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『ライバーに潜む影』(存在しない記憶vol.3)

中編5
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『ライバーに潜む影』(存在しない記憶vol.3)

1:北野(きたの)ハヅキはかつて、『ラブリーシスターズ』というグループで、ライブアイドルとして活動をしていた。

アイドルになる事は小さい頃からの夢だった。

実家が美容室を営んでいる。

東京の美容師向けの専門学校に通い、東京の美容室で修行するという名目で上京し、20歳の時から活動を始め、2年間、固定ファンは居たが、人気は出なかった。

ルックスも良く、中、高と学生時代にはモテモテだった。ふんわりとした声も褒められる事も多い。

自分の容姿が良いからアイドルを目指して居たのでは無く、アイドルが好きだったからだ。

しかし、ハヅキは運が悪く、ハヅキ以上の容姿を持つメンバーがいた。

加藤(かとう)シマである。

ファンとツーショットで写真を撮る『チェキ』での売り上げは、ダントツ。

彼女のおかげで、そのグループは持っていた。

そんな状況だった。20歳のハヅキに比べ、18歳と若い。

シマは程なくして、アイドルオーディションに合格し、グループを卒業した。

ハヅキはそれから2年、『ラブリーシスターズ』として、活動していたが、人気が上がらなかった。

そして、グループの解散が決まり、ハヅキのアイドル活動は終わりを告げた。

ハヅキはその後、絶望感から、美容室でバイトをしながら、細々と暮らしていた。

2:ハヅキが26歳になると、実家からも戻る催促の連絡が来る様になっていた。

今からアイドルになんかなれないのは、ハヅキにも分かっている。

しかし、大きな会場とまでいかなくても、観客の前で歌って踊る。

舞台に立つ者が感じるといわれる、その感覚。

それを忘れる事は出来なかった。

ある日の事。どことなく元気が無いハヅキに対して、同僚が動画アプリでのライブ配信してみたらどうかと勧められた。

同僚もやっているらしい。

試しに、同僚のライブ配信を観て、楽しそうと感じたハヅキは、別のアプリでライブ配信を『hazuki』という名前で始めた。

この後、彼女が恐怖体験するとは、この時は知らなかった。

3:ライブ配信を始めてから、暫くはフォロワーは少なかった。

リスナー全てのコメントを拾う事に集中すると、徐々に増えて来た。

その時。リスナーから妙なコメントが来る様になって来た。

後のカーテンが不自然に動いた。

背中に影が映った。

男性の声が聞こえた。

など。

彼氏居るんじゃ無いかなどのコメントが来る様になった。

ハヅキは一人暮らしで、現在恋人は居ない。

否定するが、その様なコメントが続いた。

そして、ハヅキの身の回りにも、奇妙な事が起こり始める。

物の位置が変わったり、ラップ音が鳴り始めたり。

ある日の事。

夜、仕事帰りに、後から付けられてる様な気配を感じた。

余りに恐ろしくなり、自宅近くのコンビニエンスストアに入った。

すると、気配が消える。

家に帰ると、また、怪現象が起きる。

怖さを紛らわす為、ライブ配信を行い、好きな女性アイドルグループの楽曲を流しながらのライブ配信。

すると、

『あるふれっど』というユーザーからフォローされた。

そのアイドルグループが好きで、語れる友達が居ない。

ハヅキの容姿と、声を褒めた。

ハヅキも『あるふれっど』にはちゃんと返事をするようにしてた。

すると、家で起きる怪現象は止む。

最初は偶然だと思っていた。

しかし、『あるふれっど』がライブ配信に参加すると怪現象はピタリと止む。

ハヅキは少し、霊感がある。

この、『あるふれっど』というユーザー。

懐かしいような、何処かで感じた様な感じがする。

過去の恋人だろうか?

モヤモヤとした感じを拭えないハヅキであった。

4:ある日の事。

また、この気配だ。

恐ろしくなり、足早にコンビニエンスストアに向かう。

しかし、気配は消えない。

買い物を済ませて、帰宅する。

そして、ライブ配信を行う。

少し気が紛れたが、今日は違った。

ユーザーからのコメント。

「hazukiさん、後ろ」

振り返るとそこには、男がいる。

この世の者では無い。

その顔に見覚えがある。

ライブアイドル時代、ハヅキの固定ファンだった男だ。

ハヅキが悲鳴を上げると同時に、新たなユーザーが参加した通知が鳴った。

『あるふれっど』だ

すると、ハヅキの後ろから、流れる水の様な体躯をした龍が男に巻き付き、食う。

「間に合って良かった」

『あるふれっど』のコメントだ。

ハヅキには、全てが分かった。

5:ハヅキは、『あるふれっど』に会う為、彼が居る店に向かった。

ハヅキが立ち寄る店に流れる水の様な体躯をしている龍を持つ店員がいる。

普段はお互いにマスクを付けている為、彼は気付かなかったのだろう。

ハヅキは彼の顔はおろか、声も知らない。

彼の前に立ち、マスクを外すハヅキ。

「昨夜はありがとうございました。今までも守ってくれてたんですね。蘭(あららぎ)さん」

ハヅキの前にいる男。

それは蘭(あららぎ)ユウジだった。

6:まず、ユウジが驚いたのは、常連客の女性が「hazuki」だった事だ。

自分が好きなアイドルグループのファンで美人ライバー。ユウジが興味を持たないわけがない。

彼女が来店すると美月が出て来る。

タチの悪い霊に狙われている為、美月が姿を見せて

牽制していた。

実際ユウジはハヅキの配信を見ても、何も感じなかった。

それは男の霊がユウジと共にいる美月の気配を感じて恐れたからだ。

回線で繋がれば、物理的に近くに居る事と同意だ

美月がハヅキの元に行けたユ理由はそこにある

ユウジはハヅキに説明した。

男は事故死していて、ハヅキに対しての気持ちが強く、成仏出来なかった。

ライブ配信で、ユーザーに存在を認識された事で力を付けてしまった。

水霊(みづち)である美月は、それに気付き、姿を見せて牽制していたのだ。

「あるふれっどさん、たまにはギフト投げて下さいよ」

「金無いから、無理。そもそも、配信見てくれるだけで嬉しいって言ってたやん」

「当たり前ですよ。他のユーザーさんの印象悪くなるじゃないですか」

「聞きたく無かったなぁ」

「ふふっ、でも、蘭さん。今度から、アイドルグループの話し出来る友達出来たじゃないですか。また、ライブ配信見て下さいね」

ハヅキは笑顔を見せ、帰宅した。

ライブ配信中に見れなかった最高の笑顔だった。

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