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アリス君の災難。ベランダ騒動

中編3
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アリス君の災難。ベランダ騒動

どうも、有馬澄斗(ありま・すみと)と申します。

名字と名前の御蔭で、アリスと言う何とも不名誉な渾名(あだな)を付けられております。

そんな僕が、又変な体験をした話を致しましょう。怖いかどうかと言うより、或る意味傍迷惑(はためいわく)な厄介事に巻き込まれたので………

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さて、死神に記憶を書き換えられたと言うか、書き換えて貰ってから暫くした秋口、そうそうこんな季節。

定期考査ならぬ不定期考査を控えての前準備みたいな形で、僕は机に向かって方程式のプロセスを書き込んでいた。

教科書の予習に、参考書の問題を解き終えて、各先生から言われている箇所の抜粋をまとめて、床に就こうとしていた時の事。

ベランダに気配を感じる。

「………?猫でも入り込んで飛び出したかな」

シャーっとカーテンを開けて僕はベランダを見る。

パタンと階下から、姉の帰って来ただろう扉を静かに開け閉めする音が聞こえたと思うと、気配らしき雰囲気が消えた。

目覚まし時計に目をやると1:00前。深夜ラジオは魅力的だけど、休みの前の日に聴くのが楽しみである為、取り敢えず寝床に横になる。

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翌々日深夜に、再び気配を感じたので、休日前なのもあって僕はラジオの録音タイマーをセットしてから、足音を殺しながらベランダに近付く。

カーテンを恐る恐るめくって行く………

「!!」

ホラー映画宜しく、叫ぶのかと思いきや喉を潰された様に声が出ない。

────目を血走らせた、長い黒髪の白いワンピース姿の女と、これ又定番中の定番が「ニチャァ」と僕に気色悪い微笑みを投げ掛けて来る。

腰が抜けて金縛りに遭ったらしく僕は動けず、声も出せずに、その場で固まっているしか無い。

だが、突如として女が後ろに引っ張られて怒りの形相で、横を睨み付ける。

口をあんぐり開けている女、何故かそいつの視線の先にサーベルを腰に下げたカーキ色の軍服をまとった軍人が、女の登頂部を引っ掴んでいた。

「その様な格好をするな!貴様非国民であるか!もんぺを穿くのだもんぺを!」

「いぎぎぃぃ~っ!!」

軍人に訳の分からない罵声を浴びせられて頭に来たのか、女は歯軋(はぎし)りをする感じで掴み掛かろうとする。

ゴツン!ボコン!

直後、長い棒状の物体が、背後から軍人の頭を直撃する。

「貴様誰だっ!!何をする!」

振り向いた軍人が「ああっ?!」とすぐさま呆気に取られた顔をする。

────ボロボロの鎧と顔を泥まみれにした、後ろ髪の異様に長い男………落武者がムスっとした顔で軍人を睨み付けている。

「お前っ!!姫に酷い事すんな!姫!御迎えに上がりました」

今度は女が呆気に取られて、頭をグラグラさせており、「姫じゃ無い!」「姫様じゃ!」と口論を始める軍人と落武者。

「────おいっ!!誰だ手前ェ等っ!!」

………遠くから、いや、金縛り故に意識の外側から聞き覚えの有る声、姉さんが部屋に入って来たのが分かる。僕が声を出せないのは確定だから、本当に奴等が騒がしかったのだろう。

形勢逆転と言うのかは怪しいが、今度は女と軍人と落武者がベタンとベランダに尻餅をつく番だった。

口をパクパクさせてから、姉の仁王立ちしているだろう先に視線を向けて、何故か三人とも土下座している。

「澄君~っ!!怖かったでしょう~」

「御姉ちゃん、何ィ~。ひぃっ!!」

寝呆けて妹迄入り込んで来て、土下座する三人に驚いたらしい。

姉が、年甲斐も無く、僕の背中をさすってくれていて、妹は妹で僕の顔の近くに来て、頷いていた。

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すぐさま両親にガーっと顛末を話した姉は、彼等に御祓いの専門家とやらを手配させて、御祓いを済ませてしまい、それ以来出なくはなった。

だが、目下の悩みは勉強も教えようとした姉が却ってチンプンカンプンで、むしろ僕が姉の自主勉強の復習に付き合わされる事になったと言うものだ。

亡霊も、中々厄介な事態を残して行ったな………

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