中編4
  • 表示切替
  • 使い方

老人の話

「ごめんください・・・・」

人の声がした

私は慌てて玄関へ行った

「あのぉ・・・どなたでしょうか?」

「町内会の用事で・・・」

「あ・・はいはい」

国道を挟んでの向かいの町内会長のJさんだ

うちの町内は家が私のところだけになってしまった

それを見かねて隣の町内から声をかけてくれた

今月はうちの当番だ

本当は8月15日にお願いされていたのだが8月15日は和尚様のところへ行くので断った

その代わりに7月15日になった

いつも葵やカナちゃんたちが遊んでいる公園の隅に公民館がある

朝8時から翌日の朝8時までの24時間をその公民館で寝泊まりする

これは交代制で毎月15日になっている

その当番の家族なら誰でもいい

しかし、子供の場合は必ず親が同伴することになっている

その連絡をしにJさんは来たのだ

正直忘れていた・・・

明日が15日

今日の夕食時にメンバーを選ばないと

留守番にはS君に頼んである

もちろんF子と一緒に

主要なメンバーはほぼ決まっている

私とオヤジと3人娘

はじめは息子たちも参加していたけれど「つまらない」という理由で断ってきている

オヤジに声をかけた

「あ・・忘れてた・・・明日か・・・メンドくせーな」

「仕方ないよ・・・町内会の催しだから・・・」

「しかし・・・あんなところに24時間も泊まる理由は何だ?

何もすることないぞ・・・つまらん・・・」

たしかに・・つまらん・・・何もすることがない

どんな理由で24時間もいないといけないんだろ

次の日

当番の日

朝早く起きて支度をして

オヤジと3人娘と一緒に公民館へ

Jさんがもう来ていた

私はなぜ24時間もいないといけないのかを聞いてみた

「ああ・・・まぁ・・・確かに疑問を持ちますよね・・・・

オヤジ殿はわかるとおもうけど

昔のここらへんは田んぼと雑木林で何もなかった

わしのこどものころはもっと寂しい場所だったよ

話は終戦後のことだけど

ここらへんは田んぼや畑でなんとか食糧の確保をしていたんだよ

ところが

畑の野菜や大根などが盗まれてな

当時の大人たちはすごい憤り

怒っていた

それで見張り小屋が必要だということで畑がよくみえる位置に小屋を建てた

交代しながら見張りをしていたんだよ

なかなか・・・泥棒たちは現れない

もちろん夜間だけの見張りだった

ところが昼頃に畑を見に来たら盗まれていたんだよ

村で会合を開いて24時間体制にしようということになった

ある晩に畑の方で物音がした

泥棒が来たということで宿直していた村人3人が畑へ行って

その泥棒たちをメッタ打ちにしたんだよ

ところが・・・

朝になり辺りが明るくなって泥棒たちを確認したら・・・

子供たちだった・・・

いわゆる戦争孤児の子供たちだったんだよ

お腹すかしていたんだろうな・・・

その子供たちを見て村人3人は座り込んでしまった

まさか・・・子供だったとは・・・・

もう村中が大騒ぎになったよ

一応・・・泥棒退治ということで・・・免赦されたけど・・・

村人たちはすごく後悔したんだよ

この子たちの供養をしようと毎月15日に小屋の中で24時間過ごそうということが決まったんじゃ

ちなみに・・・その村人3人の中の一人がわしの父親だよ・・・

オヤジからそれを聞かされて・・・大泣きをしたよ

オヤジも泣いていた・・・

今は公園として整備されたけどここがその畑の場所だったんだよ

公民館の横に小さな祠と地蔵があるだろ

あの子たちのために公民館と一緒に建てたんだよ

あの子たちはあそこの墓地霊園に埋葬したよ

今は見張るものがないけれど供養のために公民館で24時間黙祷というか静かに過ごそうと毎月15日に交代でしてるんじゃよ」

「パパ、じいちゃ・・・可哀そう・・・」

「そうだったのか・・・おい、オヤジ・・・」

「あ・・ああああ・・・」

「ちょうど・・・葵ちゃんくらいの年齢の子だとわしの父親から聞いたんだよ・・・

もうわしは涙が止まらなくなってな・・・わしもお腹すいていたけど・・・あの子たちはもっとお腹すいていたはずじゃ・・・」

「だから・・・こんなにお菓子やおもちゃがあるわけか・・・」

とても悲しい現実だった

あの墓地霊園は本当にいろいろなうわさ話が多い

実際に私たち4人組は黒い影を見たし・・・

昼間でもなんとなく異世界の感じがする

それも・・・

商店街へ行く途中にあるし

塾へ行くにもここを通るし・・・・

位置的にちょうど中心部というかここを経由していかないと

目的地へ行けれないというこれも謎

元々・・・江戸時代から墓所だったからね

うっそうとした雑木林になっていたところにお墓を作ったんだろうな

戦後に土地開発で霊園として整備された

あたりも住宅地へと変わった

これも後から書くのだけど

霊園の西側に住んでいた小学校の時の同級生からいろいろとこの霊園について

教えてくれた

また同級生もいろいろと体験したらしい

公園の方はまだ昼間は雰囲気が良くて娘たちが公園で遊んでる

ただ、午後6時以降は絶対に行かないようには言ってるけれどね・・・

塾の帰りや商店街などへ行くときもこの公園の横を通る

夜間は本当に雰囲気が変わる

小学生の時はふざけて肝試しもやったし・・・

家から公園まで一人で行くという肝試しをしたことがあった

家から公園までおよそ500メートルだけどね

一人だとマジで怖かった

この話も後々書くけれど・・・

Concrete
コメント怖い
2
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信