大学時代の友人のNと共に、大学そばをぶらついていた。
久しぶりの昔馴染みとの気の置けない話に心躍る。
気づけば、昔よく訪れていた喫茶店の前を歩いていた。
「久しぶりに寄らないか?」
「ああ、いいよ」
カランカランと鈴の音を立てながら店内に入る
「あら 久しぶりですね どうぞこちらに」
壁を目前にしたカウンターに通される。
「普通の卓も空いているだろうに」
俺はぶつくさ言いながら卓に掛ける。
Nとあれこれしゃべるが、さっぱりメニューが置かれない。
なぜだろうか
Nは、ちらりと厨房を振り返った。
「ああ、そらそうだ」
「なに?」
「さっきの店員以外、みんなマネキンだ」
俺も振り向く
先程の店員が、卓に座る無言のマネキンに注文を取っていた。
Nが手を挙げて店員を呼ぶ。
すると店員は申し訳なさそうに、こちらにトテトテ歩いてくる
「すみません お待たせしました」
Nが応える
「いいって。いまひとりでまわしてるのかい?」
途端に店員が冷たい目でこちらを見る
「物知り顔は死相の顔よ
それにあなたとてマネキンみたいなものよ
役目が立てればあなたがマネキンでも誰も構わないのよ」
・・・なにやら厄介だなぁ
・・・俺はハイビスカスの茶が飲みたいのだがなぁ
Nの顔を覗くと、それはマネキンであった。
俺はいつからコレを友人だと思っていたのか。
まぁ、いいんだ。
俺が友人だと認識すれば事が足りるんだ。
だから旧友がマネキンでもいいんだ。
・・・気づけば俺は廃墟の店に独りいた。
店の真ん中には大きな鏡が据えられている。
はたして俺が鏡を覗いたら、そこにもマネキンが映るのだろうか。
俺にも役目があるのだろうか。
導かれるように鏡の前に立つ。
しかしそこにはマネキンではなく、大学時代に片想いをしつづけた女性が映っていた。
俺はただ鏡に見惚れていた。
その鏡の中の女は、穏やかに俺に微笑むでもなく、
「あなたは〇〇が出来てないから駄目なんだ」
と、
ひたすらに俺の欠点を面罵しつづけた
いつまでも
いつまでも・・・
作者退会会員
夢の中で、自分と出くわすことってそうそう無いですよね。
あるとしたら、結構メンタルやられているときなんでしょうね。
そんなときは寝るが一番ですね。