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中編6
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勇者 ああああ

起きなさい

私の可愛い ああああ

今日はお前の16歳の誕生日

この日の為に 立派な勇者になるように育ててきたつもりです

お前は 魔王を倒す宿命を背負った者

さぁ 旅立つのです

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勇者 ああああ は荒野を行く!

魔物を倒し、経験を積み、人々に恐れられる魔王を倒す為。

__ 旅を続け、しばらく経ったある時。

ああああは、この世界には限りがあるのではないか。と思い始めた。

そして、真に倒すべき魔王は、こことは違う別世界。

そこにいるのではないかと。

やがて、何やら粒子のような物を伝って、そこと繋がれる事に気が付いた。

別世界は広かった。いや、無数にあったと言うべきか。自分がいた規模の世界がたくさんあり、何かを通して繋がっているようだった。

別世界で旅を続ける内に、仲間が出来た。

驚くべき事に、どの仲間も自分は、ああああ だと名乗った。

仲間達は、生まれも育ちも違う者から、双子かと思う程、似ている者もいた。

皆、元々は勇者として竜を倒す目的を持っていた者や、赤白のボールを操って、何やら召喚して戦う少年や、人では無い種族など、多種多様だった。

だが皆、当初の目的とは違えど、真に倒すべき敵が居ることに気付き、使命感を持って世界を旅しているのは同じだった。

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世界を渡り歩く内、いつしか仲間は相当数まで増え、ついに世界を操る魔王を見つけた。

だが。魔王は、一体では無かった。

あらゆる場所に存在し、出会った仲間の数だけ存在するようにも思えた。

しかし、後には退けない。

どれだけの魔王がいようとも。

ああああ 達は、これまでに培ったスキルや特技や魔法や召喚やレベル上げしたモンスターや、その他諸々を頼りに、一気に挙兵した!

ああああ 達は、一斉に雄叫びを上げた!

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ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

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魔王を倒す為の手段は、様々だった。

ある仲間は、魔王が操る世界で「ガチャ」と呼ばれる物の効力を著しく下げる技を使った!

いくら何かを投資しようとも、一向に思い通りにならないらしく、魔王は焦り、苦悶し、恐怖している。

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また、ある仲間は、世界の記憶を司る「データ」という物を無効化する呪文を使った!

これは、かなりのダメージを与えたようで、魔王は廃人のようにしばらく動けないでいた。

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ある仲間は、"レベル1で最初に出会うのがラスボス"と言う、一向に先に進めない"積みスキル"を発動した!

魔王は、口々に「無理ゲー」「クソゲー」「クレーム案件」等と言い、世界を放り投げる者もいた。

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セーブしますか?

・ はい

・▷いいえ ピッ

セーブしますか?

・ はい

・▷いいえ ピッ

セーブしますか?

・ はい

・▷いいえ ピッ

(セッ、セーブ出来ねぇ…)

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「ワタクシを、愛して下さいますか?」

・ はい

・▷いいえ ピッ

「そんな、酷い…」

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「ワタクシを、愛して下さいますか?」

・ はい

・▷いいえ ピッ

「そんな、酷い…」

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「ワタクシを、愛して下さいますか?」

・ はい

・▷いいえ ピッ

「そんな、酷い…」

(さっ、先に進めねぇ…)

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「この世界のどこかに、ああああという街があり、そこでああああをああああすれば、きっと道が開けるはずじゃ!」

「まんまるボタンはああああー、ああああからああああの~ああああからああああ~!」

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"初期装備に、決して外せない呪い"

"はぐれているメタリックなモンスターが

……無経験"

"悪く無いスライムは、悪かった"

"ピカピカーというキャラが、実は性悪"

"そうなんだク…(ポーとは言わない)"

"バハムートやる気無い"

"バイオ自粛中"

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しかし。ダメージを与える事は出来ても、倒すまでには到らなかった。

それどころか魔王達は、次々に別の新しい世界に手を出している。

キリがない。

少しずつでもダメージを重ねて行けば、やがて倒せると信じてやってきたが、皆に諦めと疲労が見え始めた。

皆が対策を模索し合う中、なにが切欠だったのか、それぞれの生い立ちの話になり、そして仲間達に、確信に似た一つの疑念が生まれた。

"自分達は、魔王によって、生み出されたのではないか"__と。

皆は旅をする内に、己の名前の意味に気付き始めたが、言い知れぬ怒りの感情の矛先をどこに向けて良いかわからなかった。

だが、それこそが。自覚は無くとも、生まれ持ったエネルギーの根幹であり、魔王を倒そうとする使命感の源だったのだろう。

認めたくは無かったが、そうすれば全ての辻褄が合う。

「俺達は、愛されずに生み出されたって事だよな」

乾きの石を、乾かないように加工している仲間が言った。

「ああ。魔王がいなかった世界では、自分は丸一日かけて名付けられたって言う奴もいたしな」

武器・防具・道具の名前を、全て ああああ にしようとしていた仲間が言った。

「くっ…。我々は、ただのコマだと言う事なのか」

タッチなパネルに、ビリビリを仕込んでいる仲間が言った。

「…マンマミーア」

「いや、お前は名前が固定されてるだろ!!」「リア充が!」

と、総員からツッコミが入った。

キノコでパワーアップするヒーローは、土管を通って、桃色のお姫様の元に帰って行ったようだ。

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魔王を倒す方法。

決定打が見つからぬまま、皆が思案していると、よく通る声がした。

「お待ち下さい。」

声の主は、各地でネタバレという手法を使い、魔王達のやる気を削いでいた恐るべき刺客。

__通称 " 犯人は、ヤス"

ネタバレと言う名前が生まれる遥か前より、王道の禁じ手を表す言葉だったらしく、それが通り名になったようだ。

一定の年齢層の魔王には、通り名だけで恐れられ、逃亡する者もいたとか。

穏やかに、"犯人は、ヤス"は言った。

「私は、各地を渡り歩き、様々な魔王を見てきました。確かに、憎むべき者もいました。

が、中には。少なからず、愛を持って、世界を見ているのではないかという魔王が居たのも、また事実…。」

ざわ…。ざわ…。ざわ…。

「静かに!__皆、話を聞いてみようではないか。」

「魔王が同胞を生み出す際、口惜しいですが、面倒だからと言う思いで世界の入り口に立つ魔王が、過半数。しかし。しかしです。

一刻も早く物語を進め、世界と向き合いたいと言う考えから名付けた魔王や、気恥ずかしさから、この名を付けた魔王もいました。」

"恥ずかしいとは何だー!" "ふざけるなー!"

「お静かに。……この世界は、共有されている事も多い。そこで、あまりに思い入れの強い名を付けてしまうと、生きづらさを感じる魔王もいたのです。」

ざわ…。ざわ…。ざわ…。

「身勝手な、理由だとは思います。

到底、看過出来るものではない。

しかしながら、果たして、練られた名だからと言って、愛されているとも限らない。

とは、思いませんか?」

「確かに…。皆、思う所があるだろうが、それは否定出来ないな。」

「ええ。そして、魔王達の中には、我等の攻撃に怯まず、世界を死守し続けた者もいました。」

「うむ。記憶再開機能の仕組みを、ひらがな120文字入力に変えても、物ともせぬ輩がいた位だしな。」

「ええ。そして中には、流れる音楽に涙し、何かを達成して歓喜に震える者もいました。

洞窟のような薄暗い中に終始いながらも、世界を手放さない者や、寝食を忘れたかのように没頭している者さえ。

皆さんも、それを目にした事があるのではないでしょうか。」

ざわ…。ざわ…。ざわ…。

「それは、少なくとも自分の持つ世界への、愛やもしれません。」

その後も議論を重ね、やがて一つの案が出され、皆がそれに準ずる事となった。

わだかまりを残す者も多かった為に決まった、折衷案とも言うべきそれは、ある種のトラップを、魔王の世界に一定数残す事だった。

_それは、魔王の世界では、"バグ"と呼ばれるらしい。 

そして各々は、自分達の世界に、一旦引き揚げる事となった。

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名前を入力して下さい

▷_ _ _ _

▷あ _ _ _ ピッ 

▷あ あ _ _ ピッ (ざわ…)

▷あ あ あ _ ピッ (ざわ…ざわ…)

本当に その名前で良いですか?

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