短編2
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紫陽花に誘われて

紫陽花…

色を変えるその様子から花言葉は「移り気」や「浮気性」などという言葉がある一方で、「辛抱強い愛」という花言葉も存在する。

ふふっ、しかしながらこうして見るとまるで男性を責める女性の言葉のように見えるだろう?

しかし、浮気性なのが男性だけとは限らないのさ。

女落語家は微笑む。

まるで、全てを見通したような顔で。

女は尋ねる。

「なんの話よ」

女落語は言った。

「なあに、少し昔話を思い出したのでね」

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その昔、五平という名の男がいた。

この男、顔はいいが酒癖と女癖が悪くて働きもせずずっと遊び呆けていた。

この男には、それはそれは美しい妻がいた。

妻は、朝から晩まで寝る間を惜しんで働いては夫に金を毟り取られた、そんなある日金を巡って喧嘩になった夫婦。

五平は頭に血が上り妻の首を絞めた、妻はすぐに息絶えた。

さすがに、五平は焦った。

どうにかしなければと思い五平は庭の紫陽花を抜き、穴を掘り妻の遺体を埋め、紫陽花を植え直した。

それからは、妻が行方不明になったことにし、心を入れ替え真面目に働いた。

そして数年が経ったある日のこと、五平は新しく結婚した妻との間に子供をもうけた。

幸せな日々が待っていると思った。

ある晩、五平が庭に立ち寄ると何かに足を引っ張られた、五平の力ではびくともしなかった。

五平は妻を呼んだ、「逃げろ」と。

「ああいう女が好きだったのね」

その声は亡くなった妻の声だった、見れば最愛の妻は腹を貫かれ頭を弾き飛ばされていた。

「許さないわ、永遠に。でも、愛している貴方だけを」

男の体は次第に木の根に変わり土の中に飲み込まれていく、悲鳴を上げたくとも口から出てくる根が邪魔をする。

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「いかがだったかな?おやおや」

女落語家はケタケタ笑った。

可笑しそうに、とても残酷な微笑みを浮かべながら。

「せっかちなお客さんだ、そんなに待てなかったのかな?では、これにて失礼」

雨が降る公園には青い紫陽花が咲くばかりで、女の衣服と鞄だけがまるで抜け殻のように残されていた。

彼女の行方を知るものは誰もいなかった。

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