皆さんも大人から「あそこへは子供たちだけで行っちゃだめだよ」
と言われたことありませんか?
特に神社の午後5時以降は近寄っちゃだめだよとかね
それでも子供ですから好奇心でつい・・・・
ご存知通り、あの墓場だけは本当に近寄りたくないです
しかし・・・
あそこを通らないと遠回りになるというジレンマもあります
もうひとつは家の裏山にある神社
あそこも夕方以降は近寄りたくないです
家から見えるんですよね
もうひとつは小学校の近くにある神社
家から小学校までは2Kmくらい
そこからさらに500メートルほど離れた場所に神社はあります
神社といっても公園と神社が混在した感じで木々が覆い夏には涼しい場所
オヤジが「あそこへは行くなよ・・・えらいことになる」と夏になると思い出したように私たち子供に言ってきた
小学校の近くといっても通学路の反対側だからめったに行かない場所
そう・・・めったにね・・・やはり暑い時は暑さから逃げるためにあそこの公園・神社へ行くんですよね
なぜかその神社の中はひんやりとして涼しい
子供心に不思議だったですね
でもやはり妹のF子は「行きたくない」と言ってました
しかし、わたしのうしろからついてきてる以上はしかたなしについてきましたけれどね
ギュウと私の手を握って「兄ちゃん・・・怖いよ」と小さな声で毎回言ってました
私たち4人は「暑い暑い」と言いながらその神社で一休みして家に帰っていました
ある日・・・S子が宿題を忘れて居残りをさせられたことがありました
私たち3人はS子が終わるまで待ってました
その日は朝からうだるような暑さで夕方になっても蒸し暑さが続いていました
S子が「おっちーー!!!兄ちゃんたちごめんね」と笑いながら教室から出てきました
いつもの陽気なS子
「お前、ヘラヘラ笑いながら謝るなよ」とすこしS君はムッとしてた
「おっちーーー!!!S兄ちゃん・・・ごめんよ」と首をうなだれて無言になってしまった
「今日も暑いな・・・涼しい場所へ行くぞ」とS君のかけ声であの神社へ・・・
しかし・・もう夕方の5時を過ぎていました・・・
S君はまだ辺りが明るいので気にしていなかった
「兄ちゃん・・・早く家へ帰ろう」と小さな声でF子が私にしゃべってきた
「やい!泣き虫、F子!まだ家へ帰らないよ」とF子に話しかけた
「だって・・・怖いもん」と小さな声で反論した
「怖い?こんなに明かるいのにか?弱虫、F子」とからかい
とうとうF子の目には涙が・・・
「おっちーーー!!!兄ちゃん、F子ちゃんをいじめちゃダメなんだぞ!」とS君に言った
「ふん!!弱虫め!F子を置いて、帰ろう」と言い出してとうとうF子が泣き出した
「冗談だよ、F子・・・」と私はF子に慰めの言葉をかけた
「うん・・・S兄ちゃん・・・のバカ!」とS君の顔を見ながら小さな声でつぶやいた
これが後々・・・逆転してS君が怒られる立場になろうとは思いもしなかった
完全にF子の言いなりになってしまった
F子の顔たちがはっきりとしてるので怒った顔はさらにきつく感じる
おふくろ曰く「F子・・・私の母親そっくりだね」と・・・
時計を持っていなかったので今何時なのかさっぱりわからなかった
もう陽も落ち始めあたりが少し暗く始めた
「おっちーーー!兄ちゃんたち、もうそろそろ家へ帰るんだぞ」とS子が言い出した
「何言ってるんだよ、まだ明るいぞ、S子!ここで夕涼みしてけばいいんだよ」と完全にS子の言葉を無視をした
しかし、私もそろそろ帰りたい気分になっていた
あーだこーだとしてるうちに辺りが一気に暗くなってしまった
「え・・・もう真っ暗?・・・うそだろ・・・」とS君のびっくりした顔
真っ暗は大げさだが・・さっきよりも一気に暗くはなった
「兄ちゃん・・・もう・・・」と言いF子があたりをキョロキョロと見回し始めた
「どうした?F子」と私は聞いた
「あのね・・・感じるんだよ・・・まわりにね・・・なにかいるよ・・・」
「え・・・何かいるんだよ?」とS君のきつい言葉
「わかんない・・・でも・・・」
「でも・・・じゃな・・・」
周りは何となく騒がしくなったような気がした
神社には私たち4人しかいないはず
なぜか・・・騒がしいという感じがしてきた
「S君・・・なんか聞こえない?騒がしくなったような気がするけど・・・」
「なんとなくな・・・まぁ・・・」
「おっち・・・気分が悪くなってきたんだぞ・・・」
雑木林がザワザワと鳴り始めた
風が吹いていないのにザワザワと・・・
「なんで風が吹いていないのに葉っぱが揺れてるんだよ」
「うん・・・」
「兄ちゃんたち・・・怖いよ」と小さな声で震えながらF子がつぶやいた
((フフフ・・・・))
「え?・・・何かしゃべった?」とS君が私に語りかけてきた
「ううん・・・何か聞こえたね、S君」
「私も聞こえたんだぞ」
「何かいる・・」とF子の小さな声
突然、カラスの声
一斉にカラスが鳴きだした
もうこれにはびっくり
「もう帰ろうよ、兄ちゃんたち」とF子の悲痛な叫び声
「もうそろそろ帰ろう、S君」
「だな・・・何か気味悪い・・・」
少し駆け足でそれぞれの妹の手を握って神社の出口へ
ところがF子が転んでしまった
「イタッ・・・兄ちゃん、待って!!」と今にも泣きだしそうなF子の声
慌てて後ろを振り向いてF子を起こした
ひざのところに血が出ていた
「こりゃ・・・ちょっとまってな・・・」
と私はポケットからハンカチを出して傷口に当てた
「兄ちゃん・・・あんよが痛いよ・・・」
「すこし休もう」
ちょうど座れるような石があった
そこにF子を座らせた
出血はどうにか収まったが膝のところの皮がむけていた
もう辺りは真っ暗闇
「今、何時なんだろうね」とS君は辺りを見回しながら話しかけてきた
「わかんないよ・・・」
「おっち・・・カラスが騒がしいんだぞ」
カラスの声がさらに大きくなったような気がした
不思議なことに神社や公園の外は道路なのだが車の音や人の声が全然聞こえてこない
そんなに大きい神社や公園ではない
さらに家の明かりが一切見えてない
この空間だけがなぜか真っ暗闇という感じだ
「おかしい・・車の音や人の声が聞こえないよ・・・普段は聞こえてるのに・・・」
「僕もそう思った・・・家の明かりが見えない・・・気味悪い」
「おっち・・・おかしいんだぞ・・・結構走ったんだぞ・・神社の鳥居が見えないんだぞ」
確かに、鳥居が見えない・・・そんなに大きくはない
完全に暗闇の中にいる
ガツッガツッ
「え・・・奥からなんか聞こえた」
「おっち・・・聞こえたんだぞ」
「人の足音かな・・・」
私は奥のほうをじっと見ていた
単に暗闇が広がってるだけだ
いつのまにかカラスの鳴き声も聞こえなくなった
突然、お経のような声が奥のほうから聞こえてきた
「お経?何で・・・ここは神社だろ・・・」
チリリンチリイン
鈴の音が奥から徐々にこちらへ近づいてきてる
「わ・・・何か・・鈴の音が・・・」
「おっち・・・こっちへ来てるんだぞ」
「わ・・なんか光ったぞ・・・え・・・」
お経を唱えながら鈴の音を鳴らして数人の人影が奥から現れてきた
「うわぁ・・・逃げよう」
「うん・・・」
またそれぞれの妹の手を握って一目散に出口のある方向へ小走りに走った
ケガをしたF子をかばいながらとにかく出口へ
しかし・・・どう走っても鳥居が見えない・・・・
「え・・うそだろ・・・出口が見えない」
後ろを振りかえったらあの人影がさらに良く見えるところまで来ていた
「うわ!!!あかん・・・」
「兄ちゃん・・怖いよ」
チリインチリリン
「うわぁ!!!!」
もう恐怖しかなかった
もうだめかと思ったときに人の声がした
「おい!!!ガキ共!!!いるのか!!」
オヤジの声だ
そのオヤジの声を聞いたとたんにその場に座り込んでしまった
「おい・・・大丈夫か・・・」
「父ちゃん・・・」
「おじさん・・・・」
「あっち見て!!!なんかいるでしょ!」
「どれ・・・おい・・・何もないぞ」
「え・・・」
私は恐る恐る振り向いた
神社の本殿があるだけだった
あれだけ走ったのに実際は本殿からほとんど動いていなかった
「そんな・・・あれだけ走ったのに・・・」
「うん・・・」
「おまえら・・・約束を破りやがったな・・・あれだけ言ったじゃないか
子供たちだけでここへ来ちゃだめだと・・・まぁいいや・・・家へ帰るぞ」
もう恐怖心と安堵感で体は疲労していた
「パパ・・あんよが痛い」とF子はオヤジに言った
「ひざ・・・ケガしたんか・・・おい、F・・・大事な妹をケガさせやがってよ・・」
「ごめん・・・」
「おじさん、ごめん・・・」
「おっち・・・ごめんだぞ」
オヤジはF子を背負って家まで運んだ
もうオヤジの説教が待ってると思った
「良かった・・・もう心配させて・・・Sちゃん、S子ちゃん、今日は家で泊まるんだよ・・Sちゃんの両親には電話で話をしとくからね」とやさしくおふくろは言った
「もうお前らな・・・まぁいいや・・・無事でよかった・・・」
時計を見たら…もう午後11時過ぎ・・・
オヤジがあの神社についてしゃべりだした
オヤジも子供の時に悪ガキ3人組で親の言うこと聞かずに夜遅くまで神社で遊んでいたらしい
直にオヤジ達は白い喪服姿のお化けみたいな連中を見てしまったらしい
チリリンチリリンと鈴の音を鳴らしお経のような言葉を発しながら本殿のほうからゆっくりと鳥居のほうへ歩いていくのを見たというのだ
悪ガキ3人組は腰を抜かしてその場で座り込んでしまった
慌ててそのお化けを見ないように目をつぶった
親たちから「お化けみたいな感じのを見たら目をつぶるんだぞ」と言われてたようだ
この神社では毎年夏になると神社での神隠しみたいな感じで人がいなくなると言われていたというのだ
子供が消えた
親が帰ってこない
などと行方不明者が続出したんだそうだ
行方不明者は「神社へ行く」と言い残して消えていた
もちろん捜索はした
町の人や消防団・警察
周辺も捜した
何も手がかりは見つからず行方不明なままだ
誘拐された可能性が大だと人々は思ったらしい
だけど・・・大の大人が誘拐されるんだろうか?
やはり・・・神隠しなのかと人々は感じた
「そういうことだよ・・だから・・・行っちゃだめだと言ったんだ・・・
まぁ・・俺も人のこと言えんけどな・・・まぁ親からさんざん怒られたけどな」
とニコニコした顔のオヤジだった
F子の顔が青ざめていた
「パパ・・・怖かったよ」と小さな声
「そっかそっか」と言いながらオヤジはF子を膝の上へ乗せた
S君もS子も顔を下に向けたまま無口になっていた
今は娘3人組と息子にもことのいわれを説明をして「夕方以降は絶対に行くな」と言っている
その晩、私たちは寝付くことが出来なかった
なんとなく鈴の音が耳に残ってるような気がした
チリリンチリリン
作者名無しの幽霊
親の言うことは聞くべし
暗闇
暗闇の中に私たち4人はいた
鈴の音と喪服姿
あれがお化け・幽霊だとはじめてみた
恐怖心と安堵感
家へ帰る道中はだれもしゃべらなかった
ここから私たち4人組は怪異的な現象にあうようになった