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短編2
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白い雪、黒い夢

これは私、渡可部務(わたかべ・つとむ)の体験した変な話だ。

勤務先で、私は異性の同僚にネチネチ暴言を吐かれた為、そいつの鼻をグイと左手でつかんで、右手で左の頬を張ってしまい、騒ぎになってしまった。

上層部に説明する為、重たい足取りと自分だけが取り残された様な足音だけが、私の耳に響く。

御偉いさん一人、暴言を吐きながら被害者の顔をしたそいつが居て、説明を始めようとしたが………

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気が付くと、私は自宅の布団に横になっており、いやに外が明るいのでカーテンを開けると、一面銀世界………雪が降っていたのである。

いやに底冷えがすると思ったら、雪か………

ふと見上げると、置かれていた市松人形が一瞬、夢の中で私に暴言を吐いて来た異性の同僚にそっくりに見えて、私は気味が悪くなり、二度見する。

………いつもの市松人形の顔に戻っていた。

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ニュースを観ながら朝食を摂っていて、私は違和感を覚える。

そう言えば、私に暴言を吐いた同僚の顔は明らかに勤務先にすら居ない顔で、むしろ面識が無かった。

『次のニュースです。詐欺罪で逮捕されて、拘置所に勾留されていた容疑者が、新型ウイルスのクラスターで死亡したと、警察より発表が有り………』

「?!」

………夢で暴言を吐いて来た、あの異性の同僚と瓜二つの顔が、画面に現れた。

ゾワゾワゾワと、嫌なものが背筋を張っている感覚になった私は、朝食を済ませて、TVの電源を落として玄関に向かう。

暴力は振るっちゃ行けないが、詐欺で騙くらかした容疑者が何と無く腹立たしかった感情が有ったのも事実なので、或る種の悪夢で済んだ事に、私は安堵の吐息を漏らす。

Concrete
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