長編10
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トンネル

S君はプロのカメラマンとして活躍している

モデルはもちろんF子

二人三脚でがんばってる

プロカメラマンたちの会合がたまにある

もちろんS君は参加している

ほかのカメラマンのカメラについての話や撮影の苦労話、雑談など結構楽しいと言っていた

夜に会合があるのでF子連れての参加は無理なのでS君一人だけ参加している

「アニキ・・・ごめんね、Sアニキ、カメラマンの会合があるんだって・・・

本当は私も参加したいけど・・・夜だからと言ってSアニキ連れて行ってくれない

まぁ・・・夜だし・・・私に対してのやさしさだと思うけれど・・仕方ないよね・・・」

車の後部座席に座ってF子がしゃべりだした

男ばかりの集まりだから・・・仕方ない

片道およそ1時間のドライブ

F子の愚痴や現況などを聞きながら車を走らせている

途中でコンビニに寄った

二人で一緒に店の中に入った

どうも客が自分たちをジロジロとみてる

F子もそれを気にしてる様子

「アニキ・・・見られてるね・・・不細工と美人だからかな・・・なんか釣り合わないから見てるんだね・・」

「おいおい・・・本人の前で言うなよ・・・」

「エヘヘ・・・ごめんね、アニキ・・・」

まぁ・・・たしかに・・・兄と妹には見えないだろうな・・・

不細工が美女を連れまわしてると思われているのかな

はぁ・・・・

「おーーい!!F子ちゃん!!」

聞きなれた声・・・オヤジだ

「あ!!パパ!!こっち!!」と大きな声

「さぁ・・パパと一緒に家へ帰ろう」

「うん!!あ・・・ごめんね・・パパと帰るね」

さっさと2人出て行った

客のクスクスとした笑い声が聞こえたような・・・

後ろで並んでいたおばさんが

「あんた・・・あんな美人が本気で惚れると思ってるんかい?・・・あんた、家へ帰って鏡を見たほうがいいよ・・・」と小さな声で話しかけてきた

大きなお世話だ!!!

なんか急に恥ずかしくなってきた

家へ着いた

「あれ・・F子は?」とおふくろが聞いてきた

「あ・・・コンビニでオヤジに会って・・・F子を連れて行ったよ

まだ帰ってない?」

「そっかい・・・あいつが一緒ならいいか」

およそ30分後に2人が帰ってきた

「パパに食事おごってもらったよ、ママ」

「そうかい・・・それなら夕食はいいよね・・S子ちゃんのお手伝いをしておくれ」

その1時間後にS君が帰ってきた

「いつもすまねぇな、F、F子のお守りも大変だろ」

「おいおい・・・酔ってるんじゃんか・・・」

「Sアニキ!!酔っちゃって!!はやく2階へ行って寝たらどう?」と不機嫌なF子

「いや・・・ソファで寝る・・・・おふくろさん・・・夕食はいらないっす」

「あらあら・・・結構飲んだね・・・Sちゃん・・・F子、お布団をかけておやり」

「え・・・ママ、甘やかしちゃダメだよ」

すごいイビキだ

夕食時はS君のイビキで台無しになった

「だから・・・2階へ・・・」とF子のつぶやき

食事が終わり早々に娘たちはオヤジと共に仏間へ息子たちは2階へ行ってしまった

私も早々に書斎室へ逃げた

リビングでは女子たちが雑談をはじめた

笑い声や話声と共にS君のイビキも聞こえてきた

しびれをきらしたF子が「アニキ、うるさい!!起きてよ」と体を揺さぶった

目を覚めたS君、まわりをきょろきょろ見回して

「あれ・・・お店じゃない・・・・え・・・いつのまに帰ったんだ」とぼけたことを言い出した

「アニキ、なにボケてるの、寝るんだったら2階でしょ」

「・・え・・あ・・・そういえば・・F、病院へ運ばれたんだってな・・俺・・今から病院へ行くわ」

「アニキ!!何を言ってるのよ!!ボケボケすぎる、Fアニキは病院にいないよ、書斎室にいるよ、しっかりしてよね」

「え・・・あれ・・・店で飲んでたら携帯が鳴ってメールで「交通事故にあった・・今、病院」と書いてあったぞ・・・あれれ・・・」

「アニキ!!いい加減にして2階で寝てよ」

「あれれ・・・酔ってるのかな・・・」

私はリビングから聞こえてきたF子の声にびっくりしてリビングへ行った

「おいおい・・・ひどいな・・・俺は事故にあってないぞ・・・まったく」

グワァ!!!ピーーピーー

すごいイビキ

さすがの女子たちも客間へ逃げて行った

1時間後に突然、S君が起き上がった

「おい!!ここはどこだ?あれ・・・・俺って確かお店で飲んでそのまま寝たんだよな

なんで、家にいるんだ?」

「大丈夫か、だいぶ酔ってたぞ、F子がカンカンに怒ってたよ

また後で、マシンガン説教が待ってるんじゃない?」

「えええ!!そんなに酔ってたんか・・・全然覚えてない

でも・・・どうやって家に帰れたんだ?」

「自分で車に乗って・・・でもあんな状態で運転できるかな・・・」

「いや・・・運転した記憶がない・・・」

「ちょいまち・・・車あるか見てくる」

外に出て駐車場へ行った

車がない・・・・え?・・・・

近所を探しても無かった

「S君の車が無いよ・・・もしかしてさ、カメラマンたちが車に乗せて家まで送ってもらったんじゃない?」

「そうかも・・・」

S君はスマホで飲んでたメンバーに電話を掛けた

「え・・・いや・・・消えた?俺が?・・・意味が分からないです・・・はい・・はい・・」

S君は茫然となっていた

「おい、F、今さっきのメンバーたちが俺が急に消えたって言ってるんだよ

どうもな・・・メンバーたちとお店へ行く途中でトンネルの中へ入ったときに後ろからついてきてるはずの俺の車がトンネルから出てこない・・・それでUターンしてそのトンネルの所へ行って俺を待ってたらしい・・・全然出てこないんで・・・トンネルの中も探したんだってさ・・・でもいないんで・・・家へ帰ったんだろうということでそのメンバーたちだけでお店へ行ったんだってさ・・・俺の記憶だとちゃんと後ろからついていってお店でワイワイとしながら酒を飲んでたはずだ・・・おかしいな・・・」

「そのお店の人に聞いたら?」

「そうだな・・」

と言いそのお店へ電話を掛けた

・・・そのおかけになったお電話番号は現在つかわれておりません

「え!!!掛け間違えたかな」

もう1度

・・・そのおかけになったお電話番号は現在つかわれておりません

「うそだろ・・・」

なんかおかしなことになってきたぞ

「メンバーの人にそのお店に行ったかどうか聞いたら」

「うん・・・」

「え・・・そうですか・・・」

「おかしいな・・・メンバーに聞いたら確かにそこのお店にいたと言ってるんだよ

いつものお店だからさ・・・間違えるわけがないんだが・・・じゃ・・一体、俺・・・どこで飲んだんだろ・・・確かにあのお店へ入って料理や酒を注文したぞ

あれ?・・・・それよりも俺の車ってどこへ行ったんだろ・・・」

確かに・・・S君の車はどこだ?

どこに置いてきたんだ

S君のスマホが鳴った

「はい・・・え・・・そうですか・・・はい・・そうなんです・・・わかりました」

「はぁ・・・今さっきの電話な・・・メンバーの人で俺が全然来ないんで心配してたみたい・・交通事故でもあったんじゃないかと思って電話をかけてくれた

車のことやお店のことをその人に話したら・・・家へ来てくれることになったよ

およそ1時間後にその人が来るから」

なんか・・・な・・・

およそ1時間後に玄関のチャイムが鳴った

「すいません・・・私、S君の仲間のカメラマンのJと言います・・・」

S君が慌てて玄関へ走って行った

「おう!いたか、事故でもあったんじゃないかと心配してた・・・もう少し詳しい話を聞かせてくれ」

S君はJさんをリビングへ案内をした

軽く挨拶をした

「途中まではついてきていたのは確認したんだがトンネルを入ってからふとミラーを見たらS君の車がいなかった・・・てっきり・・・スピードを落としたのかと思ってた

トンネルを出て・・・しばらく走ってもう1度後ろを見たらついてきていない

咄嗟にほかのメンバーにいないことを伝えだけど「後から来るさ」ということで先に店へ行ったんだよ

でも、30分だっても来ないし・・・・メンバー連中は完全に酔っぱらってて・・全然話を聞いていない状態だった・・そのお店には2時間ほどいたかな・・・私は酒を飲んでいなかったんでそのまま家へ帰る途中でS君へ電話をかけたんだよ

ほかのメンバーたちは酔いが冷めるまで車で寝てるよ」

「迷惑をかけました・・・先輩・・・すいません・・・でも自分はついていってそのお店で料理や酒を注文した記憶があるんですよ」

「え!?・・・いや・・・S君、君はいなかったよ・・・」

「それと、先輩、そのお店の番号にかけたら「現在使われておりません」とアナウンスされたんです」

「ええ・・・ホント?かけ間違いじゃない?」

S君はスマホの履歴にお店の電話番号を表示した

「確かにその番号だよ・・・おかしいな・・・」と言いながらJさんはそのお店に電話を掛けた、まだ営業中だからマスターが出るはずだ

・・・そのおかけになったお電話番号は現在つかわれておりません

「うそだろ!!おいおい・・・1時間ほど前までそのお店で食べていたんだよ

どうなってるんだ?」

Jさんはほかのメンバーに電話を掛けた

「誰も出ない・・・完全に熟睡してるかもな・・・」

埒が明かない

「いっそ、そのお店へ行きませんか」と私は提案した

「そうだな・・Fのいう通り・・・先輩、一緒に来てください」

「お店のことが気になるし・・・一緒に行くか」

S君を助手席に乗せてJさんの案内でそのお店まで行くことになった

「あれあれ!あのトンネルだよ、F・・・」

「え!あのトンネル・・・ちょっとまってS君、Jさんに車を停めるように電話をしてくれ」

「あ・・・おう」

Jさんの車が止まった

Jさんが車から降りてきた

「そうそう・・・このトンネルだよ・・・年に3回ほどの会合でこのトンネルを通過しているけどこんなのははじめてだよ」

「たしかに・・・」とS君は首を傾げた

トンネルは普通の感じ

トンネル内はきちんと明かりもある

別段・・・怪しいところはない

トンネルの距離はスマホでみるとおよそ1Km

トンネルの入り口当たりに置いてある記念碑を見た

「昭和40年竣工」と書いてあった

古いといえば古いかも

修復工事でもしてあるのか中はそんなに荒れていない

ネットで調べても心霊スポットじゃないみたい

3人で少しばかりトンネル内を歩くことにした

話声が響き渡る

トンネルの向こう側からすごいエンジンの音が聞こえてきた

結構スピードを出してるような音だ

「すげぇ・・・エンジン音だな・・・おお、どんな車だろ」とS君は興味津々

エンジン音がトンネル内を響き渡った

と同時にエンジン音が止んだ

「え・・・確かにヘッドライトが見えてこっちへ来てたはずだけど・・・」

「たしかに、見えてた・・・」

「私も見えた・・・」

3人はポカンとトンネルの向こう側を見て呆然としてた

シーーンと静まり返ってる

「こりゃ・・・ここにいたらあかん気がする」とS君

3人は急いで車に乗り込んだ

「とりあえずはあっちの出口を出て一度止まって周辺を見ましょう」とJさん

車をゆっくりと走らせて出口を出た

「やはり・・・あの爆音の車は無いよな・・・確かにヘッドライトが点いててこっちへ来てる感じはしたんだよな・・・脇道も無いし・・・」

「おかしいな・・・」

しばらく様子を見たが別に何も無かった

「もうそろそろ着くはずだ・・・・この辺りなはずだけど・・・」

Jさんの車が止まった

「S君・・・この辺りだよな・・・カーナビでもここを指してるんだけどな・・・

お店が無い・・・いや・・・お店があった痕跡がない・・・」

「おかしいすっね・・でも先輩たちと3年前からここへ来て料理やお酒を食べたり飲んだりしてたんですよね・・・」

「あのぉ・・・本当にここにお店があったの?」と私は尋ねた

「あったんだよ・・・しかし・・・どうみても藪の中だよな・・・」

「なんか・・・ここへ来てから圧迫感を感じるんだよ、S君」

「大丈夫か・・・とりあえずは少しこの辺を調べてみましょ」

3人はそれぞれの別方向で探索を始めた

藪で何もない

「おーーいい、みんな来てくれ」とJさんの大声

行ってみると、なんと・・・S君の車があった

でも・・・何か違和感が・・・・

「なんか・・・ボロくなってる・・・もともとボロかったけどな・・・」とS君の独り言

いや、間違いなく劣化してる

昨日今日の劣化じゃない・・

「ところで・・・S君・・・ほかのメンバーとの連絡は取れたの?」とS君に聞いてみた

「あ・・・それがよ・・・全然繋がらないんだよ・・・もう自分の家にいるだろ・・・」

「わたしも気になってメンバーにかけたよ、だれも出ない・・・」

嫌な予感がしてきた

もうしばらく探索をした

結果的に藪だけ

「この車、動くかな・・・あ・・・ダメだ・・・」

もう見た目にもわかるくらい、走らんだろ

「これは一旦戻りましょう」とJさん

「ですね・・・戻りましょう」

家に着き今後の話をした

「どう見ても・・・S君の車・・・10年いや20年は過ぎてるような感じだった

サビだらけで内装もところところボロボロだったし」

「俺もそう思った・・・あ・・・まだ・・・車のローンが残ってるんだよ・・F子にどう説明したらいいんだよ・・・」

「F子ならきちんと説明をすればわかってもらえるよ・・・」

その日の夕方、S君から電話があった

「おい・・・F・・・ちょっとな・・例の会合のJさん以外のメンバー・・・」

「え?・・・どうした?」

「普通に出勤してきてそれぞれの撮影場所へ行ったぞ・・・Jさんがそのメンバーに昨日のことを話をしたら「はい?お店?いつもの会合で良かったよ、安いわうまいわでこりゃ毎月1回は集まったほうがいいんじゃないか」・・・Jさんポカンと口開けたまま立ってたよ

あの二人・・・というか・・・一体どうなってるんだよ」

あの二人は「普通」にお店があって「食事」をしていたってこと?

え?・・・・

お店は無かったのに?

Concrete
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