この話は学生時代に友人と一緒にサーフィンへ行った時のことです。
nextpage
separator
私たちが住んでいる地域にはサーフィンが出来るような波のある海がなく、遠方へ車で行かなければなりませんでした。
早朝から海に入れるよう深夜に出発し、学生でお金がなかったので有料道路を極力使わずに時間をかけて行くのが私たちの楽しみ方でした。
その日も大阪へ深夜に集合し、友人2人と私の合計3人で行くことになっていました。
ところが当日になって、友人の分のサーフボードも預かっていた子が行けなくなり、彼女の京都の下宿先まで寄ってから海に向かうことになりました。
土地勘のない場所に行くため、カーナビをセットしてから彼女のところへ向かいました。
ナビの言う通りに向かうと下宿先まではすんなり到着。
無事にサーフボードを受け取ってから、もう一度カーナビをセットし直しました。
ボードを積んで、やっと海へ出発です。
深夜ということもあってテンションも上がり、バイトの愚痴や恋バナ、家族のことなど何気ないことを話しながら、友人の運転で車を走らせていました。
そしてしばらくすると、田舎で真っ暗な道の真ん中に大きな鳥居が見えました。
友人と
「普通の道に突然鳥居が現れるなんて京都らしいね」
「でもちょっと怖いね」
と言いながら、車で鳥居をくぐりました。
するとまた前方に同じ鳥居が見えました。
「あれっ?!同じところに出てきたね」
と友人が言います。
ナビの通りに進んで行っていたはずだったのですが、どこかで間違えたのでしょうか。もう一度同じ道を通ることになってしまいました。
そこで次はナビの指示とは別の道を通り、とりあえず広い道路に出ることにしました。
違う道に出てまた喋りながら走っていると、友人が突然
「ちょっと寒気がするから冷房切ってもいい?」
と言いはじめました。
私は寒くはありませんでしたが、冷房を切りました。しばらくすると車内はすぐに暑くなっていきました。
真夏ですから、冷房をつけないのはなかなか酷です。友人の顔を見ると汗が流れていました。
「暑くなってきたね。冷房もう一回入れようか」
と言うと友人は
「寒い」
と一言。
「体調悪いの?」
と聞いても
「大丈夫だ」
と言います。
なにか違和感を感じながらも、そのままにして車はさらに走っていきました。
すると、前方にまたあの赤い鳥居が見えました。
まったく違う道を、それもずいぶん長い距離を走ってきたはずなのに、同じ鳥居が目の前にあるのです。
友人は運転席で真っ青な顔になっています。
そして、それまで異様なくらいに熱気に包まれていた車内が、なぜかとても寒くなっていることに気付きました。
冷房は入っていません。
鳥肌が立ち、歯がカチカチいう程、冷たい空気が車内に充満していきました。
一度車を止めて窓を開けると、やっと少しずつ元の空気に戻っていきました。
私たちは怖くなり、次は鳥居をくぐらずに車をバックさせて適当なところでUターンしました。
その後は鳥居が出てくることはなく、車内の温度も変わることはありませんでした。
しかしなんとなく嫌な空気を背負ったまま海に行くことになってしまい、私たちは気分が上がりませんでした。
そして、サーフィンをしようと海に入ると普段はそんなことは起こらないのに、リーシュコードが外れてしまった人のサーフボードが直撃したり、クラゲに刺されたりと小さな不運がたくさん起こりました。
極めつけは帰り道。
運転を交代しながら帰っていましたが、私が助手席でウトウトしていると明らかに車が反対車線に寄っていっている感覚が。
まさか友人が居眠り運転をしているのかと思い、慌てて運転席の友人を起こそうとすると、なんと目を見開いているのです。
ボーッとどこか一点をじっと見つめながら、ハンドルを握る様子は普通ではありませんでした。
幸いにも名前を呼びながら肩を叩くとすぐに意識が戻ってきて、事故にあうことはありませんでした。
後から聞くと、その数分間の記憶がまったくないと言います。
それ以来、京都を経由してサーフィンに行くことはなく、鳥居の傍にも行っていません。
あの鳥居は何だったのか。あの1日私たちに起こった数々の不運は鳥居と関係しているのか分かりませんが、思い出すと今でも怖くて仕方ありません。
作者ゆっkー
引用元・恐怖の泉
https://xn--u9jv84l7ea468b.com/