「帰ってきてやったぞ」
「あ!!じいちゃんだ」
3人娘たちは玄関まで走ってオヤジを迎えた
「疲れた・・・」
「じいちゃ・・大丈夫?」
葵の手に引っ張られてリビングへ来た
「ふぅ・・・」
「せがれ・・・今さっきな・・・知り合いのタクシーの運転手に乗せてもらって帰ってきたよ・・・いやぁ・・・」
と顔を下に向けてしまった
「どうした?」
「いや・・・あのな・・・その運転手の同僚とやらが・・・」
どうやらオヤジはその知り合いの運転手から奇怪な話を聞いたようだ
「その運転手の同僚な・・・今、行方不明になってる・・・」
「え・・・行方不明?何で?」
「そのな・・・夕食を食べた後に話す」
夕食が終わり3人娘たちと仏間へ行った
オヤジはラジオで落語を聞いていた
「じいちゃ!!」
「せがれ・・・娘っ子たちも・・・今日なじいちゃん、知り合いのタクシーの運転手から不思議な話を聞いたから教えてやるぞ」
「うん!」
オヤジの話によると
その知り合いの運転手の同僚は半年前にあるお客さんを乗せた
その同僚もよく知っているお客さん
というか常連さんだな
午前1時ごろにその常連さんの家からお呼びがかかってきてその家へ向かった
いつものように挨拶をしてそのお客さんを乗せてある場所へ
「オヤジ・・そのある場所ってどこだ?」
「まぁ・・・びっくりするぞ・・・お寺だ」
「え?寺?そんな真夜中にか?」
「そう」
いつまで経ってもお客さんが戻ってこない
2時間ほど待ってタクシー会社へ事情を話をして帰った
もちろんきちんとお金はもらっていた
その次週にもそのお客さんから電話があり家へ行った
いつものように挨拶をしてお寺へ
例の如くお客さんは戻ってこなかった
またその次週・・・
ふと思った・・・今日は何曜日だ?・・・日曜日か・・・先週は・・・月曜日
その前の週は・・・月曜日・・・・
え・・・月曜日の午前1時・・・
それも待って待っても戻ってこない・・・
ちょいまち・・・明日は月曜日だ・・・まさか・・午前1時ごろに・・・
案の定・・・月曜日の午前1時ごろに電話がかかってきた
気になっていたのでお客さんに理由を聞いてみた
しかし、お客さんは黙ったまま
やはり・・・待っても戻ってこなかった・・・・
こうも毎週毎週・・・待たされるのはごめんだと思い
休みの日にそのお客さんの家に行ってみた
チャイムを鳴らした
奥様らしい女性が出てきた
その同僚は毎週毎週夜中に呼び出されて待たされていると奥さんに話をした
奥さんはびっくりした顔になった
「あのぉ・・・主人は・・・もう半年前に交通事故で亡くなっています・・」
「え!!・・・いや・・・たしかにご主人様を夜中に呼び出されて乗せていました・・」
「あ・・そういうことだったんですか・・・」
奥様の話だと
家の前にタクシーが夜中によく止まっていた
はじめは近所の人が呼んだのかと思っていたらしい
しかし・・・毎週月曜日の午前1時15分ごろにタクシーが家の前で止まる
段々とおかしいなと思っていたらそのタクシーの運転手が家に来た
その奥さんも理由を聞きたかったらしい
奥様に付き添われて家の中に入った
居間には遺影が置いてあった
よく見ると・・・たしかにお客さんだった
もうびっくり
同僚は手を合わせて家を出た
「じいちゃ・・・もしかして・・・幽霊を乗せていたの?」
「そういうことになる・・・」
「おいおい・・・・マジかよ・・・」
「じいちゃ、怖いんだぞ」
「カナ・・・も」
「オヤジ・・・それだけ?そんなんじゃ我が家のこの化け物屋敷より早々に怖くはないぞ・・娘たちは怯えてるけど・・・」
「俺も・・・そんなもんはこの化け物屋敷に住んでるから聞いても怖くはなかったよ・・
」
「だろ・・・でも帰ってきたらすごい疲れた顔をしてたぞ、おふくろに叱れたか?」
「いや・・・そのな・・・いいにくいな・・・まぁ・・・」
オヤジは日曜日の夕方に家を出て商店街にあるバーで一人飲んでいた
そこに知り合いのタクシーの運転手がやってきた
オヤジの顔を見るなり話しに花が咲いた
オヤジもだいぶ飲んで酔いがまわっていた
時間も午前1時前になった
オヤジは帰ろうとしたときにこの幽霊話を聞かされた
オヤジは立ち上がった時にフラッとして座り込んでしまった
慌てて運転手が立ち上げてくれた
オヤジはタクシーを呼ぼうとしていた
「おいおい・・・目の前に俺がいるぞ」とタクシーの運転手はオヤジに言った
「あぁ・・そ・・だったな・・・頼むわ」
「ちょいまち・・・オヤジ・・・その運転手も酒を飲んだんだろ・・・大丈夫なのかよ」
「あぁ・・・大丈夫だよ・・・・ソイツ・・・もうこの世の者じゃなかったからよ」
「え?・・・・」
「そういうことだよ、せがれ」
「えええええ・・・・オヤジ・・・・「そういうことだよ」って・・・」
「俺・・・寺からよ・・・歩いて帰ってきたんだよ・・・」
「え?寺?・・・」
どうやらオヤジはその幽霊のタクシーに乗せられて例のお寺まで連れていかれたらしい
目が覚めて辺りを見たオヤジはもう自分がどこにいるか分からずにとりあえずは道路沿いに歩きだした
どうにか町が見えてきたのでどうにかこうにか歩いて我が家まで帰ってきた
「オヤジ・・・その寺の場所はわかるのか?」
「いや・・・もうな・・帰ることで精いっぱいでどこをどう歩いたのかわからん」
「そっか・・・」
「パパ・・・じいちゃ・・・じいちゃの後ろにいる人がそのタクシーのおじさんなの?」
「え?」
「ええ?」
一瞬でその場は凍り付いてしまった
楓のその発言で葵とカナちゃんはパニックになって泣き出した
オヤジ・・・とんでもないものを連れてきたな
作者名無しの幽霊
いやはや・・・
楓の何気ない発言でその場が凍り付いてしまった
相当オヤジは疲れていたんだと思う
まぁ・・・幸い・・・その幽霊は消えていったけれど・・・
オヤジも年を取ったな・・・
幽霊を見分けることができないとはな