3人娘たちをわんわん動物園へ連れて行った
娘たちの喜びようはすごかった
「パパ、犬か猫を飼いたい」と楓が言い出した
「いや、うちは無理だからね」
「どうして!!!きちんと面等見るよ」
「面等を見る見ないの問題じゃないんだよ」
「じゃあ何で?」
「それは・・・」
返事に窮した
決して動物嫌いではない
問題はこの家自体なのだ
この化け物屋敷が問題
あれは自分たちが幼少の時だ
F子と一緒に公園で遊んで帰るときに道端に段ボールが捨ててあった
その中に生まれて間もない赤ちゃん猫がいた
「兄ちゃん・・・かわいそうだよ」とF子が小声で私に声をかけてきた
「そうだよな・・・」
いろいろと考えた
最終的には連れて帰った
オヤジとおふくろは別段反対はしなかった
オヤジが動物病院へ連れていき検査をした
いろいろと病気が見つかったが薬で治療できるといわれた
子猫は徐々に元気になっていった
F子はお友達としてすごくかわいがっていた
一緒に寝てもした
子猫の育ちが早くてすぐに大きくなった
そして・・・
この猫の特徴なのかどうか知らないけれど「言葉」を理解してるような節があった
F子が病気になる前に猫がすごく鳴いていた
オヤジは「うるさい」と猫を蹴り飛ばした
それでもF子のそばに寄って鳴いていた
そのあくる日にF子の様態が悪くなった
私が猫に「病気がわかったの?」と話しかけたら猫が頭を上下にさせた
まるで「うん、そうだよ」という仕草だった
それを見てゾッとした
偶然で頭を上下したのかと自分で言い聞かせた
F子が「違うでしょ、ここの場所へ行くんだよ」と指示すると「ニャーー」と言いながらその場所へ行った
また、「ねぇ・・この前、私の大切なものどこかへ落としちゃったの、その落とした場所わかる?」と聞いたら「ニャーー」と言いながらF子を誘う仕草をしながら落とした場所へ連れていき落し物が見つかった
「すごい!!!あれ・・・言葉分かるの?」と聞いたら「ニャーー」と鳴き頭を上下にさせた
これを見たオヤジが「おい!!!!猫!!!おまえ、何者だ!」と叫んだら猫がシャッーーと威嚇のボーズをした
「おまえ・・猫じゃないだろ!」と言うとなぜか床に体を押し付けて聞いていないふりをした
普通の猫の仕草をしていた
オヤジは何かしらを感じたかもしれないと思った
私も徐々にこの猫の動作が気になり始めた
猫の特徴である1点に集中して何かを見ているという現象を何度も見た
2階の廊下で壁に向かってジッと見ていた
かとおもうと何かを追いかけるような感じで見ていた時もあった
廊下は霊道だから霊が通っていくのを見ていたのかなと
オヤジもこの猫の正体を知りたがっていた
「おかしいな・・あの猫・・・普通の猫じゃないぞ」とおふくろと話してた
その時の猫は耳を立てて聞き耳をしているような感じだった
おふくろは「気のせいでしょ」と気にしていない様子
私もこの時の様子を見てこの猫は普通の猫じゃないと思った
「おい!!!猫、本当に言葉がわかるなら3日間どこかへ行けよ」と猫に話しかけた
ジッと猫はオヤジの顔を見ていた
それから確かに3日間猫は家にいなかった
どこを探しても見つからなかった
F子が大泣きをしたな
4日後に猫は玄関で座っていた
これを見たオヤジは驚いていた
「お前、本当に何者だよ」と吐き捨てた
その夜にオヤジがうなされていた
((猫!!!貴様!!!ううううう))と何かと話していたらしい苦しそうなオヤジを見ておふくろがあわてて起こしてた
「ハァハァ・・・あの化け猫!!!どこいった!!!」と大声で叫んだ
「大丈夫、あんた」とおふくろはオヤジの背中をさすっていた
ふと部屋の隅を見ると猫が目を光らせながらこっちを見ていた
背中に冷たいものが走った
「猫!!!よくもまぁ・・・この家をお化け屋敷といいやがったな、くそっ!!!
出ていけ!!!」と叫んだ
猫は頭を下げて・・・家から出て行った
一週間ほど近所を探し回った
F子の落胆が大きくてF子の持病がさらに悪化した
これにはオヤジも「言い過ぎたかもしれん」と反省をしていた
私が「父ちゃん・・あの猫・・・F子を守るためにいたんじゃないの?」と聞いた
「あ・・・・そうかもしれん・・」
それから3年後・・・あの猫が玄関に座っていた
F子が見つけた
「もしかして・・・あなたなの・・・どこ行ってたの?」とF子が話しかけた
ヨロヨロとF子のそばに寄って倒れてしまった
衰弱していた
それから一週間後に息を引き取った
オヤジは目に涙を浮かべていた
「言い過ぎた・・ごめん・・・お前はF子を守るために神様が寄こしたんだよな・・・本当にすまん・・・許してくれ」と猫を抱いて近所の川の土手に猫を埋葬した
F子は大泣きをしてオヤジにしがみついていた
「もう二度と我が家では動物を飼わん」とオヤジははっきりと言った
この出来事を3人娘に言った
「パパ・・・・その猫、かわいそう・・・F子姉ちゃんを絶対に守っていたよ・・・
いろいろな悪霊がその猫に悪さしていたんだよ・・・この家は化け物屋敷だから・・いい霊もいれば悪い霊も来る・・・じいちゃ・・・もっと早く気づけばよかったのに・・・
わかった・・・動物は飼わないよ」
3人娘たちはお互いの顔を見て「飼わない方がいいよね」と話していた
作者名無しの幽霊
本当に不思議な猫だった
人間の言葉を理解してるかのような振る舞いを何度も観た
猫がいる間はF子は本当に元気だった
猫がいなくなりF子の病気はどんどんひどくなった
霊媒体質のF子は悪霊たちの格好の標的だった
そう言えば・・猫に名前を付けたのか・・・猫の名前を思い出せない
F子にも聞いたが「あ・・そういえば・・・名前を付けたかな・・・単に「猫」と呼んでた気がするけど・・・」と首をかしげていた
毎年猫の死んだ日に土手へ行って手を合わせている
今年中にはこの猫の亡骸を和尚様の寺へ移そうと計画している
そう「楓」の隣へね
和尚様もこの話を聞いて了解してくれた
この計画は私とオヤジと和尚様だけ
どうしても「楓」の墓があるからね
「楓」も喜んでくれると思う
猫というか動物を飼いたがっていたから
あの世で世話をしてほしいなと願ってる
動物はちゃんと人間を見ている
かわいがってくれたら必ず恩を返す
昨今の動物の虐待の話を聞くと腹が立つ