お土産と我が家の化け物屋敷

長編11
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お土産と我が家の化け物屋敷

S君たちの出版も無事に終わり次の撮影の準備に取り掛かるという

少しは休めばいいのにと思う

サラリーマンと違い売れた本が生活の糧だから仕方ないけれど

無茶すれば体調を崩す

今度のロケ地は静岡県だという

静岡県の少し山に入ったところにいいロケ地があるんだとか

山の中だから2人だと危険だということでオヤジと私・・・と3人娘が同行することになった

本当は3人娘を連れていく予定は無かったのだがどうしてもついていくというので仕方なし

撮影時間は1時間ほどで終わる予定

月の明かりを頼りに撮影するので1時間ほど

それと人里離れているので早めに切り上げるということになった

行く予定は来月の土曜日に決定した

土曜日の午前2時ごろを出発する予定

到着してから現地の状況と周辺がどうなっているか調べる

撮影時刻は午後8時から午後9時の間

月がちょうど真上あたりになり月の明かりで幻想的な雰囲気になるんだそうだ

土曜日になった

眠い目をこすりながら必要な荷物を車の中に入れた

準備が整い出発

後部座席で娘3人のおしゃべり、車中は賑やか

夜中なので車の流れはスムーズ

高速に入り途中で休憩をしながら静岡県へ

一旦コンビニで休憩をしてロケ地の場所へ

朝の8時過ぎに着いた

鳥のさえずりや虫の鳴き声

木々に囲まれ確かにロケ地としてはいいと思う

S君は周辺の探索を始めた

別に危険なところもない

大体の下調べを終えたのでコンビニへ寄り夕方まで休憩

私は疲れかたまっていたのか夕方まで寝てしまった

昼を抜かしたのでお腹がすいた

娘たちはきちんと昼食をとったという

オヤジと私はS君とF子の弁当分を買ってきた

夜も快晴

月が昇っている

月明りで結構明るい

やはり昼と夜とでは雰囲気が違う

木々に囲まれているので恐怖感が増している

S君とF子とオヤジがロケ地へ歩いて行った

私と3人娘は車の番

ロケ地は車から500メートル離れた開けた場所

先の方で明かりがチラチラと見えた

いよいよ撮影開始だな

3人娘のおしゃべりで車中は賑やかでホッとする

「パパ・・・車の中、飽きてきた・・・外へ出るね」

「パパから見える範囲内ならいいよ」

娘たちは車の前で深呼吸したりしていた

「そこならいいよ、あまり離れたらいけないよ」

「うん!!わかってるよ」

20分ほど外にいて車の中へ戻ってきた

「パパ・・・っここら辺・・・暗いよね・・・ちょっと怖い」

「眠いんだぞ」

「寝てもいいよ・・・」

撮影が終わったようだ

S君たちがこっちへ来てる

「やっと終わったよ・・・さてと・・・忘れ物は無いかな」

「アニキ・・・いいロケ地だったね」

「だろ!!!教えてもらったんだよ・・・」

はて?・・・なにかひとつ足りないものがあるような・・・・

「あれ!オヤジは?」

「え!?・・・おやっさん・・・」

「パパがいない・・・後ろからてっきりついてきてるのかと思ってた」

オヤジがいない・・・嫌なことが的中した

必ずオヤジがいるとトラブル

「とりあえずは車にいてほしい、探してくるから」

「OK、気をつけてな」

ロケ地へ行ってみた

いない

どこへ行ったんだ

捜すといっても周りは藪や木々ばかり

オヤジの名前を大きな声で叫びながら辺りを回った

周りは真っ暗闇

オヤジの名前を何度も叫んだ

返事が無い

「おーーい、せがれ!!」

え?オヤジの声?

「こっちこっち!!」

暗闇から人影か・・・

「せがれ・・すまんな・・・ちょっとな用を出しに奥へ・・・そしたら・・・迷子になった・・・せがれの声がしたんで・・・良かった・・・」

「おいおい・・・びっくりさせるなよ・・・みんな、心配してるぞ・・・帰ろ」

「すまん、すまん・・・」

「あ!!パパだ!!!じいちゃも」

「おやっさん!良かった」

「もうパパ、心配しちゃったよ」

「すまん・・・」

オヤジも無事に帰ってきた

長居は無用だ

早々にその場から離れた

無事に家に到着

「今日はちょっと強引だったな・・・疲れが出てきたよ」

「少し遠いもんね・・・パパたち、ありがとう!!」

「今日はもう遅いからここで泊って行けよ」

「そうだな・・・F子、そうしよう」

「そうする」

「おっちーー!!無事に帰ってきたんだぞ、良かったんだぞ」

「ママ!!じいちゃん無事に帰ってきたよ」

「俺は少し酒を飲むよ」

「Sちゃん、一緒に飲もう」

「おやっさん!大丈夫かい?」

「大丈夫!、家だからな、どんどん飲もう」

リビングで酒盛りがはじまった・・・

「さぁさ・・・娘たちはパパと一緒に仏間へ行こう」

「うん!」

3人娘と仏間へ

「もう遅いから寝るんだよ」

「うん!!パパ、仏間にいてほしい」

「リビングはうるさいね」

「仕方ないよ・・疲れたろ・・」

「疲れたんだぞ!眠いんだぞ」

文句を言いつつ寝てしまった

「パパ…起きて」

楓が耳元で囁いた

「どうした?」

「今さっきから廊下を誰かが歩いてる音がするんだけど?」

「え?・・・オヤジかS君じゃないの?」

「ううん・・・違うと思う・・・」

「楓、聞こえないよ」

「今はね・・・」

「え・・・確かに今、音がしたな」

「でしょ・・・お兄ちゃんたちかなと思ったけど・・・それも違うような気がする・・・」

たしかに廊下を歩いている足音がする

それも行ったり来たりとしてる感じだ

家族じゃない

一体誰だ?

「パパ・・・廊下を見てほしい」

「え・・・いや・・・パパも・・・怖い」

「でも・・・」

「仕方ない・・・」

私は勇気を振り絞って廊下を見た

誰もいない・・・足音もやんだ

リビングの方を見た

シーンとして静かだ

もう寝てるようだ

「誰もいないよ・・楓」

「え・・いないの?・・・でも足音は聞こえたよ」

「うん・・・」

それ以降、足音は聞こえなかった

朝が来た

リビングの方は騒がしかった

「うるさいな・・・」

リビングへ行った

朝食の準備をしていた

「おい!!せがれよ、昨日・・廊下を行ったり来たりしてたろ?」

「?・・いや・・・仏間にずっといたよ」

「じゃあ・・・匠ちゃんたちか?」

「じいちゃ・・・2階にずっといたし寝てたよ」

「じゃあ、誰だよ?・・・」

「じいちゃ・・・も・・聞こえてたんだ・・・」

「一体あの足音は誰だ?・・・」

「さぁさ・・・早くお食べ・・・遅刻するよ」

S君とF子は朝食を食べた後に帰って行った

どうも夜中のことが気になって・・・残業があったのだが早々に家に帰った

「オヤジよ・・・夜中の足音な・・・家族じゃないと思うぞ」

「俺もそう思う・・・家族のそれぞれの歩く癖は全部知ってるからな・・・それとな・・

なんかこの家・・・空気重くないか?」

「え・・・空気が重い?・・・わからん」

「家に入る時にな・・・なんか重い空気の風が顔に当たったような気がしたんだよ・・

それにな・・・実はな・・・用を足しに・・・行ったときにな・・人の気配を感じたんだよ・・・こんな場所に・・人はいないはず・・と思って・・とりあえずは戻ろうとしたんだけど・・・迷子状態になった・・・辺りは真っ暗で方向が全然わからん・・・

あちこち歩き回っていたら人の声がした・・・せがれか・・・良かった・・・という感じだよ・・・」

「お、お、オヤジ・・・憑れてきたかも・・・」

「う・・・でも・・・まさか・・」

「いや、間違いないぞ・・・憑いてきて家に着いたら離れて行ったんだろうな」

「いや・・結界がある・・・入れるわけがない・・・なんかおかしい・・・」

「オヤジが人の気配を感じだと言ってたろ・・そいつじゃないかな・・・」

「いや・・違う・・・家の周囲と家の中は結界がある

霊たちは入れない・・・まぁ・・・霊道・・・・でもよ・・・何か違うんだよな」

霊道は結界が張れない

だから霊たちは霊道を行ったり来たりしている

そこから外れることはないはずだ

1日が終わるが早い

会社から帰宅し夕食を食べてソファでくつろいでいた

3人娘たちは仏間でオヤジと一緒にラジオを聞いていた

私はソファでTVを見て疲れが出てきたのかウトウトとしはじめた

台所ではおふくろたち女子たちが片づけをしていた

話声や笑う声で少しうるさい

「F・・もう私たちは寝るよ」とおふくろが声をかけてきた

「パパ!寝るんだぞ!パパも早く寝ないとダメなんだぞ」

「おやすみなさい」とカナちゃんママもリビングから出て行った

今、リビングは私一人だけになった

一気に静けさが支配した

時計を見たらもう午後11時過ぎ

外もだいぶ静かになった

午前0時ごろには最終電車も終わるから更に静かになる

眠い・・・

タンタン

今の音は何だ?

廊下じゃない

書斎室から聞こえたような気がした

もちろん誰もいないはずだ

私は急いで書斎室へ行った

勿論電灯は点いていない

明かりを点けてあたりを見たがなにも変わった様子はない

PCの電源は落としてある

PCの前に座った

電源を入れようか迷ったか電源を入れた

眠気が無くなってしまった

YOUTUBEの音楽を聴いたりネットを巡回したりして時間を潰した

2階から誰かが下りてくる足音がした

匠か仁かな・・・

書斎室の隣を抜けていったような気がした

トイレか・・・・

さてと・・・眠くなってきた

ここで寝ようか・・・

狭いけど寝れなくはない

はて・・・トイレにしては長すぎる

もうそろそろトイレから帰ってきてもおかしくはない

もう20分は過ぎてる

私は気になりトイレへ行った

ノックをしたが返事はない

ソッと開けた

誰もいない!

え・・・あの足音は誰だ?

まさか・・・オヤジが憑れてきたものか・・・

慌ててトイレから出て廊下に出た

え!!

何となく浴室の隅に人影が動いたような気がした

気のせいかな・・・・

そのまま仏間へ行った

オヤジは一人でラジオを聞いていた

「お・・・どうした?」

「いや・・別に・・・あのさ・・・ずっと起きてた?」

「あぁ・・起きてたよ・・・」

「今さっき・・廊下から足音がしたんでてっきり匠か仁かと思っていたけど違ったみたいだ・・」

「確かに廊下から足音は聞こえてたぞ・・・俺もな、孫かなと思っていた・・違ってたか」

「えええ・・・いったい誰だ?」

「わからん・・・昨日といい今日といい・・・やはり・・・憑いてきたかな」

「ありえるな」

「それとな・・トイレの確認をして出たときに浴室の方で人影が動いたような気がして・・それで仏間に来たよ」

「そっか・・・まぁ、仏間にいれば結界が張ってあるから安心だぞ、ここで寝ろ」

「そうする」

「パパ・・・ちょっと」と楓がむっくりと起きた

「どうした?」

「今さっきから・・・廊下の方・・足音がして寝れないよ」

「え・・足音?いや・・聞こえないよ」

「今も聞こえてるよ、パパ」

「いや聞こえてないけどな」

「じいちゃんは?」

「俺もだ・・・」

「パパ、廊下を見てきて」

「う・・え・・仕方ない」

私はちょっと怖くなってる

仏間から廊下を覗くように見た

廊下は100円ショップのLEDで明るくなってる

玄関先をよく見たけれど誰もいない

「楓、誰もいないよ」

「え・・・でも・・・聞こえてたよ」

「楓姉ちゃん・・どうしたんだぞ?」と葵まで起きてしまった

「葵、何でもないよ、寝た方がいいよ」

「うん・・・」

「おかしいな・・・パパ、玄関まで行ってカギが閉まってるかどうか確認してきて」

「え!嫌だよ・・・」

しぶしぶ玄関へ行った

「あれ・・・鍵が閉まってないぞ」

私は慌てて仏間へ戻った

「鍵が閉まってなかった」

「おい!鍵を閉めるのを忘れたんじゃないか」

「いや、S子は寝る前に必ず鍵を閉めてから寝るよ」

「というか・・女子たちは大丈夫か?」

おふくろを起こした

「なに・・・鍵を閉め忘れてるって・・・ちょっとまってね」

おふくろはさっと起きて寝室へS子を見に行った

それと旅館の間のカナちゃんママもいるかどうか

おふくろが戻ってきた

「2人ともいたよ・・・鍵を閉め忘れたんだよ」

ガラガラガラ

「うわ・・・玄関の戸が開いたぞ…しまった、鍵を閉めるの忘れた」

「馬鹿だろ・・・」

しばらく様子を見た

廊下を歩く足音がしない

「オヤジ・・・誰も来ないぞ・・・」

「せがれ・・・2階の方、大丈夫か?」

「おそらくいいとおもうけど・・・電話するか」

2階にある卓上電話にかけた

2階から電話のコール音が鳴った

「眠い・・・誰?・・・パパ?どうしたのさ?」

「2人ともいるよな?」

「いるよ・・・眠いから切るね」

ホッとした

「いるってさ・・・」

「そっか・・・」

突然、お風呂場からシャワーの水音がした

「え・・・オヤジ、お風呂場からシャワーの音がしたぞ」

「聞こえた・・・」

「私も聞こえたよ、あんた、見に行っておくれ」

おふくろがオヤジに見に行って来いと目で合図をした

オヤジはしぶしぶお風呂場へ

「誰もいなかったし、お風呂場、濡れてなかったぞ、どうなってるんだよ」

楓が急に起き上がり

「パパたち、今さっきから廊下の足音がして寝れないよ」

「パパは聞こえないよ」

「今さっき、オヤジがお風呂場へ行ったからその足音かな」

「じいちゃがお風呂へ入りに行ったんじゃないの?」

「いや、お風呂場からシャワーの音がしたんでオヤジが見に行ったんだよ」

「そうなの?・・・おかしいな・・・ママやカナちゃんのママかな?」

「ううん、今さっき私が見てきたからね、違うよ、それに2人はもうお風呂入ったし」

こんな夜中に家族はお風呂へは入らない

入るとしたら私かS君かオヤジだけだ

確かに100円LEDで明るくなったとはいえ夜中のお風呂場は怖いから

夜中だから辺りが静かしすぎるためにいろいろな音が聞こえてくる

それがお風呂場の音響効果でよく響いて聞こえる

特に風が強い夜は怖い

おそらく自分の家の中でお風呂場が怖いという家は私の所だけだと思う

以前にも書いたけれど100円LEDが無い時は本当にお風呂場や洗濯場は真っ暗で

わざわざ明かりを点けていた

背後が本当に怖かった

また辺りが何となく静まり返ったような気がした

家の周りはもう一軒も建っていない

国道はたまに車が通るだけ

人の足音は全然聞こえてこない

「私はもう寝るね、F、あんたも寝なさいよ」とおふくろは眠そうな顔をして廊下辺りを見て布団をかぶった

オヤジがキョロキョロとしている

「なんかな・・・なんか気配を感じるぜ、なんだろうな・・・」

私はふいに窓を見た

ギョッ!

誰かが覗いてる

オヤジも気がついた

「ウッ…こりゃ・・あかん奴だ」

窓の顔は明らかに部屋の様子を見ていた

目が大きく開いていてキョロキョロと動いていた

私たちが見えないのかな

目線が合わない

「せがれ、あいつの目を見るなよ」と小声で言ってきた

オヤジは静かに窓の方へ行った

そして、そいつの目に指で刺した

ものすごい形相となって消えていった

「ふっ・・・化け物め、あいつかな、ロケ地から憑いてきたのは、一応目つぶしをしてやったから当分は出てこんだろ」

2階の屋根を走っていく音がした

「オヤジ・・・」

「あ・・・逃げていったか・・・もう2度と来んだろ」

Concrete
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