とうとう町内というか区域でついに我が家だけになってしまった
解体工事もどんどんすすみ更地になっていく
まさかこんな状況になるとは思ってもみなかった
一気に見晴らしがよくなった
この土地の因縁なのかどうかわからないが結構な変というか変わった場所が多い
ここらへんの土地はもともと田んぼでそれを埋め立てて住宅地にした
家の裏のほうはまだまだ田んぼが多い
反対側は国道が走り夜中まで騒々しい
北と南で全然違う環境
駅も近いので終電までは車や人の声で騒々しい
そして、我が家は霊道の上に建っている
ちょこちょこと怪異現象が起きてるわけだ
その霊道の西のほうへ行くと坂がある
家から800メートルほど
急な坂ではないのだが200メートルほどの坂道になってる
普段はそこは通らないので気にはしていない
さて・・・匠と仁のこの二人、変な噂を聞いてきた
今、教室でその話で盛り上がってるらしい
匠や仁の話によると
その坂を歩いていると坂の上から生首が転がってきて歩いてる人の前で止まり
ニヤッと笑い「私の体はどこですか?」と聞くらしい
その話を聞いて
「あははははは!!!なんじゃそりゃ!!マネキンの首が転がってきたんじゃないのか
誰かの悪戯だろ」と大声でオヤジは笑った
「じいちゃ!!クラスで5人もあの坂で生首みたいなものに遭遇してるんだよ」と匠は真顔で言った
「いや・・・あのさ・・・あの坂は確かに夜は街灯が無いんで怖いとは思うけどよ・・
作り話だろ、俺は寝るよ」とオヤジはスコスコと仏間へ行ってしまった
「パパ・・・私のクラスにもいるんだよ、生首を見たって・・・」と楓もしゃべりだした
「まぁ・・・見間違いということもあるよ・・・あそこは暗いからね・・・なんかゴミみたいなものが生首に見えたのかもしれないよ」と私はすこし笑いながら楓に話をした
しかし・・・ちょうど霊道の上を通過している坂道・・・ひょっとして・・・
街灯がないというのは不気味と言えば不気味
あの坂道だけは真っ暗け
両隣は雑木林といういかにもという環境
坂道を下れば国道だから車の音や人の声は聞こえる
まぁ・・終電・を過ぎれば・・・まさに怖さマックスなのはわかる
坂道をのぼると民家がある
そこには街灯があるから歩きやすい
決して・・・心霊スポットのような感じではない
まぁ・・・作り話か噂話か・・・
ある夜
けたたましい救急車のサイレンやパトカーのサイレンが響いた
深夜1時ごろだ
私は一気に目が覚めた
オヤジが来て
「おい!外、うるせえよな・・・何かあったんかな」
「かもね・・・なんだろうね」
外が騒がしい
およそ10分後には救急車が通りすぎて行った
「俺、ちょっと見てくるわ」とオヤジは外へ出て行った
オヤジが帰ってきた
「なんかな・・・野次馬の話だとOLが転んで頭を打ったんだとよ・・
通行人が通報したらしい・・・救急隊が来るまでそのOLはまだ意識があって
「ナマクビ・・・ナマクビ・・・」と言いながら気絶したらしい
まぁ野次馬連中の話だからな・・・まだ警官が坂道でなんかしてるぜ」
「そうなんだ・・・・「ナマクビ」ね・・・」
私は眠いのでそのまま寝てしまった
学校から帰った匠と仁は深夜の出来事がクラス中の話題となり
夕食時にその話題になった
「パパ・・昨日の夜のアレ・・・クラス中の話題になってね・・・もうパニック状態な感じだったよ・・・特にあの5人は話題の中心にされてなんかかわいそうだった」
「へぇ・・・」
「私のクラスもその話題でもちきりだったよ、パパ」と楓は真顔な顔でしゃべっていた
「ちっ・・何かの間違いだろ・・・」と苦笑いのオヤジ
なんか怪しいな・・・オヤジ、何かを隠してる・・・
「オヤジ・・・夕食が終わったらちょっと話がある」とオヤジをにらみつけて言ってやった
「あぁ・・・」と生返事
書斎室でオヤジと2人きり
「オヤジ・・何んか隠してるだろ?」
「いや・・別に・・・」
「うそだ・・いつものオヤジなら「そっかそっか・・・じゃあ、明日でもあの坂で肝試しするか」という流れだぞ・・・それが全然ない・・・しかもさっさと仏間へ行った・・・怪しい」
「いや・・・あそこで・・肝試しをしてもな・・・」
「歯切れが悪いな、オヤジ・・・吐けよ」
「いや・・・まぁ・・・ちっ・・仕方ない・・せがれの頼み・・ちっ」
オヤジが吐いた
オヤジが中学生の時に悪ガキ3人組があの坂でいたずらをしたこと
昼間にマネキンの頭をどこかから拾ってきて
サッカーボールのように足で蹴っていたそうだ
はじめはうまく蹴っていたけれど蹴り損ねてマネキンの頭が坂を転がって行ったそうだ
そこへ坂を上ってきているお婆さんの前でマネキンの頭が止まった
そのマネキンの頭をお婆さんが見て腰を抜かして動かなくなってしまった
そのままお婆さんは前かがみに倒れて死んでしまった
心臓発作だ
これを見ていたオヤジ3人組はあまりの恐ろしさにその場から逃げ出してしまった
オヤジ3人組は「こりゃ面白い」とひそひそと話して翌日からマネキンの頭を転がして悪戯をしていたんだそうだ
マネキンの頭がコロコロと転がってそれを見た通行人は本物の生首かと思い悲鳴を上げたり腰を抜かしたりした
ますます調子に乗った悪ガキ3人組
ついに・・・やらかした・・・マネキンの頭が勢いが強かったのか国道へ出てしまった
そこへ車がマネキンの頭とぶつかり急ブレーキ、後続車が続々と追突して多重事故となってしまった
マネキンの頭を当てた車から運転手が出てきてそのマネキンの頭を見て絶叫した
オヤジ3人組も真っ青になりその場から逃げ出した
さすがのオヤジ達も恐ろしくなったんだろうな二度としなくなった
オヤジ!!!!いたずらにも程がある
「お、お、オヤジ!!!!もう悪戯じゃないぞ!!!犯罪だぞ」と思わず大声を出してしまった
「いや・・若気の至りかな・・・」
「何が若気の至りか!!!けが人も出たんじゃないのか!!ましてやお婆さんが死んでるんだぞ!!!何でこった・・・」
「まぁ・・・・」とオヤジは黙り込んでしまった
「俺・・もうそろそろ寝るわ・・・」と顔を下に向けたまま部屋から出て行った
オヤジ3人組の悪戯というかもう犯罪だ
このナマクビの噂の元がオヤジ3人組だとは・・・
私はおふくろに事の詳細を話をした
おふくろの顔が鬼の顔になった
1時間ほど仏間でオヤジは説教を食らった
しかし・・・噂はともかくとして・・・ナマクビが転がってるとなると誰かの悪戯なのか・・マネキンの頭を見間違えているのかな・・・
子供たちにもオヤジの話をした
子供たち全員が呆気にとられていた
「じいちゃ・・・やり過ぎだよ・・」と匠
「じっちゃんだったんだね・・・噂の元を作ったのは・・・」と楓
「ところで本当にナマクビを見たんだろうね、その5人は?」と匠に聞いた
「そうみたい・・・「坂をのぼっていくときに何かが転がってきて目の前で止まってよく見たら生首だった」と話してた・・・5人とも同じように言ってたよ」
夜だからな・・・子供の悪戯とは考えにくいけど・・・
でも警察が長時間にわたって何をしてたんだろう
生首だから「事件」として捜査してたのかな・・・
それから1週間後
元捜査課長が久しぶりに我が家へ来た
「こんばんわ、夜分申し訳ない」と元課長の声
葵とカナちゃんが玄関へ行った
「お久しぶり、葵ちゃん、カナちゃん」と元課長は挨拶をした
「おい!酒を持ってきたぞ、飲もうや」
「おう!!!いいところへ来た」
2人はさっさと仏間へ行ってしまった
あ・・・ちょうどいいところにきた、例のナマクビ事件を聞こう
「すいません・・・ちょっと聞きたいんですけど・・・ナマクビ事件のことが聞きたくて」
「なに?ナマクビ???・・・あぁ・・捜査課長から電話があったよ
どうもな・・・例のOLだろ・・・あれな・・救急車へ運ばれて・・・病院で亡くなったよ・・・死因は心臓発作だった・・・まだ若いのにな・・・一時的に意識が戻ってしばらく様子を見ていたらそのOLな・・・いきなり目を開いて「私の体はどこにやった」とすごい勢いでしゃべったんだそうだよ・・・すると体がけいれんし始めて心臓が止まったんだそうだよ・・・病院からこの経緯を聞かされて・・もしや・・と思い捜査課長は現場にいた警官たちに現場検証させたと言ってたな・・・まぁもちろん何も出てこなかったけど・・・
署は捜査本部を置いたとか言ってな・・・と言うか・・・口止めされてるんだけど・・・現場から5kmほどの離れた川から胴体だけの死体が発見されて・・・この坂との関係性があるのではないかということで今捜査してるよ・・・もちろん雑木林も調べたよ・・」
「なんか・・・すごいことになったじゃないか」
「オヤジ・・・たちじゃないよな?」
「馬鹿いえ!!関係ねーぞ!!!せがれよ」
「F君・・・どういうことだ?」
「オヤジから昔話をしろよな」
「ゲッ・・・俺の黒歴史の一つ・・・今頃になってよ・・」
オヤジは酔いの勢いもあって全て話をした
一番驚いたのは元課長だった
「おい!!本当か!!!俺がまだ新人のころのことじゃないか
多重事故で応援に行ったんだよ・・・ひどい惨状だったぞ・・・
一番前の車の運転手が「人を轢いてしまった・・・頭が!!!」と半分狂乱してたんだよ・・よく見たらマネキンの頭だったよ・・・マネキンの頭をもって俺が説明して何とか落ち着いてもらったんだよ・・・運転手にとっちゃとんでもないことに巻き込まれてな
15台もの追突事故だったもうな事故処理が大変だったよ・・・そっか、お前だったのか!!
目撃証言で少年らしいという情報をつかんでいたけどな・・
おいおい・・・・」と元課長は呆れた顔をしていた
「いや・・・そのぉ・・・なんだな・・・」
「でも・・・その川の死体が自分の頭を探しているんか?」
「あ・・・・ありえるかもな・・・」
何気に背中がゾクっとした
私は早々に自分の部屋へ戻った
寝室ではS子が寝ていた
疲れが溜まっているんだろう
揺さぶっても起きなかった
寝室から書斎室へ行き飲みかけのコーヒーを飲んだ
ボケっとしていた
仏間からの酔っ払いたちの大きな声
案の定・・・娘3人組が逃げてきた
「パパ・・・じいちゃんたち・・・うるさい…眠れないよ」と楓の悲痛な声
「うるさいんだぞ」
「あれ・・・そういえばおふくろは?」
「あ・・・ばあちゃ・・・ママのところじゃないの?」
「いや、居なかったよ」
「リビングかな?」
私と3人娘たちはリビングへ行った
「パパ、ばあちゃ・・いないね」
「おかしいな・・・」
玄関へ行きおふくろの靴があるかどうか見た
ない!!!
「おふくろの靴が無いぞ・・・外へ行ったのかな?」
私と3人娘は外へ出た
家の周りにはおふくろはいなかった
「もうちょっとあたりを探そう」
「うん!!」
いない・・・
もう時間的に深夜2時を過ぎてる
おふくろが勝手に外へ出るということは今までない
もしや・・・
私は例の坂道へ行ってみた
本当に真っ暗
「パパ・・・怖いよ・・・」
「こんなに暗いのか・・・」
懐中電灯で前のほうを照らしながら歩いた
「パパ・・・前のほう・・・何かいるよ」と楓の声
わたしは楓が指さした方向へ懐中電灯を向けた
「たしかに・・・」
恐る恐るその得体の知れないもののそばへ寄った
「うう・・・・ううう・・・」
声が聞こえた
「お・・お・・・おふくろ・・・なにしてるんだ」
「うう・・・ううう・・・」
おふくろは背中を丸めてうめいているだけだった
「おふくろ!!!しっかりしろ」と大きな声を出した
「ナマクビ・・・・」
おふくろが倒れた
私は慌てて119番をした
そして、オヤジに連絡をした・・が・・・出ない
「酔っ払いめ・・・出ろよな」
しばらくすると救急車が来た
事情を話をして私と3人娘は救急車に乗った
駅前の大きな病院へ着いた
すぐに入院となった
家へ電話をした
S子が出た
事情を話してオヤジを病院へ来るようにと頼んだ
S君にも電話をしたが出なかった
留守電をしておいた
しばらくすると大きな声が響いてきた
酔っ払い2人が来た
「うわ・・・オヤジ達」
「おーーう、せがれよ!呼ばれてやったぞ!!あいつがお陀仏だって、あはははは」
笑いことか!!!
「オヤジ!!笑いことか!!!おふくろが危篤状態なんだぞ」
「あはははは!!!どれどれ・・・・うっ!マジか!南無三・・・」
オヤジはヨレヨレと廊下に出て椅子に座り込んで寝てしまった
元課長はすでに寝ていた
これを見ていた娘たちは怒りをあらわにしていた
担当医や看護師たちも呆れた顔をしていた
「ばあちゃ・・・ばあちゃ・・・」と楓はおふくろ手を握っていた
葵とカナちゃんもずっとおふくろの顔を見ていた
S子とカナちゃんママと息子たちが来た
「ママ・・・大丈夫なの?」とS子は私に聞いてきた
今までの経緯を話をした
「あれ?パパは?」
「あそこ・・」と私は指を指した
「パパ・・・・」S子も呆気に取られていた
おふくろの状態がなかなか安定しない
顔色が悪い
私は和尚様の薬を医者からの薬と一緒に飲ませた
しばらくするとだいぶ息使いも落ち着いてきた
顔色も徐々にだが良くなってきた
「だいぶ・・・良くなってきました・・・薬が効いているみたいですね」と担当医の言葉
心拍数も落ち着いてきた
「ナマクビ!!!」と叫んでおふくろが目を覚ました
「大丈夫?」
「はぁはぁ・・・・ここは?」とおふくろはキョロキョロと見回した
「うふぅ・・・・病院なのね・・・わたし・・・」とおふくろが話し出した
おふくろの話だと
リビングで一人で茶碗などの後片付けをしていたらしい
リビングではS子とカナちゃんママがおしゃべりをしていた
勝手口で叩く音がした
おふくろははじめは気のせいだろうと思い後片付けをしていた
時計を見たら午前0時過ぎ
また勝手口のドアを叩く音がした
おふくろは勝手口の方を見た
「一体誰なのかしらね」と思っていた
また叩く音がした
「あのぉ・・・誰でしょうか?」と聞いた
返事が無い
勝手口のところへ行きもう1度「誰でしょうか?」と聞いた
返事はもちろんない
勝手口のドアノブに触れた途端に意識が無くなったらしい
気づいたら例の坂道にいた
おふくろ自身驚いてしばらく立っていた
まわりは真っ暗
ふと坂道の上を見ると何かが転がってきている
じっとみていた
それがおふくろの前で止まった
おふくろはそれを見て悲鳴を上げた
生首だった
「わたしの体はどこにあるのですか?」と生首がしゃべってきた
もうさすがのおふくろも悲鳴を上げて座り込んでしまった
息も出来なくなり意識が無くなった
「もうね・・・心臓が止まりそうだったわよ・・・生首がしゃべってきたのよ「私の体はどこですか?」とね・・その途端に息苦しくなってね・・・」とおふくろは手を震わせて私たちに話してくれた
S君とF子が来た
「おふくろさん・・・」と言いながらS君がおふくろのそばに寄った
「Sちゃん・・・ごめんね・・・」
「ママ・・・」
「心配かけてごめんね・・・」
「だいぶ落ち着ちついてきたわ・・・みんなごめんね・・・あいつは?」
「オヤジなら廊下の椅子で寝てるよ」
「来てたんだね・・・」
「とにかくおふくろはゆっくりと寝てくれ」
でも何で勝手口を叩いんだんだろう
はっきりといって関係ないと思うが
霊道だから?
家からだって800メートル離れてる
とにかく川の死体も身元がはっきりとわかっていない
警察も人数を増やして捜査はしてるらしい
生首との関連もはっきりとしていない
共通点は両方とも女性だということだけ
とにかく女性の頭が出てこないと捜査はますます難しくなる
おふくろは無事退院した
あれから怪異的なことは起きてはいない
事件も進展がなく迷宮入りに入りそう
作者名無しの幽霊
ついに・・・おふくろも怪異的な体験をしてしまった
しかし・・・首が坂をコロコロと転がってきてしゃべりだしたら心臓が止まるに決まってる
たいして後遺症もなく退院ができてホッとした
事件はどうやら迷宮入りになりそう
しかし、オヤジのあの態度はひどい
おふくろはオヤジが来ただけでもうれしそうだった
やはり・・オヤジはおふくろが好きだったんだと後でよくわかった
オヤジの葬儀の後にS君が「おやっさん・・はやいうちにおふくろさんを呼びに来そうだな」とボツリと言った
1か月後におふくろは「あいつが私を呼んでる・・あいつの元へ行くからね・・・あなたたちはまだまだ生きないとね」とそれが最後の言葉になった