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短編2
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暴発

文章が書けない。

つい、3日前からだ。パソコンに向かってキーボードを叩き、思い付いた言葉を書き連ねる。しかしどうだろう。書いた文章をよく見ると、全くと言って良いほど、理路整然としていない。

いまこの瞬間も、書けば書くほど、文体も、語彙も稚拙で、読む側の気持ちなど1ミリも考えていない、そんな風に崩れていく。

やればやるほど駄目になる。私はいつもそうだ。そして、自分の周りに一定数存在する、要領のよく、賢い人達から言及され、何をやってもイマイチな人、というレッテルを貼られてしまう。

このレッテルが剝がれる事は決して無い。剥がそうとするその傍から新しく貼られてしまうのだ。

味方などいない、敵しかいない。弱みを見せたが最後、鬼の首を取ったように、待ってましたと、ありとあらゆる欠点を責められる。

優しい人は確かにいる。けどそれは、私が「うまくいっている」から。うまくいかなくなったら、離れていく。

自然な事だ。誰だって、美しくて特技があって、器量も要領もいい人の傍に居たいはず。

何もない、取り柄も何も全て失った人の元にいて、何の得があるだろうか?

「ごめんね」

皆そう言って離れていく。優しいから、謝罪をくれる。全然いいのに、そんな事。

伴侶だって、いつか離れていく。

友人だって。

世界だって。

ごめんね、って、悪気はないのよ、でもね…今の貴方、疲れていて駄目でしょう?って。

そう言って、いかに私が、この世界に存在する事が難儀かを説いて、キラキラした世界に行ってしまう。

貴方たちは、新世界で生きるにふさわしい。だって、素晴らしいから。手に余るほどの能力を備えているから。

全部あげて本当に良かった。

私は彼女に、力をあげた。才能をあげた。人脈をあげた。美貌をあげた。それら全てを評した結果をあげた。

そして、夫をあげた。

わざと嫌われて、落胆する夫を支える役割をあげた。

出来損ないの妻に振り回され、力を削られて疲れ切った夫に近づくチャンスをあげた。

そして、お金をあげた。素晴らしい人達に恵まれる、素晴らしい世界に行くための、一度しかないチケットをあげた。

今、彼女と夫は笑っている。

新しい世界で。新しく、素晴らしく、闇など無い、幸福がありとあらゆる形で降り注ぐ世界で。

この世の全ての美しさを凝縮した彼女と一緒に、夫は笑顔を振りまいて穏やかに暮らしている。やっとあいつから離れられた、って。

私との生活が、いかに地獄で、いかに退屈で、いかに実りの無い、無駄なものだったか。

それらを邂逅する事で、より一層、彼女と一緒になれた幸福を何度も何度も味わう。

私はこれから、この世の醜さをすべて集めたような、そんな人間になる準備をする。

彼らが府の感情を持った時、どこにぶつけていいか分からない時、私が必要だろう。

誰だって、ぶつけるものが必要なのだ。

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@ゲル さん
初めまして、でしょうか。読んでいただきありがとうございます!
なんだか疲れてるみたいです(;´д`)頭が働かないというか…これもある意味怪談かもですね。

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