすヘッドライトなので、回り込んで停める時に、部屋をなめる様に端から端に光が移動しながら照らします。
そしてすぐに消して暗くなり、エンジン音が消えるのです。
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しかしこの日は、ジャリジャリ音もなく、光の移動もなく、エンジン音もしませんでした。
なのに目を開けると、部屋は明るいまま。
ヘッドライトの灯りなんかではなく、お昼の様に全体が明るいんです。
そんなにたくさん寝たのかなと思い、時計をみたのですが、夜中の2:00です。
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不思議な状態に、完全に目が覚め、カーテンをみると、めちゃくちゃ明るい光が差し込み、僕の部屋を照らしています。
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「なんだこれ!」と恐怖と興味が混在し、上体を起こしました。
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この光はなんだろう。
カーテンを開けた先には何があるんだ。
開けた後に、僕に何が起こるのだろう。
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まずお母さんを起こしに行こうとも考えましたが、中二病の僕は、不思議を一人占めしたくて、起こすのをやめました。
僕だけが正体を見て、明日、お母さんや友達に自慢しよう!と勇気を出して一人でカーテンを開ける決断をしました。
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明るいカーテンの前に立ち、呼吸を整え、カーテンに手を当て、一気にサッっと開けました
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……
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開けた瞬間に真っ暗に戻り、目の前には、普通の夜2:00の景色が広がっていました。
隣のおじさんの車もありませんでした。
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さっきまでの、お昼の様な明るさは、どこに行ってしまったのでしょうか。
光の正体は何だったのでしょうか。
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2:00を超えた住宅は、見事に灯りがなく、真っ暗でした。
自分の決め事通り、日本中で唯一起きている人になる事ができました。
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そんな僕を、どこかの星の人が迎えに来てくれていたのかもしれない…と興奮を抑えきれず、もう一度来てくれるのを待ち、その日は明るくなるまで眠ることが出来ませんでした。
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そしてそれからは、何時まで起きていても、何日経っても、何年経っても、二度と迎えに来てくれる事はありませんでした。
作者KOJI
大人になった今も、同じ気持ちで夜空を見ています。
昨晩も、みんなが寝てしまうまで起きて夜空を見ていて、このできごとを想い出し、投稿しました。
書き終わったのは3:30頃でしたが、背景画像の選択画面のサムネイルが怖くて開く勇気がなく、朝になるまで待って投稿しています(苦笑)。
そして昨晩も、迎えには来てくれませんでした。