短編2
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こんな夢をみた 第二夜

こんな夢をみた

大きな公園の公衆便所の中のことだ。

手洗い場の隣に同じくらいの高さの台があり、

その台には、

『頭蓋骨は此処に置いてください』

と一句だけ書かれた貼り紙が据えられていた。

自分は小便器に用を済ませたところなので、もうこの便所には用はないのだが気になる。

そこに若い男性が入ってきた。

そしておもむろに自らの頭蓋骨を外すとその台に置いた。

胴体だけとなった身体は個室トイレに入って行く。

バタンと扉が閉まり、ガチャンとカギがかけられた。 

呆然とその扉を見ていると、隣の個室の扉が開いて、頭部のない胴体が出てきた。胴体の様相から老人のようだ。

老人は迷うことなく先ほど台に置かれた若い頭部を掴むと、自分の首に据えた。

そして彼はそのまま公衆便所から出ていった。

そのとき、さっき台に頭部を置いた若い胴体が入った個室トイレの中から、ジャーッと水を流す音が聞こえた。

頭部を取られた彼が、どういう行動をするかを想像して、私は公衆便所から逃げ出した。

公園のなかを散策しつつ落ち着いたところで

ふと思う。

いったい別人の頭部を自分の胴体に据えた彼は、いま頭部と胴体のうち、どちらの人格なのだろう。

考えていくうちに、あの公衆便所のなかにおいて誰と誰という区別など、ないのではないかと思うようになった。

先ほど私は、個室トイレから出てくる、頭部を他の胴体に取られた若い胴体に殺されると思った。そして私の頭部を奪われるのだと。

しかし彼には、そもそも生きるとか死ぬとかいう概念がないのかもしれない。

自他の区別が虚妄である世界において、生死の概念など成立し得ない。

私はここに至って、いま自分がいるところは死後の世界なのではないかと思うようになった。

そして、あの公衆便所にいた胴体達は聖人なのではないかと考えるようになった。

自他の区別がない。それは全く無欲そのものではないか。

あの公衆便所は天国だったのだろうか。

・・・であればこの自他の区別が虚妄である世界で、私を私と認識している私は、さしづめ地獄の住人なのだろうか。

私は先程の公衆便所に引き返さねばと振り向いたが

そこには大海原があるだけであった。

私は自分の首を外して、頭部を海に投げた。

頭部をウキにして釣りをしようとしたのだ。

・・ここで夢から覚めた。

起きた私は、どちらなのだろうか。

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