3日後に和尚様が来てくれた
邪鬼の件とガイコツの件
和尚様は家に着くなり早々に家の周りを歩き出した
「だいぶ・・・周辺が変わりましたんですかね・・・気の流れというか空気の流れが以前来た時よりもなんとなく重いというか・・・景観は確かにいいですわい・・・
ほとんど更地になってるとは・・・ある意味、家があると結界の役目も多少はあるんですわい
ここの地区だけまさに歯抜け状態・・・
こりゃ・・・」と言いながら辺りをウロウロとしていた
ある程度周辺を見て回り和尚様は家へ入っていった
「こりゃ・・・ほとんど結界の役目がなくなってしまったですわい
この家だけ結界を張っても外のほうがもはや霊たちの無法地帯となっていますわい
」
「え・・・・だから邪鬼たちが来たのか・・・」
「そうですわい・・・お寺へ帰りさらに強いお札とお守りを作りますわい
その間は夜の23時以降から朝の5時までは外出はしないほうがいいですわい
この家の裏の道と国道沿いはもはや霊の通る道になっていますわい
普段、国道沿いは車や人の往来が激しいのでなかなか気づかないと思いますわい
ですが・・・夜の0時以降は静かでしょ・・・最悪でも午前1時から午前5時は外へ出ないでほしいですわい・・・」
「午後11時以降か・・・・子供たちの塾もあるし・・・私も会社の残業があれば午後10時以降になる・・・」
「お札とお守りさえ持ってれば大丈夫ですわい・・・ですが・・・子供たちだけは午前0時以降朝の5時までは家にいてほしいですわい・・・」
「はい・・・・問題は塾だな・・・・午後9時ごろには塾は終わるから・・・そのあとにまっすぐに帰ってくれればいいけど・・・たまにコンビニへ寄ってるらしいし・・・
コンビニに寄ると家に着くのが午後10過ぎになる・・まぁ3人が一緒に帰ってくるのでいいとは思うけれど・・・」
「まぁ・・・その時間帯なら大丈夫だと思いますわい・・・」
「はい・・・後で子供たちに話しておきます」
「それと・・・「ガイコツ」の件ですわい・・・見たところ・・・もう離れていますわい
たまたまF君の体に入っただけですわい・・それよりも・・・・ここの霊道に力を持った悪霊が通る時が一番危ないと思いますわい・・・家の中なら安全ですわい・・・それと気になったのが・・・あっちのほうの山のふもとにある神社・・・すごい霊気を感じましたわい・・」
「あ・・・あの山の神社はいろいろとありまして・・・子供達には午後5時以降は絶対に神社へは行かないように言いました・・・」
「そうですかい・・・昼間はいい神社だと思いますわい・・・ですが・・・夜間は何気に得体のしれないものたちが徘徊してるような感じがしましたわい・・・山の周辺には家も無いようですし・・・夜中はさぞかし不気味な感じがすると感じましたわい」
「そうなんです和尚様・・・以前は家の前に建物があったので見えなかったのですが解体して更地になったときに丸見えになってしまいました・・・ですから植木などをして見えないようにはしました・・・」
「なるほど・・・夜中はあちらの山や神社は見ないようにしたほうがいいですわい」
オヤジたちが帰ってきた
全員集まっての夕食
和尚様はこの和気藹々が非常にうれしいと言っていた
普段は奥さんの2人しかいないからね
たまに息子さんが帰ってきても話すことはほぼなく淡々とした夕食だとか
早々にオヤジと和尚様と娘3人は仏間へ行きラジオの前で座っての雑談をしていた
オヤジが今までの家の出来事を和尚様に話していた
今夜は和尚様が泊まると聞き娘たちは大喜びしていた
和尚様からいろいろなお話が聞けるから
「今晩11時ごろにこの辺を少し歩きたいですわい・・・何か見落としてるかもしれんですわい・・・」
「でわ私がお供します・・・」
楽しい時間がどんどん過ぎていった
「さて・・・そろそろですな」
「はい・・・」
「パパたち、どこへ行くの?」と楓が聞いてきた
「そこら辺を少し調べるんだよ」
「私たちも行きたい」
「いや・・・家で大人しく寝ててほしい」
「え・・・」
「最後にほら・・裏山の神社へ行くんだよ」
「え!!!駄目だよ、行っちゃ!!パパの言うとおりもう寝るね!」
娘3人はオヤジの手を握っていた
「じいちゃ・・・パパたち大丈夫かな・・」
およそ30分間の散歩
和尚様はいろいろと気づいた点を歩きながら教えてくれた
「和尚様は今夜は娘たちの部屋で寝てください」
「はい、そうしますわい」
私はオヤジと二人、和尚様が言っていた気になる点を話した
「そっか・・・あのくそ坊主も気づいていたか・・・まぁ・・
今のところ・・・いいとは思うが・・・用心したほうがいいな・・・
」
実際は和尚様も解決方法がないと言っていた
まさか、あの神社を解体するわけにもいかない
あの神社はここらへんを守る神社だ
一家庭の事情で解体など絶対に無理だ
ただ・・・やはり近所でも・・・あの神社に関しては不気味だと言っていた
しかし、あの神社は地区が違う
あちらの地区の区長と話をしなければいけない
明日、さっそく、オヤジがその区長と会い、事情を話すと言っている
まぁ・・・絶対にもめるぞ
残業が長引き、家に着いたは午後10時過ぎ・・・
なんとか午後11時以降の外出禁止令に間に合ったけれど・・・
これ・・・仕事にも影響が出そうだ
一人、遅い夕食をしてる時にオヤジが声をかけてきた
「おい・・・ちょっとな・・・」
(・・・区長との話し合いでもめたかな・・・)
「意外にな・・・あっちの区でも問題になってるらしいぞ」
「え!?どういうことだ?」
「区長が言うには・・・あの神社の周辺の怪異を周辺住民も苦慮しててな
祈祷師や住職や神主などに頼んでなんとかお祓いできないかと頼んだそうだ
すべてな、「失敗した」とあの区長は小さい声でボソッと言ったよ」
「失敗・・・・こりゃ・・・」
「クソ坊主にも区長の話を聞かせたけれどな「やはりですわな」の一語でダンマリになったよ「わしゃ・・・考えますわい・・とりあえずは帰りますわい」と言って帰りやがった」
オヤジがさらに言うには
あの周辺の住宅地でも怪奇的なことが起きてて睡眠不足の住民がたくさん出たらしい
人の話声やラップ音・・・終始人の気配がするなど・・・
我が家で起きてることがあの地区の住宅地でも起きていた
原因を調べるとやはり最後にたどり着くのは・・・あの神社になるらしい
区長が言うには
元々、あの神社はあそこには建っていなかった
明治から大正にかけての大飢饉で村がほぼ全滅するという災厄があり
村人が投げなしのお金を集めて神社を建てたようだ
元々の位置は・・・・あの自動販売機の後ろにある屋敷あたりだということだ
建てたけれど飢饉は収まらず村人がどんどん逃げて行ったらしい
ある日のこと、一人の乞食坊主が村に来たらしい
村人があまりにも貧相な格好をしていたので声をかけ食事をとらせたらしい
食事と言ってもお湯の中にわずかな米粒を入れた雑炊といえば雑炊みたいなものを食べさせた
乞食坊主は何度も礼を言い立ち去るときにふと神社を見て
「こんなところに神社を建てるとは神仏たちが怒っているぞ!!!早急にあの山の麓へ建て直せ!!なんという・・・恐ろしいことを・・・」と言いながら早々にこの村から出て行ったんだとか
「おい・・・オヤジ・・・うさんくさいよな、その坊主・・・むしろ元々に建てたあの自動販売機の裏の辺りが一番いいと思う」
「お・・・せがれよ・・・めずらしく正解だよ・・・まんまと乞食坊主に騙されたんだよ・・結局・・・飢饉は乗り越えたけれど・・なぜか作物が貧相に育つようになったんだとよ」
「やはり・・・・貧相な作物?・・・畑や田んぼ、毎年豊作だぞ・・・たまに野菜などもらうけどな・・・え?」
「今はな・・・戦後の土地の改良で土を入れ替えたんだとよ・・・それまでは土はそんなに悪くないのに作物の育ちが悪いと言ってた
だから基本的にここらへんの村は貧乏で・・・娘を売ってなんとかだったらしい・・」
「え・・・ここらへんもか・・・おハル、おアキちゃんたちの土地と同じだな・・・」
「だろ・・・それを聞いて・・・ふと思った・・・関連してるんじゃないかと・・・
あの乞食坊主の正体は何だったのか・・・俺が思うには間違いなく邪鬼じゃないかと・・・
乞食坊主に化けて村人を騙したんじゃないかと」
「オヤジ・・・こりゃ・・・あの神社をどうにかしないとな・・・」
「まぁ・・・それでよ、区長に提案してきた「あの神社を元へ戻せばいいじゃないか」と、そしたら区長は「戻したいのだけれど・・・一度、市役所へ相談しに行ったんだよ・・・
結果的に「移転はダメ」だと言われたんだよ・・理由を聞いたら「法律がどうのこうの」といいはじめて移転費用も馬鹿にならないと言われた・・・「税金をそんなものに使えない」とはっきりと言われたらしい」
確かに、解体費用と移転費用、建て直しの費用はいるよな・・・
いくらになるのか・・・
「それとな・・・移転に反対する住民もいるんだとか・・・なかなか意見がまとまらずに困ってるとさ・・・それでよ、あいつに「費用を出せねーか」と聞いたら「あんたさ・・今の財閥の財政をわかってていっているんじゃないよね?父や母の時代と違って収益が落ちてるんだよ、財閥の大事なお金をホイホイと出せれないよ、あ!あんたの給与を今後20年間無しならいいよ」だとさ・・・」
さすが・・おふくろ・・・完全に論破してる・・・
オヤジのあの低知能じゃ無理だ
しかし・・・移転して解決できるのならなんとか移転をしないと・・・
私はもう1度おふくろを説得させて費用を出してもらえないか聞いてみた
やはり・・・「財閥の財政と住民の反対がある以上は出せない」とはっきりと言われた
論理的に話をしてくるおふくろに言い返せずに撃沈した
そのことを和尚様にも話をした
「ああぁ・・・無理でしたか・・・毎年、財閥から寄付金をもらってるんで強いことは言えませんわい・・・まぁ・・・寺の寄付金を神社の移転費用に充てればいいかと思いますわい・・・もう1度その点を言ってみたらどうですかいの?」
「はぁ・・・たしかに・・・寄付金を・・・うまくいくかな・・・」
おふくろに「お寺の寄付金を神社の移転費用に充てたら」と提案したら即座に「
F!・・・私も移転には個人的には賛成よ、でもね・・・その移転費用にはほかの一族の了承が必要なのよ、和尚様のお寺の寄付金も他の一族は猛反対したのよ、それを神社の寄付金を神社の移転費用にと言ったら・・・間違いなくお寺の寄付は中止になるのよ・・・
正直、私も困ってるのよ・・・」とおふくろは今にも泣きそうな顔をしていた
今も平行線のまま
家の怪奇的な現象の原因がひとつ見つかったのだが・・・・
これは・・・非常に難しい
作者名無しの幽霊
前々からあの神社はいろいろと曰くがあると思っていたが
何かしら私たち一族とも関連してる気がする
原因はわかったけれど・・・これは・・・無理だろう
原因の一つがはっきりと分かった点は今後の対策として重要
家のラップ音や不気味な音など・・・少しはすっきりとした
しかし、国道や裏道が霊道になった以上・・・夜間の外出は厳しくなった
S子は更に家中のカギ閉めをチェックしながら毎日行っている
2階も特に娘たちの部屋は閉まってるかどうかよく確認している
娘たちは当分、仏間で寝ることになった
昼間は自分たちの部屋で遊んでるようだが夕方以降になると2階へ上がるのを怖がるようになってしまった
楓は宿題や勉強はリビングか仏間でするようになった
まぁ・・・原因が一つわかっても解決したわけではないので今まで通りの生活だな
息子たちは相も変わらずふざけあってて「怖い」という感情は無いのだろうかと心配になる
夜はぐっすりと熟睡してうらやましいなと思う
最近は残業が多く午後11時前には何とか家には帰っているが・・・電車を1本逃すと大変になりそうだ
遅い夕食をひとり黙々と食べてる・・・たまにS子が様子を見に来るが時間が時間なので寝室へ行っておふくろやカナちゃんの母親と雑談をしてる
まぁ静かでいいのだけど・・・外の車の音や人の話声を聴きながらの食事もいいのかな・・・
S君も忙しくなかなか家へ来なくなってしまった
まぁ・・・一人愚痴をこぼしながらね・・・ボソボソと・・・