長編13
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セイレーン

セイレーンはギリシャ神話に登場する海の怪物。

上半身は美しい人間の女性なのだが、その下半身は鳥の姿とも魚の姿ともいわれている。船の航路近くにある岩礁から美しい歌声で船乗りたちを惑わし、船を沈めてしまうという魔物だ。

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◇◇◇◇

一週間の八丈島旅行を終え、飯塚聡は底土港からフェリーに乗り込んだ。

二等和室で自分の場所を確保し、荷物を置くとごろりと横になった。

これから約十時間の船旅となる。

緊急の仕事で夏休みをすべて費やした代休として、この九月も中旬になってから十日間の休みが貰え、ふと思い立って八丈島へ来ることにしたのだ。

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何の脈絡もなく八丈島に行先を定めたわけではない。

彼が大学二年生の時だから、今から七年前に一か月ほど彼はこの島で過ごした。

年末年始に高額のアルバイトがあり、思わぬ臨時収入に恵まれたこともあって、時間が自由になる学生のうちにと、春休みに長期の八丈島旅行を思い立ったのだった。

八丈島にあるユースホステルで安く泊まり、食費を抑え込めば一か月十万円ほどの滞在費で行けると目論み、金銭的にはほぼ計画通りに過ごせた。

この一か月の間、地元の人や旅行者、いろんな人と出会い、良いことも悪いこともいろいろあったが、帰って来てしまえばすべていい思い出として心の中で消化していた。

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良い思い出は時間が経つほど心の中で更に美化されて行くと言うが、就職して慌ただしい毎日を送る中、飯塚聡は時間に縛られずにゆったりした時間を過ごしたあの場所にもう一度行ってみたいと思うようになっていた。

そして今回それが叶うことになったのだが、実際行ってみるとただ懐かしいだけで、あの時のような高揚感や解放感は全く湧かなかった。

もう二十七歳の社会人になった彼が、学生で二十歳だったあの時と同じ感性でいられるはずがないのだ。

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◇◇◇◇

そしてもうひとつ。

飯塚聡には島での思い出として捨ててしまった約束があった。

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島に滞在する間、毎日何もしていなかったわけではなく、朝は漁港へ行って漁師さんたちの水揚げを手伝い、その代償として捕れた魚を分けて貰っていた。

その魚はユースホステルへ持ち帰り、ペアレントさん(宿主)に渡して夕食として料理して貰って同宿の人達と一緒に食べ、それで宿泊費を随分安くして貰ったが、

漁港に通っていたのは、そんな金銭的な理由だけではなかった。

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漁港で父親の水揚げを手伝っていた高校生の女の子と仲良くなり、彼女に会いたくて毎日漁港に通っていたと言った方が的を射ていた。

彼女は当時、高校三年生に進級する直前で十七歳、日焼けした黒い顔にポニーテールが良く似合う丸顔のかわいい子だった。

性格も素直で、その嫌味のない会話が彼女と一緒にいる時間を楽しいものにしてくれていた。

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高校も春休みに入り、彼女も昼間の時間が空くようになると、水揚げの手伝いの後、午後は近くの海岸で待ち合わせてデートするようになった。

彼女に島の中を案内して貰ったり、彼女の宿題を手伝ったり、浜辺で将来歌手になりたいという彼女の歌を聞いたり、と楽しい、素朴な時間を一緒に過ごした。

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そして島から東京へ帰る時、港で乗船時間を待っていた彼のところに彼女が駆け寄ってきて、必ず連絡をくれと言って電話番号を書いた紙を渡された。

その時は彼女に必ず連絡すると約束したのだが、その紙は竹芝ふ頭に向かう船の甲板から海に投げ捨てた。

従って東京に帰った彼が、その八丈島の彼女に連絡を取ることはなかったのだ。

そして彼は自分の東京での連絡先を彼女に教えていなかった。

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自分はなぜあの紙を捨て、彼女と連絡を取ろうとしなかったのだろうか。

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この疑問は、これまで飯塚聡自身が何度も自問したのだがその理由が自分でもまったく解らない。

客観的に見ればあの時は、彼女との関係を東京へ持ち帰らずに島にいる間だけと割り切っていたとしか思えないが、彼女のことを非常に愛しく思っていたのは間違いない。

決して島にいる間だけなどというつもりは全くなかったはずだ。

なぜだ。なぜだったのか。

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◇◇◇◇

そして今回の旅行の間に、あの頃の記憶を頼りに彼女の自宅を訪ねてみた。

あれから七年が経ち、高校生だった彼女は二十四歳になっているはずだ。

自分の夢を叶えるために、もう島にはいないかもしれない。

それならそれで彼女が現在はどのように過ごしているのかだけでも分かればいい。

しかし今更彼女の消息を知ってどうするつもりなのだと彼はまた自問していた。

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その葛藤を胸の内に抱いたまま、飯塚聡はホテルを出ると彼女の家を目指して歩き始めた。

島内の道路の詳細が頭に入っているわけではなく、一旦漁港へ行き、そこから記憶を辿って彼女の家へと向かって歩き始めた。

漁港から外周道路を横切り、路地へと入って行く。

確かここの角を曲がり、そしてこの路地を抜けたところが彼女の家だ。

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そのはずだった。

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驚いたことに目の前にあるはずの、石でできた門柱とその奥の茶色い平屋の建物がない。

そこにはハマナスのツルが地面を這いまわっている、まったくの更地があるだけだ。

その場所に足を踏み入れてみたが、そこに家が建っていた痕跡すらなかった。

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キツネにつままれたような気分でその場所を離れると、彼はあの時彼女と一緒に過ごした他の場所を訪れてみた。

彼女と出会った漁港、待ち合わせた防波堤、いろいろな事を語り合った砂浜、彼女の勉強を手伝ったコーヒーショップ。

そこはすべて、七年の時の流れを感じる部分はあるものの、記憶の通りだった。

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飯塚聡は再び彼女の家があった場所へ戻った。

いま見てきたところは昔のままなのに、彼女の家だけがない。

彼女の一家がここを更地に戻してどこかへ引っ越してしまったとしか考えられない。

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その場所に立ち尽くしていた彼の近くを、たまたま中年の女性が通りかかった。

彼は急いでその女性のところに駆け寄ると、そこにあったはずの家のことを尋ねた。

せめて島内のどこか別の場所へ越したのか、本土に移ったのかくらいは知りたかった。

しかしその女性の答えは全く予想できないものだった。

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「えっ?あんなところに家なんかないよ。あの辺りは私が子供の頃からずっと野っ原で、近所の子供の遊び場だよ。」

そんなはずはない。

「佐藤まりなという女の子がそこに住んでいたはずなんですけど、ご存じありませんか?」

飯塚聡は重ねて聞いてみたが、その女性は怪訝そうな顔をして首を横に振るだけだった。

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◇◇◇◇

結局彼女の消息に関しては何も分からぬまま予定の滞在期間を終え、飯塚聡は東京へ戻るさるびあ丸へ乗り込んだ。

彼女の消息どころか、彼女がこの島に存在していたことすら確認できなかった。

しかしこの桟橋で船に乗り込むときに駆け寄ってきた彼女の姿がありありと記憶に蘇ってくる。

七年という時間はそんなにも長い時間なのか。

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船は長い汽笛と銅鑼の音と共に、底土港を朝九時半の定刻に出航した。

予定通りなら東京竹芝桟橋に午後八時前には着くはずだ。

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二等和室で一旦は横になったものの、まだ午前中であり全く眠気はない。

飯塚聡は横になっているのが苦痛になり、起き上がると船内の散歩を始めた。

二等和室には数多くの男女、家族連れが思い思いの場所を確保して、お菓子を食べながら談笑していたり、ゲームや読書をしていたりと、それぞれの方法で時間を過ごしている。

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甲板に出てみると波は非常に穏やかで空は青く晴れわたっており、吹き抜ける風が心地良い。

「すみません。」

手すりにもたれ掛かりぼっと海を眺めていると、不意に背後から声を掛けられた。

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振り向くと若い女性がカメラを差し出して微笑んでいる。

「すみません、シャッターを押して貰えませんか?」

しかし飯塚聡は彼女をみつめたまま返事をしなかった。

似ていたのだ。あの彼女、佐藤まりなに。

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目の前にカメラを持って立つ女性は色白でショートカット、浅黄色のワンピース姿だ。

真っ黒に日焼けしていつもポニーテールにジャージ姿だった佐藤まりなとは違っているのだが、その顔立ちには彼女と共通する何かがあった。

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「あの・・・すみません。」

女性はカメラを差し出したまま困ったような顔をして、返事をせずに自分を見つめている飯塚聡にもう一度声を掛けた。

「あ、ごめんなさい。ちょっと知り合いに似ていたもので。あ、おひとりですか?」

シャッターを押してくれという依頼だったので、てっきりカップルだと思ったが彼女の周りには誰もいなかった。

「ええ、カメラが一眼レフなんで、スマホみたいに上手く自撮りができなくて。お願いできますか?」

「ええ、もちろん。」

飯塚聡はカメラを受け取ると、海を背景にポーズを変える彼女に合わせて数回シャッターを切った。

ファインダー越しに彼女の姿を見ていて、彼は気がついた。

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眼差しだ。

少し垂れ気味の可愛らしい目元も似ているが、それ以上にこちらを見つめる瞳の奥に感じる底知れぬ奥深さ、畏怖と言ってもいいかもしれない、その感じはあの時佐藤まりなの瞳を見つめるたびに感じていたものと同じだ。

(この目だ。吸い込まれるようなこの感じ・・・だから俺は東京に戻っても彼女に連絡を取ろうとしなかったのかもしれない・・・)

飯塚聡はカメラをその女性に押し付けるように返すと曖昧に微笑んで、また手すりに腕を乗せて海の方へ顔を向けた。

「あ、ありがとうございました。」

「いいえ、お安い御用で。」

その女性はまだ何か言いたげだったが、振り向かずに声だけで返事を返した彼の様子を見て、どこか名残惜しそうにその場を立ち去った。

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海を見つめながら飯塚聡は何かもやもやとした気分になっていた。

あの瞳を見つめた時、何かを思い出しかけたのだ。

しかしそれが何だかわからない。

思い出せそうなのだが、あと少しのところで思い出せない。そのもやもやだ。

海面のうねりに重ねるようにあの瞳を思い浮かべていたが、やがて諦めた彼は船室へと戻った。

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到着までの時間を考える気にもならないくらい船旅はまだ始まったばかりであり、飯塚聡は壁に寄り掛かり、備え付けの毛布を足の上にかけて荷物から読みかけの文庫本を取り出した。

港を出る時に買ってきたお弁当を食べてお腹がいっぱいになると、軽い眠気が襲ってきた。

そして壁に寄り掛かったままうとうとしていると、船内放送を告げるチャイムで我に返った。

船内放送は、船の現在位置を御蔵島沖とし、潮流が思いのほか早く、竹芝到着は一時間ほど遅れる見込みだと告げていた。

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その船内放送を聞きながら、飯塚聡は半分寝ぼけた眼差しで前を見つめている。

その視線の先、彼の投げ出した両足の横に、日焼けした顔、ポニーテール、そしてジャージ姿の佐藤まりなが正座して彼を見つめ微笑んでいたのだ。

七年前の記憶そのままの佐藤まりなの姿、飯塚聡はそれが夢であることが当たり前だと言わんばかりにうっすらと微笑むと再び目を閉じた。

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◇◇◇◇

再び船内放送のチャイムで飯塚聡が目を覚ますと船内は白い蛍光灯の光で満たされていた。

もう夜になろうとしているようだ。

再び竹芝到着が一時間程遅れる見込みであることを告げている船内放送が流れる中、彼の目の前には、甲板で写真を撮ったワンピース姿の女性が、先ほどの佐藤まりなと全く同じように正座して彼を見つめていた。

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「おはようございます。よく眠っていましたね。」

時計を見ると午後六時を過ぎたところだ。

船内放送の通りだと、到着するまでまだ三時間ほどある。

「ああ、どうしたんですか?こんなところに座って。」

いつからそこに座っていたのかわからないが、それよりも飯塚聡には彼女がじっとそこに座って目を覚ますのを待っていた理由の方が気になった。

さっきは甲板であのように不愛想な態度を示したのだから、見知らぬ自分に懐いてくる理由がわからない。

「一緒に甲板を散歩したくて。まだ時間はたっぷりあるから一緒に行きませんか?」

そう言って見つめるその瞳を見返した飯塚聡は、その誘いを断れる気がしなかった。

「ええ、いいですよ。」

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甲板に出てみるとちょうど太陽が水平線に沈んで行くところだった。

「ねえ、もっと見晴らしのいい上の階のデッキへ行ってみましょうよ。」

彼女の後に従い階段を登って上のデッキに到着したのは、ちょうど太陽の光が、まるで明りを消すように水平線の向こうにふっと消えた瞬間だった。

階段から甲板に出た彼女は後ろをついて歩く飯塚聡を振り返った。

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スカートを海風になびかせて薄闇に立つ彼女の姿は白く浮き上がって見える。

「あそこにある一番先っぽに近いベンチに座りましょ。」

彼女はそう言って彼の手を取るとベンチまで連れて行き、そこへ並んで座った。

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正面に見える水平線は、太陽が沈んだばかりの場所にまだ白い線が残っているが、そこからうす紫、紫、濃紫と綺麗なグラデーションを織りなし、一番下の白い部分がどんどん小さくなっていく。

その様子を見ながら飯塚聡の頭の中にある言葉が思い浮かんだ。

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『逢魔ヶ時』

日没から完全に暗くなるまでの薄闇の時間帯を古来からこう呼んで、この世の者と異世界の者が出会う時間帯とされている。

もちろん昼間から顔を見ている、隣に座っている彼女が”魔”の者だと考える理由などない。

しかし、なぜか頭の中にそんな言葉が思い浮かんだのだ。

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それは飯塚聡の心の奥底から発せられた警告だったのかもしれない。

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気持ち良い海風が頬を撫でる。

空がどんどん色を失っていき、無数の星々がその黒く染まっていく空間に浮かび上がってくる幻想的な風景に見とれていると、突然飯塚聡の耳にきれいな歌声が聞こえてきた。

隣に座っている女性が歌い始めたのだ。

その曲は、佐藤まりなが、好きな曲だと言ってよく砂浜で歌って聞かせてくれていた『Desperado』という曲だ。

歌声も似ているような気がする。

彼女がなぜここでその曲を歌い出したのか彼女に尋ねようとしたが、ちょっと物悲しいメロディーと彼女の震えるような歌声をどうしても遮ることができず、彼女をじっと見つめたまま聞き入っていた。

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そしてその声を聞いているうちに、飯塚聡は忘れていた七年前の記憶が蘇った。

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◇◇◇◇

七年前、一か月を超える八丈島での滞在に区切りをつけ、東京へと向かうフェリーに乗り込んだ。

滞在中に女の子との出会いや浮いた話はなかったものの、桟橋には交流のあった何人もの島の人達や滞在中の旅行者が見送りに来てくれており、彼は涙を浮かべながら徐々に小さくなって行くその人達に手を振りお別れをした。

日が暮れ、あと数時間で竹芝桟橋に着くという頃、船室にいるのにいい加減飽きていた彼は窓の外に見える日没の風景に誘われて甲板に出た。

他に誰もいない甲板にひとり佇み、刻々と色が変わっていく水平線を見つめて楽しかった八丈島での生活、そして明日からの日常を心に思い浮かべて感傷に浸っていた時だった。

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いきなり背後からきれいな歌声が聞こえ始めた。

曲は『Desperado』。

昔、母親がカーペンターズによる楽曲をCDで聞いていたために飯塚聡は良く知っている曲であり、子供の頃はその歌詞の意味も解らないままに自分でもよく聴いていた。

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振り返るとそこには浅黄色のワンピースを着た髪の長いきれいな女性が立っており、物悲しい顔をして呟くように歌っていた。

薄闇に立つ二十代半ばくらいのその女性は、まだ二十歳を超えたばかりの彼には非常に妖艶に映った。

その女性は歌いながら徐々に彼に近づいてくる。

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その眼はじっと彼を見つめ、彼が振り向いても視線を外そうとはしない。

その物悲しい瞳は、広がってきた星空の下で深く底知れない輝きを放っており、その奥深さに彼は恐怖に似た感情が湧きあがってくるのを感じた。

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そして彼女は彼のすぐ目の前で歩みを止めたが、悲しそうな眼をしたまま歌い続けている。

甘い香りすら漂ってくるような距離だ。彼は思わず腕を伸ばして抱き寄せると、彼女の歌を遮って唇を重ねた。

歌が途絶え、彼女の腕が彼の背中に回って強く抱き返してきたのを感じた瞬間、彼は意識を失った。

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気がつくと、見知らぬ男性に揺り起こされていた。

「もう間もなく竹芝に着きますから、起きた方がいいですよ。」

ぼっとした意識で周りを見回すとそこは二等和室で、毛布を被って横になっていた。

飯塚聡は、そのワンピースの女性のことは夢だったのだと思い、船を降りる頃にはすっかり忘れていた。

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◇◇◇◇

しかし、それは夢ではなかったのだ。

あの時の女性によって飯塚聡には現実にはなかった新しい記憶が植え付けられた。

ありもしない佐藤まりなに関する記憶が・・・

そしてこの七年前を振り返る懐古の旅行の最後で、飯塚聡は再びあの時の女性に遭遇したのだ。

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飯塚聡は穏やかな顔で目の前で歌声に耳を傾け、女性の顔をじっと見つめている。

彼が思い浮かべているのは、七年前にこの甲板で出会ったこの女性なのか、まぼろしの佐藤まりなの記憶なのか。

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しかし彼は知っていなければならなかった。

海を進む船の上で美しい女性の歌声を聞いたら、どうにかしてその歌声を止めなければならないのだ。

彼は知らなかった。

彼女の歌声を最後まで聞いた男は、この世に存在していないことを。

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七年前、彼は図らずも自分の唇でその歌声を遮った。

その代わりに彼女は再び彼を、飯塚聡という獲物を呼び戻すためにあの記憶を植え付けたのだ。

そして彼はその記憶に導かれ、再びこの船に乗ってしまった。

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彼女は飯塚聡を見つめたまま歌い続ける。

“Before it’s too late. (手遅れになってしまう前に)”

『Desperado』のその最後のフレーズを聴いた時はもう手遅れ。

しかし、飯塚聡はやはり穏やかな表情でその最後のフレーズに耳を傾けていた。

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*************************

竹芝桟橋にさるびあ丸が到着し、次々と乗船客が下船してくる。

その中に飯塚聡の姿も、浅黄色のワンピースの女性の姿もなかった。

◇◇◇◇ FIN

Concrete
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