短編1
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姿無き音

私は、コインランドリーに車輛を停めて、前の自販機で飲み物を買い、喉を潤していた。

カリカリっ!!バリバリっ!!

何だろ、勢い良くスナック菓子を噛み砕く様な音が闇夜に突如として響く。

気の触れた様な奴が大きな声で独り言を遠くで叫んでいたのを数日前に聞いている為、「………まさか」と音のする方に、飲料の容器を持ったまま、眉間に皺(シワ)を寄せて近付くも、私しかそこには居ない。

見上げると、紫外線ライト………いわゆる殺虫灯が有ったのだけど、赤ランプを点(とも)しながらも、当の紫外線灯が切れているらしく、青い光も発しておらず、真っ暗で寂しく沈んだ感じでぶら下がっている。

直後、

バリバリっ!!バタバタバタっ!!

「うふぁっ!!」

ギョっとして、その殺虫灯から斜め下の音のする方に目をやる。

居ない。

何も居ない。

虫がもがいてバタバタしている筈なのに、苦しそうな羽音がするのに、姿が見えない。

通常なら「ひいぃぃっ!!」と慌てるだろうが、「いひいぃぃっ」と、私は軽い震えと気色悪い笑みを浮かべる。

虫ならば「うわはぁぁっ!!」と驚いて丸い身体を飛びのかせるが、今回みたいな音はすれども姿が見えぬ体験は初めてなので、「又ネタが出来た」と気色悪い笑みを浮かべつつ、飲料を飲み干した空の容器を、リサイクルボックスにガシャンと入れて、車輛に乗り込みエンジンを掛けた。

Concrete
コメント怖い
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