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『水霊(みづち)に呪われた女』(存在しない記憶vol.1)第2話『水霊(みづち)の呪い』

中編4
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『水霊(みづち)に呪われた女』(存在しない記憶vol.1)第2話『水霊(みづち)の呪い』

1:数ヶ月経つと蘭(あららぎ)ユウジも、水霊(みづち)の呪いが来る事もガムランボールが無くても分かる様になって来た。

「全く。呪いを祓えるって、俺は呪術師かよ…」

今まで感覚を研ぎ澄ます事もせず、暮らしていた。

今思い起こせば、霊現象など、無縁であった。

自分が巻き込まれるとは、夢にも思わなかった。

もはや、日課となった呪いの撃退。

深夜のコンビニエンスストアの業務を終え、自宅に帰ると別天津神(ことあまつかみ)タルパからの着信が入った。

「ヘイ、ブラザー。おはよう」

『おはよう。ブラザー。さっき店行ったら居なかったから、もう帰ってるかなって思って電話してみた」

「うん。今帰って来たとこだよ。どうしたん?」

『今日、雨で現場中止になったんよ。暇なら家で飲まね?』

「良いね。今夜は休みだから付き合うぜ」

ユウジはシャワーを浴びて、隣のアパートであるタルパの部屋へ向かった。

ノックして、部屋にユウジを迎え入れるタルパ。

早速、飲み始めた。

タルパと宅飲みする際のお約束は、芋焼酎をジャスミン茶で割るタルパブレンド1か、ウィスキーをアップルティで割るタルパブレンド2を飲む。

どちらも、タルパ独自の飲み方で、ユウジもかなり気に入っている。

「ブラザー、カナコの呪いってまだ来てる?」

「来てるよ。最近だと、来る前になんだろ?匂いかな?女みたいな匂い?と言っても、彼女居ない歴=年齢な俺には、女の体臭なんて分からないんだけどね」

「少し分かる。フェロモンって体臭って説あるしね。実際、カナコって美人だけど、身体付きはそんなに良くない。でも、何か性的魅力みたいなの持ってた」

「だからかー。なんか、ムラムラを感じる時あるんよ。でも、あれだよな。カナコさんの呪いってまさに呪霊だよ。それを祓ってる俺って、呪術師とか思う」

「僕、最強だから」

「ブラザーが、それを言うなら、俺はあれか?袈裟着て『従え、猿共』って言えば良い?」

「その方向性で。でも、どちらかと言えば選民思想あるのは俺だから、そっちは俺の役目かも?」

閑話休題。

「そうだ、ブラザー。昨日変な夢見たんよ」

「どんな夢?」

ユウジは前日に見た夢を話し始めた。

2:何時の時代だろうか。

大きな川の近くで田畑を耕し、営む集落があった。

その川には、水霊(みづち)が住むと言い伝えがあり、川の辺りには水霊を祀る小さな祠があり、川に住む神として、集落の信仰対象だった。

そんなある日の事。

梅雨に大雨が続き、川が氾濫した。

当然、作物は被害に遭い。集落は貧困に陥った。

集落の長は、これを水霊の怒りと捉えて、集落に住む婚前の娘を水霊に捧げる事を決定した。

水霊信仰が厚い集落の者は、それに従った。

婚前の娘を捧げる理由は、水霊が男神と信じられていたからである。男神に神の嫁として、婚前の娘を捧げる風習があったからだ。

それが、功を奏したのだろうか。次の年の梅雨には、程良い雨が降り、豊作であった。

この集落では、5年に1度婚前の娘を川に沈める様になった。

結果、豊作で、集落は豊かになった。

そうなると、年に数回町に出て、作物を売る風習が生まれた。

作物を持ち逃げする者が出た為、売る作物は料金先払いで行う様になった。

ある年の事。集落の長が、町に出る事になった。

集落の長は幼い子供が居なかった為、一家で行く事にしていた。

町へ行く家族は、数日滞在する事もある。

折角の機会なので、町にある娯楽を楽しむ事が許されていた。

その土産物も集落には、娯楽となっていた。

そんな時、悲劇が起きた。

記録的短時間大雨により、川が氾濫。

それは集落を飲み込む程であった。

唯一生き残った一家。

それこそ衣通(そとおり)家であった。

3:安住の地を失った衣通(そとおり)家は、新たに住む場所を探す事となった。

不幸中の幸いなのは、町に出た為、少しの蓄えはあった事だ。

いくつかの集落を周り、ある老夫婦が住む神社に辿り着いた。

夫婦には跡取りが居なく、衣通家が跡取りになる事を条件として、父親が、宮司になるべく、教育を受けた。

そして、衣通家はその神社の者として迎え入れられた。

衣通家がその地について、数世代がたったある年。

衣通家には息子に、娘が1人居た。

その、幼い娘が急死してしまった。

死因は溺死。

その後も、娘が急死してしまう事が続いた。

決まって水に関係した死。

当時の宮司が神社の神に祈り、ある晩の事。

夢に神々しい人が現れて、言った。

『汝の家系には、水霊の呪いが掛けられている。娘が死ぬのは、そのせいだ』

宮司は直ぐに、それが、主神として祀っている神だと気付いた。

続けて神は、その水霊が女神であり、今まで、捧げられた娘の怨念を引き受けて、その魂を天上へ送っていた事。

遂には限界を超えて、禍(まが)つ神となってしまい、集落全滅に発展した。そこで、また、集落の怨念を受け、唯一生き残った衣通家の娘が水霊の呪いを受ける事となった。

もちろん、娘を捧げていた事が、全ての元凶である。

続いて神は、本殿の裏にある、湧き水が湧く池の小島に水霊の社を建て、娘が産まれたら、池で禊(みそぎ)をして、水霊を落とし、娘を近づけさせない事。

そこの管理は必ず男が行う様にする事を告げた。

宮司は次の日から、宮大工に社の作成を依頼し、池を閉鎖した。

以後、衣通家の掟として、徹底した。結果水霊によって娘が死ぬ事は無くなった。

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