ミャーーミャーー
あれは・・・F子が小学校へ入学して1か月後・・・
私たちは5月の暖かい春の日を下校をしていた
「おい、あそこに子猫がいるぞ、F」とS君は雑木林の隅で丸くなっていた子猫を見つけた
「あ、本当だ、S君」私は猫のほうを見ていた
「おっちーー!!かわいいんだぞ」
「小ちゃい・・かわいい、お兄ちゃん」
雑木林の隅で小さな声で鳴いていた子猫を私たちは見つけた
まだ生後間もないような気がした
「あれ・・・親猫はどこだ?」
「いないね・・・」
辺りを見回したが親猫はいない
ミャアミャア
親猫を呼んでるような気がした
「どうしよう・・・このままだと…死んじゃうよ」
「うん・・・」
「家へ連れて帰ろう・・・」
子猫を拾い家へ帰った
「ただいまーーー」
「おかえり・・・・・え・・・」とおふくろは私が抱いていた子猫を見てびっくりしていた
「どうしたの?母ちゃん」と私
「いえ・・・別に・・・・」
「おばさん、こんにちわ」
「おっちー、なんだぞ」
おふくろのあのびっくりした顔
気になって仕方ない
オヤジが帰ってきた
「おい!!帰ってきてやったぞ」
「お帰り…パパ」とF子が玄関へ行きオヤジを出迎えた
「お!F子ちゃん、いつもかわいいな」とF子を抱き上げてリビングへ入ってきた
「お!チビすけ連中来てたか」とオヤジの満面な笑顔
ミャアミャア
「え・・・猫・・・・」とオヤジの顔が真顔になった
その鳴いている猫のほうへ近寄った
「おい・・・だれが連れてきた?」
「僕だよ、父ちゃん」
「おい、今すぐ、捨ててこい」とオヤジの怒り顔
「え・・・なんで?」
「いいから!捨ててこい」
「でも・・・」
「シバくぞ」
私はあまりにも恐ろしいオヤジの顔を見て子猫を抱き上げてリビングから出た
ほかの3人もついてきた
「どうしよう・・・」
「なんで・・・おじさんはあんな怖い顔をしたんだろ」
幼かった私たちはオヤジが何であんな怖い顔をしたのかわからなかった
「とりあえず、おれんちへ連れて行こう、F」
私たちはS君の家へ行った
「おかえり、あら、かわいい、子猫」と玄関からおばさんが出てきた
「母さん・・・猫を飼いたいけど・・?」
「わたしはいいわよ」とおばさんはニコニコした顔
「よかった・・・・」とS君はホッとした顔になった
S君の家で夕食をさせてもらい家へ帰った
「今さっき、Sちゃんのお母さんから電話をもらったよ、夕食は済ませてきたんだね」
「うん!」
「そうならもう夕食はいいわね」
「うん、いらないよ」
「おい、チビ助、猫はどうした?」
「うん・・・S君の家で飼うことになったよ、父ちゃん」
「なに!!!「俺は捨ててこい」と言ったんだぞ」とオヤジの鋭い視線
「え・・・」と私はオヤジの鋭い視線に固まってしまった
オヤジは慌てて外へ出て行った
私はオヤジのあとを追いかけた
「ついてくるな、家へ帰れ」と怒鳴った
「でも・・・」と私はオヤジの後を追った
S君の家へ着いた
「おい!!!○○(おばさんの名前)、大丈夫か?」
返事がない
「なんでこった!!!・・・鍵が閉まってるぜ・・・アイツ(おじさん)はまだ会社か・・・」
「ちっ・・・一旦家へ帰ってあいつ(おじさん)のところへ電話をかけるぞ」
オヤジはものすごい速さで家へ帰った
「おい、大変だ、○○(おばさん)の返事がない、あいつの会社へ連絡する」
「え!!なに?どうかしたの?」
「説明は後だ」と言いながら電話するオヤジ
「あいつ、仕事を切り上げて帰ってくる、チビ助を頼むぞ」
「はい!あんた、気を付けてね」
私は何かなんだかわからなかった
およそ1時間後に救急車のサイレンの音が聞こえてきた
「救急車のサイレンが鳴ってるよ、母ちゃん」
「そうだね・・・」
しばらくするとオヤジが帰ってきた
「どうにか間に合ったぜ・・・二人とも大丈夫だ・・・あいつが救急車に乗って病院までついて行った」
「え・・・父ちゃん・・・S君は?」
「大丈夫、何とか間に合った・・・あの糞猫、くそっ!」
「猫・・・あの子猫?どうかしたの、父ちゃん」
「あぁ・・・あれは猫じゃない、確かに見た目は子猫だが、ありゃ化け猫だぞ、F
「え・・・化け猫?違うよ、小さな子猫だったよ」
私はオヤジの言っている意味がわからなかった
オヤジが詳しく話してくれた
私たちが拾ってきた子猫は猫じゃなかった
あの子猫はもう死んでいた
あの辺りで死んだんだろうとオヤジは言っていた
ちょうどおまえたちが通りかかってきて姿を現したのだということだ
一番まずいことにF子の波長と合ってしまったことだ
F子には生まれつきの霊媒体質でいろいろな霊の波長を拾う
今回は動物霊とあってしまった
そこでその化け猫はかわいい子猫に化けたのだ
いつもならF子が一番気づくのだがF子と波長があったために化け猫として見破ることが出来なかった
あの化け猫は人間に対して相当な恨みを持っていた
生前に人間にイジメられ捨てられた
その後に交通事故にあい死んだ(というか・・わざと・・車の前に放り投げた)
「一目ですぐにわかったよ、いくら化けようが俺には通用しない
だから、俺は、「捨ててこい」と言ったんだよ・・・」
「父ちゃん・・・ごめんね」
「もういいぜ、チビ助・・・」
もしあのまま飼っていたらS君一家は壮絶な最後を迎えていただろうとオヤジは怒りの顔をして私たちに話してくれた
「いいかい・・・F、F子ちゃん・・・いくらかわいいからといってもな・・・抱き上げたり家へ連れてくることは絶対にしちゃだめだぞ・・・かわいそうと思うのはわかる・・・でもな・・それも運命なんだよ・・」とオヤジの顔は少し寂し気だった
3日後にS君やS子、おばさんは無事に退院できた
オヤジから詳細に話を聞いて3人は真っ青な顔をしていた
私たち4人組の遠い昔話・・・・
「ただいま!!!」
「ただいまなんだぞ!!」
「ただいま、ママ!!!」
子供たちが帰ってきた
ミャーーミャアーー
えええええ・・・・・・猫・・・・それも子猫
「パパ、子猫を拾ってきたんだぞ、かわいいんだぞ」と葵が子猫を抱いていた
もう私は倒れそうになった
「ママ!!!子猫を拾ってきたんだぞ」と今度はS子に見せた
S子の顔が真っ青になった
「おっちーーー!!!!!パパ!!!!」と私を呼んだ
びっくりしてる子供たち
「ママ!!そんな大きな声を出しちゃだめだよ」と匠の声
「ただいま、帰ってきてやったぞ」とオヤジの声
「あ!じいちゃんだ!!迎えに行くんだぞ」と楓は子猫を抱いてカナちゃんと一緒に玄関へ行った
娘たちとオヤジがリビングへ入ってきた
「かわいい子猫だよ」とオヤジが子猫を抱いていた
私とS子はもうびっくり
S子も昔のことを思い出していた
オヤジは子猫の頭を撫でていた
「お・・オヤジ・・・いいのか?子猫を家に上げて?」
「んん?どうした?・・・かわいい子猫だぞ、よぉし、子猫を飼おう」
S子の顔を見てお互いにびっくり
「オヤジ・・・昔、俺が小学校の時に「猫を拾ってきたらダメだぞ」と言ってたぞ」
「俺・・・そんなこと言ったけっな・・・」
「オヤジ・・・例の化け猫」と小さな声でオヤジに言った
「あぁ・・・思い出した・・・確かに言ったな・・・そっかそっか・・・
大丈夫だ・・・この子猫は生きた猫だよ・・・自力では生きていけれないよ・・・かわいそうだから・・・家で飼うことにした・・・なぁ!楓ちゃん!」
「うん!!よかった、じいちゃ、ありがとう」
「え・・・・」と私は絶句した
相手がオヤジだった・・・昔のことを言い出しても無理だろう
「せがれよ・・・楓ちゃんはF子ちゃんよりさらに強い霊媒体質だよ・・
いくらあの子猫が化け猫でも化かすことはできないよ・・・俺も全然感じない・・あの子猫はきちんと生きた猫だ、安心しろ」と小声で私に理由を言ってくれた
数か月後・・・その子猫はいなくなった・・・
「逝ったか・・・親の元へ帰って行ったかな・・・」とオヤジがボツリ
「え・・逝った?・・・どういうことだ?」
「あぁ・・あの子猫は化け猫の子供だよ・・・俺がその化け猫を退治したときに「すまんな・・人間の見勝手さに・・・心から謝罪する・・・」と手を合わせたよ」
「え・・・」
「化け猫が・・・子猫を孫たちに託したんだよ・・・きちんと育ててほしいとな・・
俺はあの子猫を見てすぐにわかった・・・「わかったよ・・・責任もって育てるよ」と心の中で化け猫に言ったよ」
いつのまにか子供たちが集まっていた
「じいちゃ・・・親猫の元へ帰って行ったんだね」と楓の泣き出しそうな声
「楓ちゃんもはじめからわかっていたんだろ?」
「うん・・・子猫を拾ったときに親猫らしき猫がこっちを見てて頭を下げたんだよ、じいちゃ」
「そっか・・・」
子供たちはオヤジと楓の話を聞いて涙が出ていた
私もだ
作者名無しの幽霊
これも「縁」というものかな
不思議でどこか寂しい
あの親子猫・・・天国でノンビリとしてるといいな
あの子猫以来・・・もう動物を飼うのはやめた