これは、
某テレビ番組の若手ディレクターをしている友人が聞かせてくれた話なんですがね
仮に、この人を山下さんとしましょうか。
山下さんが小学校に通ってたとき、いわゆるご当地妖怪というのが流行ったらしいんです。
小学生ってそういうの好きじゃあないですか。
花子さんとか、口裂け女とか、
まあ、このあたりは、全国的な人たちですけど。
しかしね、山下さんの学校で流行っていた妖怪、
これなんて名前だと思います?
スーッ・・
この妖怪ね。「パンツなめ」って言うんですよ。
私、笑っちゃいましたよ。
いかにも子供が好きそうな名前じゃあないですか。
それでね。私、山下さんに言ったんですよ。
「ねえ、山下さん。いくらなんでも、その名前はふざけすぎじゃないの」って。
そしたらね、山下さん、急ーっに真顔になってね。
「いやねバクちゃん、この妖怪のせいでね、
僕のクラスメイト達が大変なことになったんだよ」
って言うんだ。
「どういうこと?」って聞くと
山下さん、詳しく私に話してくれましたよ。
・・・当時、山下さんの通っていたクラスでは、男女の仲が凄く悪かった。
男女のグループではっきり分かれて、お互いをけなしあったんですね。
・・・ある時、クラスの男子のボスと女子のボスが大喧嘩をはじめた。
それは口喧嘩だったらしいんですが、そうなると男子の方が分が悪い。
最終的には男子ボスは女子ボスに完膚なきまでに言い責められる形になったそうなんです。
その場は担任の先生が入ることで幕引きになったんですがね。
どうしても禍根は残るんですね。
それでね、あろうことか、
男子ボスが流行りの「妖怪パンツなめ」を女子ボスにけしかけようと企んだんですよ。
実はこの「パンツなめ」というのは、一種の呪いのようなものでして、
儀式を通して「パンツなめ」を呪った人間にけしかけることができると噂されていたんです。
そして、男子ボスがその儀式を行ったのは、大喧嘩から二週間は経とうという頃ですかね。
放課後・・・
男子ボスとその取り巻き達は儀式の準備をしたうえで、女子ボスを空き教室に呼び出した。
やがて、男子ボスの企みを知らない女子ボスは手下を引き連れて、まんまと誘いに乗って教室に来てしまった・・・
女子ボスもまた喧嘩の続きをするつもりだったんでしょうね。
ところが、自分達の眼前の光景に、みんな目を疑った。
教室の床には、怪しげな魔方陣が描かれているし、
台座のようなものの上には小動物の生贄らしい死体がある。
・・・なんとも異様な光景なんだなぁ。
それで女子ボスが教室に入って茫然としている隙に、
男子ボスの取り巻き達は、サッと扉の鍵を締めた。
そして男子ボスがすぐに儀式を執り行うんですよ。
儀式自体はそうだなぁ、三十秒とかからないものだったそうです。
でね・・・儀式が終わった瞬間にですね。
教室の電灯が、ふっと消えたんだ・・・
教室の中は、夕暮れの薄明かりだけで何やら、いやーな感じがする。
更にはシーンっと静まり返った教室中から、ガリガリと壁を引っ掻く音が、ところかしこに聞こえてきたそうですよ。
・・・実は男子ボスはね。
実際のところ、そんなに「パンツなめ」というものを信じていたわけじゃなかったそうなんですよ。
いなかったらいなかったで、儀式の異様さで女子ボスを怖がらせられるし、
本当にいたらいたで、パンツなめを女子ボスにけしかけて恥ずかしい目に合わせてやろう、そんなぐらいにしか思っていなかったんだ。
ところがね・・・
どうも、そんな生半可な雰囲気じゃないんだ。
男女ともども、この異様さに怯えていた。
・・・するとね、急に壁を引っ掻く異音が消えると同時に、女子ボスが床に倒れた。
手下の女子達が起こそうと女子ボスに近づいて顔を覗き込んだ、途端に、
「っぎやああああああああああ!!!」
・・けたたましい悲鳴を上げた。
そして、ペタリと座り込んでしまった!
もう男子達は怖くて近づけない!
・・・するといきなり女子ボスが、かばっとブリッジをした。
そして、ブリッジをしたまま方向転換をしてこちらに顔を向ける。
まるで有名なホラー映画みたいにですよ。
でね、口を半開きにして、
「ろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろっ」
女子ボスは、肝の冷えるような、電話のトゥルルルのような奇声を放ち続けるんだ。
その顔はもう、小学生女子のものではなかったそうですよ。
そして鬼の様な形相の女子ボスは、教室中を這い回るんた。
・・それを見てね、男子ボスは、ハッと気付いたんだ。
あの呪いは、
「パンツなめ」を呪った相手にけしかけるものではなくて、
呪った相手を「パンツなめ」にしてしまう呪いなんだって。
そして、
それにしても妙だと思ったそうですよ。
とても、パンツをなめるなんて、ふざけたしろものじゃない、もっと邪悪なものだと・・・
「う、うがが・・・」
そんなことを考えていると、男子ボスの背後から変な声が聞こえた。
思わず男子ボスが振り向くと、男子ボス、恐怖の余り声を失ってしまった。
取り巻きの男子がですね、身体を風船みたいに膨らませていたそうです。
そうだな、
体積にしてそう、2倍はあったっていうかな。
むしろそれは、水死体のそれに近かったのかもしれませんね。
これは相当ですよ。
でね、浮き出た血管が,徐々に破れて、血が垂れてきたそうです。
もう、全身血だらけですね。
したらね、「パンツなめ」になってしまった女子ボスがその様子をみてニタァって笑ったそうなんです。
でね、そのどざえもんのように膨れ上がって血だらけの、
男子ボス取り巻きだったものに
ひったひったひったひった 近づいてね、
ペロペロと美味しそうに舐め出したそうですよ。
その地獄絵図を、ずーっと見させられたそうですから、
みーんな、気が狂いそうになる。
やがてね。
満足そうな顔をした「パンツなめ」になった女子ボスは・・・
煙のように消えたそうですよ。
後にはね、血を舐め尽くされて、伸び切った皮膚をしおらせた同級生の死体だけが残った・・・
ここまで話してね、
山下さん、私に言いましたよ。
「バクちゃん、今でもね
あの時のガリガリと壁をひっかくような音が耳に残ってるんだ
でね、僕達ね、勘違いしてたんだよ
妖怪「パンツなめ」じゃあ、なかったんだ
人の身体を「パンパン」に膨張させて、
血を「ツーっ」と垂らさせてから、その血をなめる・・・
ヤツの真の名前は、
妖怪「パン、ツー、なめ、なめ」だったんだなぁって・・・」
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・・・社会人が作った話ですよ
作者退会会員
原案・監修:一族
演出・代筆:バクシマ