これは私が中学生の頃の話なので、かれこれもう20年以上前の事になります。
私には3つ上の兄がいるのですが、私も兄も心霊や怪談といったものが好きでした。
ある日、兄が「なぁ、お前T市の外れにある廃墟の事って知ってる?」と聞かれたので
『何それ?知らない』と答えると「面白そうだから今から行ってみようぜ!」と言ってきたのです。
時刻はまだお昼過ぎくらいでしたので今から行っても夕方には戻ってこれそうだと思ったので私は兄の誘いに乗りました。
まだスマホはおろか携帯電話もない時代でしたから、使い捨てのカメラと念のために懐中電灯を持って私と兄は廃墟に向かいました。
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1時間ほどかけて廃墟にたどり着いた私たちは中に入れる場所を見つけて廃墟の中に入りました。
廃墟は3階建てで中は昼間でも薄暗く不気味だったので懐中電灯を持ってきたのは正解でした。
兄が懐中電灯で辺りを照らし、私がカメラで写真を撮りながら1階から各部屋などを廻りました。
1階を見終わり2階へ、2階を見終わり3階に上がりました。
何か変な物が見えたり聞こえたりといった事もなく、結局3階も見終わってしまったので「結局何もなかったなーもう帰ろうか」と兄が言うので私もそれに同意して階段を下りて1階に着いたのですが、その時に地下へ下りる階段を見つけたのです。
そういえば上る時と下りる時で違う階段を使ったので1階を探索した時には死角で見えなかったようです。
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「地下か…よし、行ってみよう!」と言うので地下への階段を下りました。
地下は50mくらいの真っ直ぐな廊下で、左に2部屋と右に1部屋ありました。
まずは奥の部屋を見ようということで奥の部屋に入るとそこは広い空間にがらくたが散乱しているだけの部屋でした。
先程まで同様に兄が懐中電灯で照らして私が写真を撮る流れになったのでカメラのシャッターを切りました。
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カメラのフラッシュが焚かれた瞬間、窓や隙間など何もないのに前方から強烈な風が吹いてきたのです。
『え?何今の?!』というと兄も「なんでここで風が吹くんだよ?!ここ地下だぞ!」と言ったので私だけが感じたわけではありませんでした。
「ちょっとここ怖いな、もう帰ろう」というのでここから出ることにしました。
帰り際右の部屋の前に来た時です、部屋の中からとてつもない腐臭が漂ってきました。
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私も兄も「うわっ!なんだこれ、くっせぇ!!」と声を揃えて言ったくらい強烈な臭いが部屋の中からしているのです。
私も兄も鼻を摘まんで駆け足で部屋の前を過ぎて地上に出てそのまま帰宅しました。
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後日、私が撮った写真をカメラ屋に持っていき現像しましたが、何か変なものが写りこんでいる写真は1枚もありませんでした。
でも、私も兄も写真なんかより地下での出来事が気になって仕方ありませんでした。
色々と調べてみると、あの廃墟が元は病院であったことが後からわかりました。
私も兄もそれであの腐臭の正体に何となく察しがついたのです。
大抵の病院って1階の奥とか地下室にあるそうなんですよ、霊安室。
多分あの腐臭が漂ってきた部屋って、かつて霊安室だったんじゃないかなって
作者死堂 鄭和(しどう ていわ)