ここはとある地方の田舎町
妻が友人との旅行で一家で一台の車を持っていったものだから、今日の職場からの帰りは車ではなく電車になってしまった。
秋だから七時にはもう、周りは暗い。
駅員の居ない改札を入り、駅舎の中で、1時間に一度の上り電車を待つ。
あと30分待たねばならない。
携帯のネット漫画を読んで時間を潰そうか。
ふと、壁に貼られた指名手配のポスターが目に入る。
それは、平成中期の殺人事件のものだった。当時の犯人の写真がでかでかと貼られていた。
それは俺の写真だった。
事件の内容は、いわゆる猟奇殺人だった。
深夜に人が喰い殺された。なぜ喰い殺されたと分かったかというと、死体に歯形がくっきりついていたのだ。
それは仕方ない。
俺は狼男なのだから。
そこは良い。
しかし、納得がいかないのが「現在の予測顔」である。
なんでゾンビにされてんだよ。
この、20年でヒゲを生やしたとか、白髪になったとか禿げたとか、そういうのは想定されても、いくら何でも、ゾンビにはならんだろ。
しかも最新のAI技術で予測した挙句なのはどうなってんだ?
ディープラーニングの悪ふざけが過ぎるぞ。
はぁ、、、
呆れながら壁にかけられた鏡を覗く
そこには疲れた顔の男があった。
おもむろに顔の表面をゴシゴシと手でこする。
すると、
肌の表面から ボロボロと何かが落ちる。
それを見てまた溜息がてる。
、、、乾燥して粉を吹いていた。
はあ、空気も乾燥してきたなぁ
ボディクリームでも買うかなぁ
もし狼男である俺がゾンビになったらどうなるんだろう。
狼姿のときにゾンビになるか、人型の時にゾンビになるかで違いがでるんだろうか。
狼のときにゾンビになって誰彼構わず噛み付くようになったら、ただの狂犬じゃないか。それは家庭をもつ狼男として、プライドが許さない。
人型なら、まあ、いいか。、、、良くないけど。
そんなことを考えていたら、駅に電車がついた。
乗客はまばらのようだ。
開ボタンを押してドアを開け、乗車し、閉ボタンを押してドアを閉じた。
席に座り、ぼーっと携帯を見る。
すると千鳥足の酔っ払いが俺の横に座ってきた。
なんだよ、
こんなに空いてんのになんで俺の横に座るんだよ。
、、、でもスタイルの良いOLみたいだから、ちょっとラッキーだ。
おっと!?こちらに頭をもたげてきた!
おおおおお。酒臭くはないが、なにか熟成したような良い匂いがするぞ。
今度は俺の首筋にくちづけをしてきた、、、え!?
なんだこの急展開は!?
急にロマンスが始まったぞ!!?
そしてそして!!
彼女はさらに積極的に首筋へのキスを甘噛みに、、、
、、、、、、
あま、がみ?
ガブリと噛みつかれ、彼女の顔を確認した俺はふと思った。
ああ、、、
最新のAI技術ってのは凄いんだな、、、って。
作者退会会員
妖怪+感染症=ゾンビのアイデアをいただきまして、作ってみました。
おばけにゃ学校も病気も関係ないですが、もし妖怪が感染症になったら、アイデンティティが崩れて他の妖怪の名で呼ばれてしまうのでしょうか。感染症といっても、生物ではない妖怪に寄生する、質量を持った現実のウイルスはいないわけで、とすれば、妖怪にとっての感染とは何を指すのか。なかなか想像できませんが、一反木綿にとってはナイロン糸だと思います。ナイロン配合の一反木綿は剛性が強すぎて人の首を絞めづらいと思うのです。