短編2
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海水浴

この時期にふっと思い出すのです。

小学生の頃、両親と弟二人と五人で海に行きました。父は釣りばかりが好きな人で、出かけるというといつも釣りがメインで海水浴は数えるほどしか言った経験がないと思います。

そんな数少ない海水浴で、私は一度死にかけた事があるのです。私は、泳ぎがあまり得意でないので浅瀬で遊んでいたのですが。

水上バイクに乗った係員の方が

「近くにサメが来ています。皆さん沖に出ないようご注意ください」

この様な事を言って沖合の方から注意をしていました。ふっと、沖の方に目をやるとそこには弟が浮き輪に乗って泳いでいる姿がありました。

二人のうちどちらの弟だったか、もうあやふやですが確かにわが家の大きな浮き輪に乗った弟だったと記憶しています。私は泳ぎは下手でしたが、潜水が得意でした。

なので、水に潜り弟の後を追ったのです。危ないから連れ戻さなければと、そう思っての行動でした。

しかし、海はプールと違い潮の流れがあります。私が再び海上に顔をあげた時、弟の向かっていた方向とは違うところに出てしまいました。

そこはとても深く、大人も立てない深さの場所でした。私はパニックになり、再び潜水する事も出来ず溺れそうになったのです。

すると、私と同じく泳ぎが下手な筈の母が私を助けに来てくれました。ですが、どうやって来たのか母も私と共に溺れてしまい互いに互いの身体に捕まろうとして体が沈み海水を飲み込んでしまいました。

ああ、このまま母と共に死ぬのだ。そう思った時、浮き輪に乗った弟が

「何してるの?」

っと、私たちの方へとやって来て助かりました。私と母は、まさに九死に一生を得たのです。

その後、浜に戻ると「何故、沖に向かったのか」っと父に怒鳴りつけられました。

理由を説明すると、弟が確かに沖の方へ向かっていたが私の前を泳いではいなかったと言うのです。しかし、当日の海水浴場には他に大きな浮き輪を持った人はいませんでしたし。

あの後ろ姿は絶対に弟だと思ったのです。

私は、いったい誰の……ナニの後を追っていたのでしょうか?

Concrete
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