オヤジ、青森へ呼び出される

長編33
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オヤジ、青森へ呼び出される

仕事中に電話が入った

相手の番号は見知らぬ番号だった

おそらく仕事先からの電話だと思い軽く出たの

だが・・・

相手は病院の看護師からだった

オヤジが倒れたという看護師の慌てた様子で話してきた

一瞬、「冗談だろ」と思った

「急いで病院へ来てほしい」とすごく慌てた様子で話してきた

私は上司に父親が倒れた旨を話し、急いで病院へ向かった

駅前にある大きな病院だ

わたしはS子に電話をした

S子のびっくりした声が聞こえた

S子も「葵とカナちゃんを連れてタクシーで病院へ向かう」と言ってきた

私は家族に順々に電話をした

みんなびっくりした声が返ってきた

病院へ着いた

S子と葵とカナちゃんが室内にいた

オヤジはしっかりと眠っていた

私は主治医のところへ行き倒れた原因を聞いた

原因は「わからない」と返事が来た

おそらく過労からくる疲れだろうということだった

まぁ・・たしかにおふくろの監視の下、おさぼりはできないだろう

それでも息抜きは心得ていた

昼すぎにはS君のスタジオかじいやばあやの家に用もないのに居座ってると聞いていた

S君のスタジオはF子が大喜びをしていたらしいがやはりじいやばあやは少し迷惑だと愚痴をこぼしていた

過労じゃないなと思った

わたしは義理母にオヤジの状態を話し、家に帰ってくる息子と娘を義理母のところで預かってほしいと頼んだ

義理母も絶句したまま無言となった

夜の7時ごろに義理母や楓たちが病院へ来た

大家族集合で相部屋が一気に狭くなった

おふくろと義理母を残して私たちは廊下の椅子に座った

葵のびっくりした顔と今にも泣きだしそうな顔

息子たちも顔の表情が無くなった

1時間後にS君とF子が来た

F子の慌てた様子だった

「アニキ!!!パパ!!大丈夫なの?」と私のところへ走ってきて聞いてきた

わたしは「今のところはね」とだけ返事をした

返事を聞いてすぐに病室へ入って行った

S君もいつもの元気な顔ではなかった

「おやっさん・・・大丈夫かな・・・昨日も昼すぎにひょっこりと来たんだよ

その時は元気だったのに・・・」

しばらくして遠くから走ってくる足音がした

主治医と看護師が慌てて走ってきて病室へ入って行った

「まさか・・・」と思いつつ私は病室を覗いた

F子が「パパ!!パパ!!」と大きな声で叫んでいた

おい・・・マジか・・・

するとオヤジの瞼がピクリと動いた

しばらくすると目を開けた

しばらく天井を見つめていた

「ふぅ・・・・」とオヤジはため息をついた

「お!!!F子ちゃん!!!なんでここにいるんだ?」とF子にむかって話しかけてきた

F子はびっくりしたまま無言で立っていた

「おい!!せがれ、おるか!!こっちへ来い」と大きな声で私を呼んだ

「オヤジ・・・ここ病室だぞ、静かにしろよ」

「え!?・・・病室?なんで俺が病院にいるんだよ」

私はオヤジが倒れた経緯を話をした

オヤジがうつむいたまま

「おい・・・まぁ・・いいや・・・後で話すわ」と小声で話をしてきた

「おい?F子、大丈夫か?」と私はF子に話しかけた

「え・・・うん!!」と返事をしたままオヤジの顔を見つめていた

娘3人組が入ってくると笑顔なオヤジになった

主治医と看護師は頭を下げて病室から出て行った

わたしはおふくろに相部屋じゃなく個室へ移してほしいと頼んだ

相部屋だとほかの患者さんに必ず迷惑をかける

おふくろはナースステーションへ行って掛け合ってくれた

すぐにオヤジは個室へ移された

結構広めの病室だ

ここなら大家族が集まっても問題はない

「おい!せがれと3人娘はここにいてくれ、すまんけど・・・後は帰ってくれ」とオヤジが言ってきた

F子が何か言いたげそうな顔をしていたけれど素直に病室から出て行った

念のために廊下でS君とF子とおふくろは待機してくれていた

「本当はF子ちゃんもいてほしかったけれど・・・ちょっとな・・・

俺な、倒れた記憶が無いんだよな・・・それよりもな・・・変な夢を見ていてな

俺な、赤ちゃんの時の夢を見ていた

いや赤ちゃんの体を借りていたといったほうがいいのかな

なんかな・・・おまえらが見えたんだよ・・・楓ちゃんや葵ちゃんたちが俺の頭をなでたり頬を触ってたりしていた・・・」

え・・・何の話だ?・・・・オヤジの赤ちゃんの時・・・・えええ、まさかあの時のことか?

いつのまにかタイムスリップして過去の世界へ行っていた

若い時の祖母(オヤジの母親)と赤ちゃん(オヤジ)と出会った

娘たちは「かわいい」と喜んでいた

あの時のことか・・・

「それでな・・・せがれ・・・お前、全然、俺の顔を見ずに嫌な顔をしていたろ」

「え・・・それは・・そのぉ・・・オヤジだからだよ」

「どういう意味だよ?」

「すぐにばあちゃんとオヤジだとわかったんだよ、それで・・・」

「まぁいいさ・・・俺な・・・F子ちゃんが俺の顔を覗いたときになぜかしらんが体が硬直してな・・・」

あ・・・たしかに、F子がオヤジの顔をジッと見つめていてオヤジの表情が固まっていた

あれだけキャキャと娘たちと騒いでいたのになぜかF子が覗いたら顔が一瞬に固まっていた

「原因はわからん・・・なんかよくわからん・・・問題はその後だ・・・アイツが俺の顔を覗いたときに俺は完全に拒絶反応をして大泣きをしたんだよ・・・しばらくすると遠くから「パパ!!パパ!!」とF子ちゃんの声が聞こえてきたんだよ」

「え・・・ちょいまち・・・おふくろは一緒にいなかったぞ、オヤジ!」

「んん?俺の夢の話だぞ、なんでアイツがいないと言うんだよ?」

わたしはオヤジに過去に今の似たような体験をしたことを話をした

「おい・・・じゃあ・・・あの夢は現実だったということか・・・いや、たしかにアイツがいたぞ、それもよ・・・俺が拒絶反応をおこして暴れていたら「よぉし、よぉし」と抱っこしてきてな・・・さらに拒絶反応を起こして大泣きをしたんだよ・・・」

「いや・・オヤジ、おふくろはいなかったよ、なんか話がずれてるぞ」

「じいちゃ・・・ばあちゃはパパの言う通り、いなかったよ」

なんか・・・おかしい・・・おふくろ以外はすべて合ってる

なんでおふくろが出てきたんだ?

その拒絶反応って何だよ?

オヤジはおふくろが嫌いだったのか?

おいおい・・・・

「オヤジよ、話を聞いてると相当おふくろが嫌なんだろ?」

「そんなことはない、そんな・・・ことはないとおもう・・・いや・・・心の隅で・・もしかしたら・・」

「おいおい・・・というか・・・毎日、おふくろの監視でストレスを生み出して変な夢を見たんじゃないかな」

「いや・・・俺は適当にスキをみてF子ちゃんにあってたぞ・・・じいややばあやのところに行ってたし・・・F子ちゃんとおしゃべりをしてたからストレスはないと思うけれどな」

「じいちゃ・・・話を聞いてると・・・どうもね、私たちが出会ったじいちゃたちとは違うような気がする・・・ばあちゃはいなかったんだよ・・・」と楓が話に割り込んできた

一同、無言になった

「もしかしたら・・・これから起きるんじゃないかな?・・・いわゆる正夢?」

「そうかな・・・単なる夢かもしれんぞ。せがれよ」

「お!そうだ、思い出した、あのな、1週間前にな俺宛に手紙が来たんだよ・・・

名前を見たら全然知らん名前、住所も「青森県・・・」という住所、全然知らんぞ・・・

気味悪いから破り捨ててやろうと思ってな、ビリビリにやぶってやったぞ・・・ところがな・・なんかしらんが翌日になポケットをあさってたら・・・破いたはずの手紙が元のまま入ってた・・・破れてない元のままの手紙が入ってたんだよ・・・気持ち悪いなとおもって今度はライターで完全に灰になるまで燃やしてやった・・・翌日に・・・燃えたはずの手紙が元の形のままポケットに入ってた・・・」

オヤジ以外一同・・・完全に背筋に電気が走った・・・

オヤジが倒れた原因はソレだよ

そんな得体のしれない手紙を持っているからだ

「オヤジ、今もその得体の知れない手紙持ってるんか?」

「あるぞ、ほらよ」

グシャグシャになった手紙を私に向けて投げつけた

わたしは床に転かった手紙を拾った

「オヤジ・・・封は開いてないぞ、中身は読んでないのか?」

「ああ・・・気味悪いからな読んでない」

私は封を切って中に入っていた便箋を見た

ワープロかPCで作成して印刷してあった

手紙の中身を読んで・・・・私は絶句した

「せがれ・・・どうした?何書いてあるんだよ?」とオヤジが聞いてきた

「いや・・・オヤジ・・・青森に親戚や知り合いはいるのか?」

「いや・・いないぜ、まぁ・・青森へ引っ越していった連中はいるかもな・・

「オヤジ・・・オヤジを名指しで「青森へ来い」と書いてある

それもな、「早急に来てくれ」と書いてある・・・」

「青森へ・・・何で行かなきゃならんのだ・・・」

「「詳細は来てからだ」と書いてある・・・何かな・・・自筆じゃなく・・・何で印刷したものを送ってきたんだろ・・・筆跡で誰だかわかるからかな・・・」

「おい、手紙の主は誰だよ?」

「いや・・・書いていない・・・気味悪いな・・・身分も明かさずに「青森へ来い」とは・・あまり、いいことじゃないような気がするぞ、オヤジ」

「ちょっとよこせ、どれどれ・・・」と私の手から手紙を強引に取って読みだした

「おい・・・こりゃ・・・せがれの言う通り・・・得体が知れん・・・俺に何の用なんだ?・・・こりゃ、坊主を呼ぼう・・・」

「和尚様にこの手紙を読んでもらおう・・・あとでFAXで送るよ、オヤジ・・・」

「それと・・せがれよ・・過去に行ったんなら・・・もっと何か変わったことはなかったのか?」

「いや・・・別に・・・オヤジと祖母だけ・・・あとは・・変わったことはなかったと思う・・というか・・・あの時代へ行ったこと自体、変わってるよ・・・・」

「そっか・・・俺の見た夢とおまえらが行った過去になんか関わり合いがあるような気がしてならん・・・1点だけ違うのはアイツがいるかいないかだけだ・・・どういうことだろうな?」

「おふくろは確かにいなかった・・・オヤジはおふくろを見た・・・この1点だけが違う・・・おふくろを呼ぼう」

私は廊下にいるおふくろを呼んだ

「どうしたんだい?」とびっくりした顔で入ってきた

「おふくろ・・・ちょっと聞きたいけど・・・あの時(タイムスリップした日のおふくろが何をしていたのか)を聞きたいんだけど・・・」

「あの日のこと?ちょっとまっておくれ・・・そうそう・・・わたし、午後から青森へ出張で日帰りだけどね・・・お得意様と仕事の打ち合わせをしていたよ・・・なかなかお得意様が来なくってね・・・3時間ほどしてから来たんだよね・・・商談はおよそ2時間ほどで終わって・・・夕食もせずに帰ってきたよ・・・」

「あ・・・たしかに、あの日は・・・おふくろが夜遅く帰ってきた・・・青森へ行っていたのか・・・「青森」!!!え・・・まさか・・・」

「おい、せがれ・・・聞いたか「青森」だと・・・点が繋がったぞ・・・」

わたしは手紙をおふくろに見せた

「なに?手紙?・・・」とおふくろは手紙を読み始めた・・・

「これ・・・ちょっと・・・あんましよくないわね・・・自分の身分を明かさずに「青森へ来い」って・・・失礼だわね・・・」

「おふくろ・・・その文章の構成を見て・・・心当たりある?」と私はこの手紙のクセというか所々に青森弁?津軽弁?らしき箇所が何か所かあった

一見、標準語で書いてあるのだが・・・方言みたいな文章が所々に書いてありこの手紙の持ち主は確かに青森の人なのかと思う

「文章の構成ね・・・なんかクセが強い感じの文章だわね・・・青森弁か津軽弁かよくわからないけど・・・ちょっと意味が分からない箇所があるよね・・何か命令調な文章のような感じがするわよね・・・」

「おふくろと商談をした人はこんな感じで話をしていたの?」

「ううん・・・青森の人だけど標準語で商談をしていたのよね・・訛りが一切なかった・・・今思えば・・・おかしいといえばおかしいけど・・・確かに・・・でも・・

その人柄からするととても命令調な感じをしなかったのよね・・・」

商談をしていた人じゃなかった・・・

「おふくろ・・・その人の連絡先は知ってるの?」

「ええ・・もちろん・・・」

「一度、この手紙を見てもらって方言のところを教えてもらったほうがいいと思う」

「そうね・・・相手の人にカメラで写してメールで送るわね」

オヤジは3日ほどして回復をした

日曜日に和尚様が来た

「遅れてすいませんでしたわい・・・色々と用事があってなかなか抜け出すことができなかったですわい」

「おい!!くそ坊主!そんな言い訳はいらん!お前も一緒に「青森」へついて来い」「え!!!青森は・・・そのぉ・・・」といつもの和尚様の返事じゃなかった

「なに!!くそ坊主!!!くそ坊主がいないと非常に困るんだよ、この前の手紙を読んだろ?」

「はい・・・そのぉ・・・」

「おい・・どうした?いつものくそ坊主はどうした?なんか様子がおかしいぞ」

「そのぉ・・・手紙を読みおわって・・・得体の知れない恐怖心が沸き起こってきたんですわい・・・手紙自体は単におやっさんを呼ぶための口実がズラズラと書いてあって一見・・失礼な人だなと思っていましたわい・・・でも・・・手紙の内容を何度も読み直したんですわい・・・文章自体は別にどうのこうのという感じを受けなかったんですけれど・・相手の素性がわからないのとなんとなく文章というか構成というかなんか嫌な感じをしましたんですわい・・・」

和尚様も私と同じように感じていた

この手紙の内容は至って普通・・・でも・・・何度も読んでいると不思議と胸騒ぎを起こすような不安感が増してきた

オヤジはじっと小1時間ほど腕を組んで目つぶったままになった

「せがれよ、俺、青森へ行くことにした・・・このまま考えていてもラチがあかん

どちらにしろ、相手は俺を知ってる人間だろ、直接名指しで来たんだから行ってやろうぜ」

「オヤジ・・・あんましよくないぞ、まずは相手の素性を少しでも調べるのが先だろ、とりあえず、おふくろの商談相手の人のこの手紙の津軽弁とやらの意味を知ろうよ」

「そうですわい、まずは少しでも情報を得たほうがいいですわい」

1時間ほどしてからおふくろの携帯に電話がかかってきた

商談相手からだった

「意味がわかったよ、別段、怪しい言葉じゃないそうだよ、あちらでは普通に使ってるんだって、あ、そうそう・・・あの方から「もし青森へ来るのなら道先案内をしてもいい」と言ってくれたんだよ」

助かる・・・青森県は一度も行ったことがない

1週間ほど情報収集と準備のために忙しい日々を過ごした

結果的に相手の素性はわからないまま

土曜日の夜に青森県へ出発をした

結構遠い

オヤジ、和尚様、娘3人組と私の計6人の青森への旅

休憩を挟んでの旅行

娘たちは最初はワクワク感でいっぱいだったのか車中はおしゃべりの声が響いていた

そのうちに疲れが出てきたのか3人娘たちは寝てしまった

高速道路を使い休憩をはさんで青森県の看板が見えてきた

青森県の看板が見えてきたときに突然楓が目を覚ました

((キサマラ・・・アイツノヨビダシニオウジタノカ・・・キヲツケルンダゾ・・))と野太い男の声が楓の口から出てきた

オヤジや和尚様と私は体が硬直してしまった

「おい、なんだ今のはよ・・・すげぇ、低い声だったよな、まるで地の底にいる連中・・・」

「オヤジ・・・どうするんだ?行くのか?」

「行くしかねぇだろ!奴らの目的は何か気になるからな・・・

しまったな・・・楓ちゃんたちを連れてくるんじゃなかったな・・・とりえずは孫娘たちをも守らなきゃな・・・怖い思いはさせたくないぜ」

近くのコンビニよって楓の健康状態を確認をした

「じいちゃ!私は大丈夫だよ?どうしたの?」と先ほどのことを覚えていないらしい

とりあえずはコンビニで休憩をしておふくろの商談の相手が来るまで待機した

およそ1時間ほどでやってきた

「す、すいません・・・遅くなりました・・・」と頭を下げてきた

少し小太りな40代後半という感じ

確かに命令調な感じはしない

「とりあえずは・・・私の家へ行きましょう」と商談者Dさんの車の後をついて行った

コンビニからおよそ30分ほどの閑静な建売の住宅地が並んでいる

その角がDさんの家

庭がありいろいろな花が咲いていた

Dさんの家族が迎えてくれた

奥さんと娘さんの3人家族

ちょうど奥さんは留守らしく娘さんが出てきた

娘さんの顔を見たときに私たち全員が驚いた

え・・・おふくろの若い時とそっくりだ・・・いや・・・そのまんまのような気がする・・・

私はオヤジの顔を見た

オヤジもびっくりした顔になっていた

「あのぉ・・・皆さん・・・どうなされました?」と怪訝そうな顔で話してきた

「いえ・・・なにも・・・失礼しました・・・おふくろの商談者のDさんに道案内を頼みまして・・・」

「ハイ・・父から伺ってます・・・遠いところからお疲れだと思います

どうぞ・・・お入りください」

この雰囲気・・・このしゃべり方・・・まるで「おふくろ」じゃないか・・・

娘さんに少し広めの洋室へ案内された

「皆さん。お疲れでしょ・・ゆっくりとしていってくださいね」と頭を下げて部屋から出て行った

「オヤジ・・・あの娘さん・・・若いころのおふくろとそっくり・・・」

「せがれよ、俺もびっくりしたぜ・・・よく似てる・・・」

「だろ・・・おふくろと関係あるのかな・・・」

「わからん・・・あいつの親戚なのかもしれんぞ・・・」

「あとでおふくろに若いころの20代のころの写真をメールで送ってもらうよ」

「あのぉう・・・どうかしましたんですかい?」と和尚様が聞いてきた

私は「あの娘さんが若いころのおふくろとよく似てる」と和尚様に話をした

「え・・そうなんですかい・・・おふくろ様の若いころはわしゃ知りませんけれど・・そんなに似てるんですかい?」

「似てる・・・雰囲気もしゃべりかたも・・・あとでおふくろから若い時の写真が来ると思いますので見てみるとわかると思います」

30分後におふくろからメールで写真が送られてきた

若い時のオヤジとおふくろが楽しく笑っている写真など10枚ほど添付されていた

「パパ!ばあちゃの写真を見せてほしいんだぞ」と葵が覗き込んできた

「ばあちゃ!!!かわいい!!!じいちゃ!!カッコイイ!!」と葵は大きな声を上げた

「あ!ほんとだ、ばあちゃ、すごくかわいい!じいちゃ、決まってる!すごいな・・・ばあちゃんの笑顔、すごくいい」と楓も写真を見て驚いていた

「どれ!せがれ、見せてみろ・・・おおお、あの時の写真だな・・アイツと横浜にある海まで行ったんだよ・・・懐かしいぜ・・・たしか・・・21の時かな・・・

アイツの体の細さ・・・今じゃ・・・関取だもんな、せがれよ」とオヤジは大声で笑ってた

オヤジよ・・・おふくろのこと言えんぞ・・・だいぶ頭が薄くなってる・・・

「じいちゃ!!!ばあちゃんは関取じゃないんだぞ!!」と葵はオヤジに向かって怒っていた

「あ・・・まぁ・・・ごめんな・・・葵ちゃん」と頭を下げた

「さすがのおやっさんも、葵ちゃん相手だと負けますわい」と全員が笑った

なんとなく緊張感が無くなった

残りの写真も見た

色々な場所に行ってたんだ

オヤジとおふくろの自然な笑顔

本当にお互い好きなんだと思った

「オヤジ・・・とくにこの写真・・・娘さんにそっくり」

「どれ・・・確かにな・・・写真が古いからちょっとわかりにくいけど・・

たしかに似てるな・・・他人の空似・・・でもな・・・」とオヤジは考え込んでしまった

「あのぉ・・・もうそろそろ・・・夕食の時間ですけれど・・・ご一緒にどうでしょうか?」と娘さんが部屋に入ってきた

「はい・・」と返事をした

和室へ案内された

すでに夕食の食事の準備は終えていた

食卓を2つ並べてどうにか全員が座れる状態だった

「いやぁ・・・こんな大勢で食べるのははじめてです」とDさんが話し出した

不思議だ・・・何か家で食事をしてる感覚に陥っていた

他人の家で食事をしてるという感じはしない

いつもの大家族の夕食時と同じだ

子供たちも楽しそうに食べていた

人見知りのカナちゃんも楽しく食事をしていた

夕食が終わりしばらく休憩をしていた

「皆さん・・・よろしければ・・・お散歩はどうでしょうか?」とDさんが提案をしてきた

もちろんOKだ

奥さんを残してお散歩に出かけた

10分ほど歩くとビルが立ち並ぶ本通りに出た

Dさんの説明を聞きながら1時間ほどの散歩だった

私とオヤジとDさんと娘さん4人でこの手紙のことについて話し合った

Dさんや娘さんも「気味が悪い」と言っていた

「おやじさん・・・改めて手紙を読んで・・・率直に言いますと・・・こりゃ・・

行かないほうがいいと思います・・・とても嫌な感じがします・・・」

「わしゃもそう思いますわい・・・・今からでも遅くないですわい、帰りましょう」

「オヤジ、俺もそう思う・・・何か得体の知れないものが出てきそうだ」

「まぁ・・・内心、俺も怖い・・・破っても焼いてもボケットの中に入ってたしな・・

普通の手紙じゃないことはわかるぜ・・・俺を直に名指してきたんだから帰るわけにもいかんぜ・・・どうもな・・・Dさんが関係してるとなると・・・こりゃ・・・おい、せがれ・・例の写真をDさんや娘さんに見せてやれ」

「わかった・・・」

私はDさんや娘さんに若いころのおふくろの写真を見せた

「え!!!私!?・・・うそぉ!!!私、こんな場所は知らない・・・それにこの隣にいる人も知らない・・」と娘さんは驚いていた

「これは・・・ウチの娘じゃないですか・・・いつのまに・・・隣にいる人は誰だよ?」とDさんはびっくりしていた

わたしはこの写真について詳細に説明をした

「え!!!総裁の若い時の写真何ですか!!隣・・・・えええ・・おやじさんなんですか・・・いやぁ・・・今の総裁とは・・・いや・・・失礼しました・・・息子さんや旦那様の前で・・・失礼しました」とDさんは頭を下げた

「いやいいよ!本当のことだ、あいつは今じゃ立派な「関取」だ、あはははは」とオヤジの馬鹿笑い

「あのぉ・・・この写真・・・・写ってる人はわかりましたけれど・・・この写真を写した人は親族の方なんでしょうか?」

「あ・・・ちょいまち・・・誰に写してもらったかな・・・・思い出せん・・・

通りすがり・・・いや・・・あかん・・・わからん」

「オヤジ・・・おふくろに聞いてみるよ」

私はおふくろに電話をした

写真についてのことを聞いたがおふくろもわからなかった

「おそらく・・・とおりすがり・・・頼んで写してもらったかもな・・

でもな・・・俺ら2人カメラを持ってなかったんだよ、たしか・・・

はて・・・どうして・・・写真があるんだ???・・・え?・・」

「え・・・オヤジ・・・大丈夫か?・・・」

「写真があるということは2人じゃなく3人で出かけたんじゃないの、オヤジ?」

「3人?・・・いや・・・記憶としてはアイツと2人・・・まてよ・・・なんか一人いたような・・・思い出せん・・・」

「パパ・・この写真の・・撮り方・・Sおじさんに似てる気がする・・このボケボケ感・・」

「まぁ・・昔はフィルムを使っていたからね・・・多少はボケボケ感はあるよ・・

「パパ、Sおじさんに電話で聞いてみるんだぞ」

「え?・・聞いても意味ないと思うよ、葵」

「聞くんだぞ!!!」

葵の迫力に負けてS君に電話をした

「はい?・・・横浜?…先月にロケでF子と一緒に撮影してきたよ・・・はぁ?・・・

おやっさん?おやっさんの若いころに横浜へ行ったっかって?おいおい・・・

おやっさんが20代の時なら俺もお前も生まれてないじゃないかよ・・・

大丈夫か?」

「だよな・・・いや、写真がボケボケ感で葵や楓が君が写したんじゃないかと疑ってるんだよ・・・」

「え??・・・葵ちゃんや楓ちゃんが疑ってるって・・・生まれてないから無理だろ・・・きちんと説明してあげて」

当たり前だよな・・・一応、葵や楓には説明はした

でも、楓はまだ疑っていた

「パパ・・・でもね・・・この写し方の癖はやっぱりSおじさんだと思うよ・・・」

「楓・・さっきも説明した通り、パパやS君は生まれてないんだよ・・どう逆立ちしても無理なんだよ」

「せがれよ・・・少し思い出した・・・たしかな・・途中でなんか変な奴が声を開けてきた覚えがある・・・「おやっさん!!写真を撮ってあげるよ・・・」だったような・・・

それで、俺は怒ってな「俺はまだ若いんだぞ、てめぇ、半殺しの目にあいたいか」と言ったような覚えがある・・・・顔までは思い出せん・・・」

「「おやっさん」と言ったのかオヤジ?」

「たしかな・・・それで・・殴ってやろうかと思ったけど‥そいつの顔を見てなんとなく戦意をなくした記憶があるんだよ・・・仕方ないからそいつに写真を撮ってもらったような気がする・・・最後にな「おやっさん!!住所はわかってるから現像したら送るぜ」と聞こえてそいつはさっさとどこかへ行ってしまったような・・・」

「おやっさん」・・・この言葉を使うのはS君とまぁほかにもいるけど・・・

なんとなく・・・Sくんのような気がしてきた

なんかな・・・腑に落ちない・・・オヤジの記憶も曖昧だし・・・

S君とF子を呼ぼう

オヤジがポケットいじくりだした

「え・・・ポケットに何か入ってる・・・え?紙切れが入ってた・・・

どれどれ・・・ゲッ!!・・・おい、せがれよ・・・この紙切れ・・・なんか住所が書いてあるぞ・・・」

「え?・・・住所・・・あ、ほんとだ・・・青森県○○町3丁目・・・」

「え?今の住所をもう1度言ってください」とDさんはびっくりした顔で私に言ってきた

私はもう1度紙切れに書いてある住所を言った

「その住所・・・私の実家の住所です・・・もう私の両親は亡くなっています・・・

一体誰が・・・手紙を送ったんでしょう・・・」

話がうますぎる・・・出来すぎる・・・可笑しい・・・

完全に誰かに誘導されてる

これは・・・S君とF子を呼ばないほうがいいのかな

「オヤジ・・・話が出来すぎやしないか・・なんか得体の知れんものに誘われてる気がする」

「わしゃもそう思いますですわい・・・偶然じゃないですわい・・・誰かに誘導されてますわい・・」

「私もそう思います・・・とりあえず、私の実家へ行きましょう、案内します」

「その前にS君とF子を呼びたい」

「せがれ・・・ちょっとな・・・言いたいことはわかる・・・そうだな、呼んでくれ」

私はS君とF子をDさんの家へ来るように住所を教えた

仕事の関係で3日後に来るとの返事だった

S君とF子が来る3日間の間にDさんのことをいろいろと聞いた

S君とF子がやってきた

「アニキ・・・遅くなっちゃった、ごめんね・・・」

「なかなか・・・撮影が進まなくてな・・・」

S君とF子は笑いながら頭を下げた

「あれ・・・F子さんでしたよね・・たしか・・・モデルをなさってるのかな?」とDさんはF子に聞いた

「はい・・・モデルをしてます」

「ですよね、私の娘が写真集を集めてましてね・・・「このモデルさんみたいになりたい」と写真集を見ながらよく言っています」

「お父さん!!恥ずかしい!!!もう!!!・・・」

「ごめんなさい・・・F子さん・・・もう、お父さんったら・・・」

「ねぇ・・・アニキ・・・Dさんの娘さん、若いころのママとそっくり・・・びっくり」

「だろ・・・俺も初めて会ったときにデジャブを感じたよ・・・おふくろとよく似てる・・・性格もそっくりなんだよ」

「え!そうなの・・・」

「F子さん、F子さんのお母さんの若いころと私とよく似てますよね・・・自分でも写真を見せてもらってびっくりしました・・・」

「はい、そっくりです・・・びっくり」

この2人、はじめてあったのに馬が合ったのかお互いに昔の知り合いという感じで親近感を感じたとF子から聞かされた

人見知りのF子が初対面からおしゃべりをしてるのをはじめてみた

「アニキ・・・確かにママと性格が似てる・・・はじめてなのになぜか懐かしい感じがする・・・確かにデジャブだよ・・・」

「だろ・・・本当に懐かしいと思うよ・・なんだろうね、この感じ」

「うん・・・不思議・・・というか・・・葵ちゃんの雰囲気も出てる」

「まぁ・・・葵はどちらかといえばおふくろに似てるからな・・性格もおっとりしてるし・・」

「うん・・葵ちゃんは芯がしっかりしてるし、ほんとママに似てる」

なんだろう・・・この雰囲気・・・懐かしさ・・・

「オヤジ・・・Dさんの娘さん、おふくろの若いころにそっくりだろ

「そっくりというもんじゃやないぞ、せがれ・・・性格もアイツに似てる・・・

なんか、昔に帰った気分だぞ・・でもな・・・今じゃな・・関取・・」

「おい!!オヤジ!!!あかん、それは言ったらあかん!!」

一同、大爆笑になった

夕食も終わり

明日、Dさんの実家へ行く準備をはじめた

オヤジと私とS君

「オヤジ、例のオヤジ達を写したその人のこと、思い出したか?」

「あぁ・・・あんまし、鮮明に覚えてない・・・でもな、「おやっさん」という言葉は確かにそう聞こえたんだよ・・」

「なに?「おやっさん」??なんの話だよ、F」

私はS君にオヤジ達を写した人のことを話した

「え・・・そういうことか・・・でもな、おやっさんたちの若いころなら俺は生まれてないぞ・・」

「そういうことなんだよな・・・でもな、オヤジに「おやっさん」と言うのは結構限られてるしな・・・それにオヤジはそいつの顔を見て殴るのをやめたと言ってるし・・・やはり、S君じゃないかなと思う」

「たしかに、そいつの顔を見て殴るのをやめようと思ったことは確かだ

今思えば・・・Sちゃんなのかな・・・と・・・Sちゃんなら納得するぜ」

「ちょっ・・・おやっさん!!」

「ちょっとまて・・・その口調だ!!そんな感じだったぜ・・・顔は思い出せんがその口調だったぞ・・・」

どういうことだよ・・・S君はオヤジ達の若いころの時代へタイムスリップしたのか・・・

まぁ・・・ありえない話ではないが・・・

「一応、準備はできましたね・・・ここから私の実家は2時間ほどです・・・

ホント・・・何年ぶりだろう・・・祖父や祖母が生きていたころだから・・・

本当に私はかわいがられましたよ・・・おもちゃやお菓子をたくさん買ってもらいました・・ほんとうに・・・」

Dさんの目に涙が流れた

「こりゃ・・・ごめんなさい・・・ついつい・・・思い出しました・・・」

突然私のスマホが鳴った

「わっ!びっくり、誰だ?・・・おふくろ・・・」

「オヤジ、明日におふくろが来るぞ」

「げっ!来なくてもいいのにな・・・ちょっとまて、うちにはS子ちゃんと匠ちゃんと仁君しかいなくなるぞ、やばいやばい、せがれよ、あいつに○○(義理母)ちゃんに頼んで預かってもらえよ」

「義理母に頼めばいいんだな、オヤジ」

「そうだよ、ウチにいたら危ない、もしものことがあるかもしれん」

「え!総裁が来るんですか?こりゃお迎えの準備をしないと」

「しなくてもいいです、おふくろは個人的に来ますから」

次の朝、おふくろが来た

社用車に乗って・・・

「わ・・なんで・・社用車で来るんだよ・・・」

Dさんが慌てて社用車のそばに駆け寄った

「総帥、申し訳ございません!!なんの準備をせずに!」

「いいのよ・・・気にしないで・・・個人的に来たから」

「あんた!!昨日、さんざん、私の悪口を言ったでしょ!!!」

「いや・・・知らんよ・・・」

「私、昨日、連続5回クシャミしたのよ・・5回はあんたしかいない」

なんちゅう・・・朝から・・・

「さぁ、総帥・・・どうぞ」とDさんはおふくろを玄関先まで案内してくれた

「おはようございます」とDさんの娘さんが迎えてくれた

「え!私がいる・・・」とおふくろは目が点になった

「おふくろ・・・Dさんの娘さんだよ」

「え・・・は・・・ごめんなさい・・・」とおふくろは頭を下げた

「いえいえ・・・」

「ねぇ・・娘さん、私の若いころとそっくり・・・どういうこと?」

「だろ、そっくりでしょ、おふくろ」とおふくろに小声で答えた

「娘さんはいまいくつになったの?」

「娘さんは今21になったとか」

「そうなの・・・若いわね・・・私もああいう時があったのよね」

「え…」思わず吹き出しそうになった

「なに?F・・・」

「いや・・・」

オヤジに聞こえていたのか

「若いころがあったって・・・はぁ・・・笑っちゃうよな、せがれよ」

オヤジ・・・・

「あんたさ・・・だいぶ頂上部分が見晴らしがよくなったんじゃない?」

「ちっ・・・」

娘さんがクスクスと笑った

「Fさん、ご両親、本当に仲良いですね」と娘さんから言われた

顔が真っ赤になったよ

確かに仲はいい

オヤジが死んだときにおふくろはオヤジの遺体の前で大泣きをした

ずっと泣いていたので周りに者は誰一人声をかけられなかった

段々とおふくろは元気さが無くなっていき1か月後に亡くなった

「あぁ・・・オヤジ・・・おふくろを呼んだな・・・」と私たちはそう思った

オヤジは死ぬまでおふくろに対して逆らえなかったな

おふくろは肝が据わっていたのは確かだ

唯一、オヤジの頬を叩いたのはおふくろだけだ

オヤジに逆らったとして学校中に知れ渡った

オヤジ達不良連中はおふくろに対して恐怖の対象となったらしい

またおふくろは他校の男子生徒からの誘いも結構あったと自慢してた

しかし、あの時以来からピタッと誘いが来なくなったと言っていた

その代わりに金魚の糞みたいにオヤジが後ろからついてきたと笑ってた

はじめは無視していたけれどあまりにもしつこくついてきているから

怒ったらしい

それでも後ろからついてきた

今でいうならストーカーだな

おふくろに「怖かったろ?」と聞いたら

「もちろん・・相手は学校一の不良・・・復讐されるんじゃないかと内心怖かった」と話してくれた

今は関取みたいな貫禄があるけれど写真で見る女子高生時代は体が細くよくもまぁオヤジに逆らえたもんだとおふくろとよく話をした

おふくろは一度きちんとオヤジに話さないといけないと思ってオヤジに声をかけた

ところがオヤジはデートの誘いだと勘違いをしたらしい

早速オヤジはやらかした

おふくろを「彼女」だという感じでおふくろの肩に手をまわしてまわりのいる連中に「うらやましいだろ」と声をかけていた

あまりにも無礼さにおふくろは切れて「ちょっと!○○君、勘違いしないでよね、ずうーーと私の後ろからついてきてるけど非常に迷惑をしてるのよね、二度と私のそばに来ないでね」と言いさっさと帰った

学校中にうわさが流れて女子たちの話題になったらしい

オヤジと付き合いたいという女子たちが多かった

そういう話をおふくろは聞いて「どこがいいのだろう」「格好いい?あいつが?」とオヤジをみているうちに女子特有の心理が働いたのだろう

「たしかにイケメン・・・面白いし・・・格好いいかも」とオヤジに対して好意を持ち始めたらしい

おふくろは「もう私に対して・・・」と思いつつ思い切ってデートの誘いを言ったらしい

お調子者のオヤジは「OKOKだよ~~~ベイビーー」と早速おふくろの肩に手を回した

(OKOKベイビ~~って・・・おふくろ・・・やはり・・・オヤジを選んだのは間違ってる)

そして・・・私とF子が生まれた・・・・はぁ・・・

F子も「パパ!!格好いい」と大喜びしてる

S君と一緒にいてもオヤジに呼ばれると喜んでオヤジについていく

かわいそうなのはS君・・・ポツンと・・・

相手がオヤジだから文句が言えない

私からすれば単なるお調子者の不良だよ

まぁ・・・それが運命を決定着けにしたんだろうな

なんだかんだと喧嘩をしても翌日には仲良しになっていた

私が小さいころはそれが不思議だった

今思えば、これが理想の夫婦なんだと感じてる

さて・・・

Dさんの実家へ着いた

古い家だがしっかりとした作りだ

庭は多少雑草が生えていた

「半年前に私と家内で庭の雑草と家の中を少し片づけました」とニコニコした顔

「さてと・・・家の中へ入りましょう」とDさんが玄関の鍵を開けて中へ入った

Dさんは玄関をじろじろと見まわしていた

「あのぉどうかしましたか?」と私はDさんに尋ねた

「いや・・なんか玄関が綺麗になったというか・・・」

「半年前に玄関も掃除したんじゃないですか?」

「いえ・・・玄関の掃除はしていません」

首をかしげながらDさんはリビングへ案内をしてくれた

やはりリビングでもDさんは周りを見回していた

「なんか変だな・・・」とDさんはつぶやいた

私は「どうしました?」とDさんに聞いた

「いや・・・どうも・・・玄関といいリビングといいなんとなく新しくなったような・・もうちょっと汚れていたし・・すこし変ですね・・おかしいなぁ・・・」

「光の加減じゃないですか?今日は陽気もいいですし・・・」

「いえ・・光の加減じゃないと思います・・・なんだろう・・」

私たちにはさっぱりわからない

娘たちは勝手にかくれんぼをしだした

娘たちの元気な声が家中に響いていた

「すいません・・・娘たちの声が大きくて」

「いえいえ・・・昔を思い出します・・・両親とこの家へ遊びに行って妹と一緒に鬼ごっこやかくれんぼをしましたよ・・・」

「そうなんですか・・・ところで妹さんは?」と私は不意に聞いてしまった

「いえ・・もう妹は・・・妹が7歳の時に亡くなりました・・・突然でした・・・

両親も私もただ茫然としまして・・・昨日まで元気だったんです・・・朝、母親が妹を起こしに行ったんですけれどもう・・・」とDさんの目には涙がこぼれそうだった

しまった・・・余計なことを・・・

「す、すいません・・・」と私は頭を下げた

いつのまにか3人娘はリビングに戻っていた

「おじさん・・・かわいそうなんだぞ、パパ!!!謝るんだぞ」と葵の一言が身に染みた

タッ・・タッタ

2階から誰かが下りてくる足音がした

みんな一瞬・・・聞き耳を立てた

「え・・・今、2階から誰かが下りてきた気がしたけど・・・」

「はい、わたしも聞こえました」

「せがれよ、俺も聞いたぞ」

「パパ・・・」

全員、リビングにいる・・・

「俺が見てくる」とオヤジはリビングから2階の階段あたりを見た

「誰もいないぞ・・・」と言い階段まで見に行った

「誰もいないぞ・・・おかしいな」とオヤジの声

「おかしいですね、確かに2階から降りてくる足音がしましたよね・・・でも・・あの足音の感じ・・・まさかね・・・」とDさんは少し苦笑いをした

「今さっきのあの足音の感じ・・・妹がうれしそうなときに下りてくる足音によく似てたんですよ・・・まさかね・・・」

「そうなんですか・・・」

タッタ・・・タッタタタ・・・ガチャ・・・パタン

「えええ!!!なに今の音?廊下を誰かが走って行ったよ、パパ」

「パパにも聞こえた・・・」

一同・・・目を合わせていた

「まさか・・・・」とDさんは廊下の方向を見ていた

「○○なのかい?」と廊下に向けてDさんは妹さんの名前を言った

タッタタタ!

とまた足音が廊下から聞こえてきた

一同、びっくり

((○○、○○・・・お帰りなさい・・・))

「えええ・・・・何だ?」とオヤジの驚いた声

((ただいま!!!外暑かったよ))

一同、シーンとなってしまった

玄関から人の話声が聞こえてきた

「この声・・・おふくろの声だ・・・私と妹の名前を呼んでいた・・・え?・・・」

「せがれ・・・こりゃ・・・」

「オヤジ・・・」

茫然となった

「皆さん・・・聞こえました?玄関からの声・・・あれは私の母の声とよく似てます、それと返事は私そのものです・・・」とDさんは真面目な顔になっていた

「ちょっと・・・俺、玄関へ見てくる」とオヤジは玄関へ行った

「誰もいないぞ!!」とオヤジの大きな声

「もうそろそろ帰りましょう」とDさんは私たちに帰るように促してきた

「そうですね・・・帰りましょう」と私

Dさんの家へ帰るまで誰も無口なままだった

Dさんの娘さんが玄関を開けた

「あれ・・・皆さん、どうしたの?」と驚いた顔になっていた

全員、無口なまま家へ入って行った

「せがれよ・・・昼間の件・・・ありゃ何だ?」

「なんだと言われてもなぁ・・・」

「おやじさん、Fさん・・・やはり、あの家、おかしいです・・・玄関やリビング・・あの状態は・・・私が小学生の時の感じと似てるんです・・・そして、あの話声・・・」

「一度、きちんと調査したほうがいいよな・・・明日にも和尚と俺とせがれであの家に一日泊まって様子を見よう」

「大丈夫なんですか・・・」

「私も一緒に行きますけれど・・・」とDさんは心配そうな顔をしていた

Dさんから幼少の時のあの家の思い出話を聞いた

別段、普通の感じに思えた

霊現象や怪奇現象は体験していないという

1点。妹さんが亡くなったということだけ

「妹が呼んだのですかね・・・」とぽつりとDさんがつぶやいた

「パパ・・・おばさん・・そういえば・・・パパたちの家族写真・・どこかにあったよね」と言い娘さんは何かを取りに行った

「パパ、あったよ、アルバム」と言いながら部屋に入ってきた

みんなでDさんの家族写真を見ていった

「おかしいな・・・なかなか・・・妹の写真が見つからない・・・

家族といってもおやじやおふくろ、私ばかりだな・・・」

楓が小声で「ねぇ・・パパ・・・昔の写真でこんな感じなの?なんか少しボケてるような気がするけど・・・」

「そうだよ・・・フィルム写真だからね」

「そうなの?・・・でも・・・このボケ感って・・・右へなんかずれてボケてない?」

たしかに・・・カメラを右へずらしてシャッターを切った感じに見える

「ね!右へズレてるでしょ・・・これ、Sおじさんもそうだよ、右へズレてる・・・

じいちゃの写真も右へズレてる・・・偶然なのかな、パパ」

なんとなく同一人物が撮影した感じに見えてきた

「ところで・・・Dさん・・・この写真を写した人は誰ですか?」

「あ・・・・確か我が家にはカメラが無かったはず・・・そういえば・・写真屋さんなのかな?・・・思い出せない」

私はDさんにS君の顔をよく見てほしいと頼んだ

DさんはS君の顔をじろじろと見ていた

「あ!!!!!!そんな・・・はずはない・・・」とDさんは叫んだ

「Dさん・・もしかして撮影者はS君じゃないですか?」

「え・・いや・・そんなはずはない・・・この写真は私が小学生のころ・Sさんはまだ生まれていないはず・・・でも・・・似てる・・・まさか・・・」

「オヤジ・・・オヤジの撮影の時も恐らくS君だよ・・・」

「おい!!F・・・ちょいまち・・どういうことだよ?何で撮影者が俺なんだよ」とS君はびっくりした顔で聞いてきた

最後のページを見たときに私たち家族全員驚いた

「えええ!!!何でおハルちゃんがいるの!!」と

「はい?おハルちゃん?いえ・・これは私の妹ですよ」

「え・・・いや・・・せがれよ、どうみてもな・・おハルちゃんだよな」

「そう・・・おハルちゃん・・・」

服装はたしかに違うけど顔はまさにおハルちゃんそのもの

というか・・・葵とそっくり・・・

「Dさん、私の末娘の葵をよく見てください」とDさんに葵を見てもらった

「おじさん、よく見るんだぞ」と葵がDさんの目前に立った

Dさんの目から涙があふれ出てきた

「すいません・・・葵ちゃんを見てたらつい妹の顔が・・・・よく似ている・・・私の妹に・・・」とついには泣き出した

「Dさん・・・これがおハルちゃんです」とS君のスマホからおハルちゃんの写真を見せた

「え・・・」と言いスマホと葵を何回も見比べていた

「そんな…」と言い絶句した

Dさんの娘さんにも見せた

「ええええ・・・パパ・・・おハルちゃん、葵ちゃん、おばさん・・・よく似てる・・・

私はF子さんのお母さんの若いころに似てる・・・どういうこと?」娘さんは驚いた

全員が考え込んでしまった

「こりゃ・・・偶然・・・なのか・・・Dさん一族とあいつの一族となんらかの関係があるんじゃないか」とオヤジは鋭い視線を私に向けてきた

「Dさんの苗字とおふくろの苗字は全然違うし・・・Dさんの一族を調べたほうがいいのかな、オヤジ」

「まぁ・・俺の大おじに聞いてみよう、せがれ、今までの経緯をまとめて俺の大おじへメールを送れ」

私は急いでまとめてメールを送った

3時間後、大おじから返事が来た

大おじもびっくりしていると書いてあった

だが・・・偶然じゃなく因縁だと書いてあった

色々と書いてあったが私には理解できなかった

和尚様に見せたら「確かに」とうなづいていた

「Fさん・・・あんまし・・・言いたくはないですか・・・いい因縁じゃない気がしますわい・・・決して両家に災いをもたらすということじゃなく・・・なんというか・・・やはり・・・両家のご先祖様たちの時代に・・・起因すると思いますわい・・・おそらく両家は親戚だったと思いますわい・・・それが何かしらの理由で遠く離れ離れになったということですわい・・・その原因がわかりませんですけれど・・・」と和尚様は穏やかな口調で説明をしてくれた

「両家を逢わせるためにご先祖様が手紙をオヤジに託したのかな・・・」

「まぁ・・・それはあり得るな・・・」

「どちらにしろどんな因縁が知らんが両家が親戚、まぁ遠い親戚だとわかったことはある意味、一連の因縁にも関りがあるということだな・・・」

「縁・・というか・・・不思議ですね・・・私、総裁と初めて会ったときになぜか懐かしいという気持ちが出てきたんです・・・商談の時も・・まぁ相手が財閥の総裁だから私の話など聞いてもらえないのかと内心ハラハラしていましたけれどきちんと最後まで私の話を聞いていろいろと質問や意見を交わしてもらいました・・・

こういうことははじめてなんですよ・・大抵はこちらの意見など無視して契約をしてくれないことがほとんどだったんです・・・びっくりしたんですよ・・あれだけの財閥の総裁が私の話を聞いてくれた・・会ってくれること自体が奇跡に近いんですよ・・・あれよあれよという感じで商談がすすんで私の社の社長もびっくりしていました、ましてや総裁が私のところの社長と直に話してくれて社長もすごく緊張していたと言っていました」

「あのね・・私は・・・時間があればきちんと商談する人に会っています・・・

いくら商売でもお互いの気持ちがありますからね・・・私は確かに財閥の責任者ですけれど昔ほどの権威はもう無いんですよ・・・私の母までですね・・・私は母の仕事ぶりをじかに見てきました・・母のあの気性さからどうしても相手に対して不快な思いをさせていたことも事実です

ですから私は誰の意見や話は最後まで聞くようにしています・・

Dさんも話し方や性格の穏やかなこと、それで最後まで聞いていました・・

それで社長に会いたいと思いDさんにお願いしました・・・私の財閥はもはや斜陽ですから・・胡坐をかいて座って楽することなどできない状況です・・ひとつでも契約を結んで社員の方々の生活を守らなければいけません・・」

「まぁ・・・Dさんの実家への泊りはやめましょう・・・とりあえず、私たちは帰ります」と私はDさんに話をした

「そうですね・・・いろいろとわかりましたし・・」

しかし・・・疑問が一つ・・・誰が写真を写したんだろうか?

みんなはS君のことを言っていたがたしかに写真の癖はS君の撮影の仕方に似てる

いずれこのこともわかる時がくるのかな・・・

Concrete
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