中編3
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学校帰りの病院

中学1年の秋。学校帰りに病院に寄りました。

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薬だけもらう予定だったので、すぐに戻れると思い、バッグを自転車のカゴに入れたまま、財布だけ持って病院に行きました。

マジックミラーの様になっている入口の大きな自動ドアに自身を映し、自転車で乱れた髪型を直します。

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受付に行き「薬をもらいに来ました」と言うと「順番にお待ちください」との事。

椅子に座って待つも、なかなか呼ばれません。バッグが不安になり、取りに行こうと思ったのですが、混み合っていて、一度席を立ったら座る所が無くなるので「すぐ呼ばれるだろう」と、そのまま待ちました。

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それから3分後ぐらいに呼ばれ、薬をもらいました。

割と早かったな…と思い出口に行きました。

マジックミラーなので、こちらから外が見えます。

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すると、僕の自転車のバッグを必死にあさっているおばさんがいたのです!

髪型はボサボサ。服装も季節に合っていなく、何より形相が必死で、怖くてすくみ外に出られません。

幸い財布は手元にあるので、金目のものはありません。

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病院に来る前に買ったお菓子を出して自分のバッグに入れています。

「あぁ。食べたかったな。物盗りなのかな。早くどっか行かないかな」

買ったばっかの週刊マンガ雑誌も盗られました。

「あぁ!もうっ…」

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次に筆箱を取り出し、中身を確認して自分のバッグに入れます。

「あー…お気に入りのペンが…。もう!」

教科書、体操着などは、一度拡げて確認しますが、興味ないのか、僕のバッグに戻します。

「もう何も無いよ。早く帰って…」

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その時、奥から生徒手帳を引っ張り出し、開き始めました。

「あ!ヤバ!」

怖いけど出て行かなきゃ!と思った瞬間、教科書や体操着よりも興味なさそうにすぐ戻しました。

「あぁ。良かった」

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そして僕のバッグのジッパーを閉め始めました。

「終わった…。もう…。早く帰れ!」

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閉め終わってもそこに立ってボーっと斜め上を見ています。

「何…?」

そして急に視線を移すと、マジックミラーで見えないはずの僕と目が合いました。

「ヒェッ…。なに?」

数秒見つめ合った後、満面の笑みを見せました。

「うわぁっ!見えてるの?」

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すると受診後の別の患者さんが、帰るために出口に来ました。

大きな自動ドアが開くと、おばさんは悪びれもなく立ち去っていきました。

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見えなくなったので僕も出て自転車に乗りました。

そこから、さっきまで僕の居た病院内の玄関を見てみましたが、外の景色が映るばかりで、内側は全く見えませんでした。

「良かった。偶然目が合っていた様に見えてただけか…」

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モヤモヤしたまま、急いで帰途に付きます。

「怖い…。なんだったの…?」

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家に帰り、食べたかったお菓子も読みたかったマンガも無く、がっかりしていると「体育あったんでしょ。洗濯出しときなさい」とお母さん。

はーい…とバッグを開けたら、見知らぬ冊子が入っていました。

「なんだこれ…」

何世代か前の乗用車の古いカタログでした。

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気になってバッグの中を確認したら、他にもいろいろ出てきました…。

知らない喫茶店のコーヒーチケット、松ぼっくり、新品未開封のカセットテープ、知らないアジア系俳優のブロマイド…。

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おばさんは、僕のバッグにそれらを入れてから、僕の持ち物をあさった様です。

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微妙に古く、それぞれ関連性もなく、僕には全く必要ないものばかりでした。

訳も判らず、気持ち悪く、心の整理が付きません。

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マンガやお菓子などを盗った事への対価だったのか、ただの嫌がらせなのか、読み解いたら何か関連性があったのか、それとも僕と判った上で、僕に対しての何らかのメッセージだったのか…。

今となっては判りません。

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まとめて袋に入れ、次の日学校の焼却炉で燃やしました。

それ以来、病院でも他の場所でも、そのおばさんを見る事はありませんでした。

Concrete
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@おーいお茶 さま

いやぁ…。ヘンな人を目の前にすると、勇気が出ないんですよね。
いつもありがとうございます。

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そおゆう場合はしばきましょ!w
中1なら許されますてw
僕も公園で遊んでて
エホバのおばちゃんの常套手段の近寄り方(親の詳細番号仕事)には子供ながらえっ?って思いました!

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