長編14
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先輩

4月に入りうちの会社にも新人が2人入った

なんとか学卒を獲得したと社長は私の部署へ来て自慢気な顔をしていた

「ぼっちゃま・・うちもなんとか学卒を2人取れましたよ

ぼっちゃまにはこの2人の教育係をしてもらいたいんです」

「え・・・ちょっと待って、社長、困るよ」

「お願いします、あの2人を使い物にしてください」

「いや・・・それは・・あ!社長、M先輩がいるじゃないですか、うちの会社のNo1!

「お!!そうだった!M君のほうがいいな、そうしよう」

危ない・・・冗談じゃない、とてもじゃないが自分のことで精いっぱいだ

後日、また社長が自分の所へ来た

「ぼっちゃま・・M君・・・大変なことになってる、M君、1週間ほど無断欠勤をしてるようだよ、ぼっちゃま、何か知っていますか?」

「え?無断欠勤!?あの堅物な先輩が・・・」

うちの営業部のNo1のM先輩、私より10歳上だ

新人の頃からやり手でどんどん営業成績が上がっていった

赤字を黒字へ変えたのだ

当時の社長からM先輩に対して社長賞を授与された

3年目にはもう係長になっていた

今は営業部の課長だ

来年には部長への昇進が決まっている

私は部署が違うので直接M先輩の仕事ぶりは見たことはないがけっこううわさ話になっている

堅物で営業職にいながら無駄な話を一切しないという

私も同時は営業課にいた

私も3回ほどM先輩とお得意先を回ったことがあるが仕事以外の話は一切しなかった

もう一人の同僚も一緒だったがその彼もびっくりしていた

そのM先輩が無断欠勤をしている

何かあったのかな

このM先輩のプライベートなことは会社の人間は誰一人知らないという

「ぼっちゃま・・M君の家へ行って様子を見てきてほしいです」

「え・・・いや・・・これは営業部の事だから・・・営業部長が行けばいいと思いますが」

「それが・・営業部長が拒否をしてきたんです、営業部長も来年、定年だしゴタゴタには巻き込まれたくないと・・・内心、営業部長は彼を信用していないというが疑惑の目でみていたからな、そういう話をよく聞かされましたよ、ぼっちゃま」

「疑惑?どういうこと?」

「わたしもよくわからないのですが営業部長曰く「なんで、月にこんな数の契約が取れるんだ、おかしいですよ、社長」と会議の時に相当な剣幕で話をしていましたから」

「月にどれくらいなんです?」

「月に平均で20件です、ぼっちゃま」

「えええええ!!!!!!まじかよ!!!すごい!」

「でしょ・・・わたしもこの数を聞いてびっくりしましたよ、うちの会社は確かに財閥系列ですが認知度はそんなに高くはない、なのに大体この数字をたたき出してるんです」

「確かにこの数字は異常ですね、なにかトリックがありそうだな、わかりました、社長、日曜日に行ってきます」

「ありがとうございます、ぼっちゃま」

営業部長が驚きと疑惑を持つのは当然かも

営業部長がそういう目で見ていたとは知らなかった

やはりコツコツとまじめに仕事をしてきた人がそういうのだから何かあるな

私は何度営業部長に助けられたことか

私も初めは営業部にいたがあまりにも成績が悪くてよその部署へ異動させる話が出ていた

ところが営業部長、当時は課長だったが「もう半年間はがんばらせましょう」と言ってくれた

M先輩に付いて色々なノウハウを教えてもらった

半年後にはやはり成績が一番悪く今の部署へ異動させられた

M先輩から「がんばったんだから気にするな」とうれしい言葉をかけてもらった

社長は残念な顔で「ぼっちゃま・・・」と一語とだけだった

異動させられた日におふくろからさんざん怒られた

総裁としてのおふくろが「F、本当に役に立たないわね、本来ならクビだよ、とりあえずは企画課へ行くように話をつけたけれどもう二度と恥をさらさないでね」と言われた

私は本当に平平凡凡な人間なんだなと思った

これがいわゆる「お坊ちゃま」といわれる所以なのかと

夕食後に私はオヤジにこのことを話をした

オヤジの顔が一瞬曇ったような気がした

「おい、せがれよ、今の話を聞いた限りでは・・・そいつはもう」

「え・・・」

それきりオヤジは何も言わなかった

「せがれよ、俺も一緒に行くぞ、お前ひとりでは心配だ」

「心配?」

「そう、とにかく俺も行くからな、それとな、最悪の場合はクソ坊主を呼べ、いいな」

「ちょっとまってくれ、意味が分からん」

「今はわからんでいい、明日の準備をしろよ」

歯にものを嚙んだような口ぶり

「パパ!明日、どこ行くの?」と楓が真顔で言ってきた

「明日はパパの会社の先輩の家だよ」

「え!・・・パパ、行かない方がいいよ、じいちゃんから聞いたよ、じいちゃん、すごく沈んだ顔をしていたよ、私も嫌な予感がする、今回は私は明日、お友達の家へ遊びに行くから一緒に行けないけどすごく心配してる、無理しないでね、パパ」

楓は何かを感じてる

楓の予感は的中したけれどね

逆に楓も一緒に来てほしい

そう思った

3人娘は楓のお友達の家へ遊びに行くとか

なんか寂しいな

いつもは付いてきてくれたから

翌日

オヤジと一緒にM先輩の家へ

会社からおよそ1時間ほど

閑静な住宅街の中にあった

まだ住宅街の造成中で工事関係者が結構多かった

「え・・と・この住所だと・・・ここらへんだけどな」

以外にも日本家屋だった

「おい、せがれよ、本当にここか?」

すべての窓が閉まっていた

生活感が全くないという感じ

「ここだよ、間違いないけど・・・」

「なんで、全部閉まってるんだよ、どこか旅行でも行ってるんじゃないのか」

「さぁ・・」

オヤジは玄関の戸を叩いた

返事はない

オヤジは電気メーターを見た

動いていた

「電気はきてるよな・・・静かだな、鍵は閉まってる」

家の周りを見て回った

すべての窓は閉まっていた

「おかしいな、人の気配がないぞ」

しばらく様子を見ていた

何も変化はなかった

「そのMって奴の携帯番号は知っているのか?」

「一応ね、でも一度もかけたことがないよ」

「そっか、今、かけてみな」

「わかった」

オヤジは玄関のドアのところに耳を当てた

「今からかけるよ」

私はM先輩の携帯にかけた

「お・・かすかに・・・何か鳴ったぞ、せがれよ」

「本当か」

「あぁあ・・・もう1度かけてみな」

今度は自分もドアの所に耳を当てた

「あ・・奥から鳴ってる」

かすかだが奥から音が鳴っていた

「もしかして、M先輩倒れてるんじゃないのか」

「ありえるな・・一応、鍵屋と警察と救急車を呼べ」

私は警察署に詳しい経緯を話をして警察官に立ち会ってもらいたい旨を話をした

最悪の場合も考えて救急車の手配もした

鍵屋にも来てくれるように頼んだ

しばらくして鍵屋と警察官と救急車が来た

私は警察官にこのドアの施錠を開けるのに立ち会ってほしいと申し出た

鍵屋がドアの鍵をつくりはじめた

30分後に鍵ができた

「よぉし、入るぞ」

オヤジが先に入った

「う・・・くせぇ!!!あかん、あかん、息が詰まる」と言いながらオヤジが出てきた

「くさっ・・・」

玄関からすごい匂いが流れ出てきてる

「こりゃ・・・中に入れん・・・ガスマスクがいる」

私はS君に「おふくろの本社の倉庫にガスマスクがあるから持ってきてほしい」と電話をした

1時間後にS君とF子が来た

「おい、持ってきたぞ」

「ありがとう」

ガスマスクを装着して玄関から中に入った

「なんだこりゃ・・・」

すごい光景だ

ゴミや何か得たい知れないものが部屋中に散らばっていた

「これは・・・」と警察官も声を上げた

早々に外へ出た

気分が悪い

「何なんだ、ありゃ・・・」とオヤジのでかい声

警察官が何やら無線で何かを話していた

「今、応援を頼みました、事件の可能性もありそうなので」と小声で言ってきた

しばらくすると1台のパトカーが来た

素早く規制線を張り出した

とりあえずはしばらく玄関のドアを開けたまま匂いが消えるまで待つことにした

2時間後になんとか匂いも落ち着いてきた

「もういいかな・・・入りなおすぞ」

匂いはかすかになったがすざましい光景はそのまま

この光景、何かに似てる

そ、そうだ、映画「エイリアン」に出てくるエイリアンの卵の部屋みたいだ

「なんか・・・映画「エイリアン」のあの卵の部屋みたいだな」と私はボソボソとしゃべった

全員が頭を上下に動かした

蜘蛛の巣なのかよくわからん白い糸状なものが部屋中を覆っていた

中央には何か白い塊があった

「何だろうな?こりゃ」とオヤジのびっくりした声

「まさに・・・何かしらの卵かな」

「おいおい、マジかよ、せがれ・・」

ウウウウ・・・・

「おい、何だ今の声はよ」

「聞こえた・・・どこからだ?」

ウ・・・ヴぇ・・・

「ま、まさかな、・・・せがれ・・・その白い塊からじゃないのか?」

「オヤジ・・・おそらくな」

オヤジがその卵を触った

「おい!あんまし触るなよ、オヤジ」

「まぁ・・・柔らかいぞ、何か中に詰まってる感じだぞ」

オヤジが白い塊の上部の部分にパンチを与えた

「うわ!オヤジ、なにするんだ!」

「見てても埒があかん!ここから破いて中を見るんだよ」

パンチを何回か与えて少し穴が開いた

「ほらよ、少し穴が開いたぞ、もう少し破ってみるか」

穴が開いた部分を少しづつ開けていった

「どれ、中身は・・・・」

オヤジが破れた穴から中を覗き込んだ

「あかん!!!あかん!おい!おまわり、こっち来い!中を見ろよ」とオヤジが大声で叫んだ

警官が慌てて来て穴を覗いた

「うわっ!!!!!」とすごい叫び声をあげた

オェーーー

警官がその場で吐いた

ほかの警官たちはびっくりしてその嘔吐した警官を外へ連れ出した

「あかん・・・なんでこった・・・」

「どうした?オヤジ?」

「あかんや・・・せがれ、一旦外へ出ろ、説明は外に出てからだ」

全員が家から出た

「大丈夫か?オヤジよ」

「あぁ・・少しは落ち着いた・・・」

「どうした?なにがあった?」

「あ・・あのな・・・落ち着いて聞けよ、人、人の塊だよ」

「え?人の塊?意味が分からん」

「人の形をしたものがあの白い塊の中にあったんだよ、それもな、動いてた」

「え?・・もしかして・・・人か?」

「そうだよ、人だよ、あの白い塊の中で半分腐ってる状態だ」

「え・・・まさか!先輩?」

「そこまではわからんけどな」

「せがれ、救急車を呼べ、おまわり、大至急、鑑識を呼べ!!」

私は救急車を呼んだ

周りにいた警官は慌てて無線で応援を頼んでいた

周辺が騒ぎ始めてきた

救急車が来た

救急隊員がオヤジの案内で家の中に入っていった

家の中から救急隊員のすごい悲鳴が上がった

およそ10分後に担架に乗せられてそのまま救急車の中に入れられた

他の救急隊員も慌てて中から出てきた

オェーーオェーー

その場でゲロを吐き座り込んでしまった

「大丈夫ですか?」と私は声をかけた

「あ・・ありがとう・・・さすがにあれはひどい・・・一体何なんだありゃ」と咳き込みながら話してくれた

「せがれよ、説明は後だ、病院へ行くぞ」

病院へ着きすぐに集中治療室へ行った

あの家から運び出された「人」は酸素マスクをつけていた

息が荒い

よく見ると、やはり先輩だった

もう顔の半分は腐れて骨が見えていた

息をしているのが奇跡だ

オヤジはじっと先輩を見ていた

なんとなく先輩の目はオヤジを見てるような気がした

「おまえ・・・まさか・・・」とオヤジがポツリとつぶやいた

「オヤジ、今、しゃべったか?」

「ああ・・・先輩とやらと今、話してる最中だよ…なんでこった・・・

あかんやろ・・・そうだよ、霊力のない者がそんな奴と契約したらどうなるかわからなかったのか?・・もう手遅れだぞ・・・そうだろ・・・」と先輩と何やら話をしていた

およそ30分後に先輩は息を引き取った

病院にいた警官が私に声をかけてきた

「あの、すいません、現場にいる者から連絡がありまして・・・ちょっと説明が難しいのですが・・・2階の奥の部屋から成人男性が保護されました、一度、現場へ戻ってほしいと連絡が来ました」

「え・・?・・・2階から・・・どういうこと?」

「せがれよ、あの家へ戻るぞ」

私の頭の中は完全にパニックを起こしていた

今、何か起きてるのか全然理解できない

オヤジは何となくわかったというような顔をしていた

再びあの家へ

野次馬や警察官や消防隊員やらで現場は騒然としていた

「すいません、お手数かけます、2階の部屋へ一緒に来てほしいのです」

と警官が話しかけてきた

警官と一緒に2階へ行った

私は唖然とした

いや、目の前にいる「人」は誰だ?何なんだ?という驚きで一杯だ

「せがれ・・・理解できないだろ?ありゃ・・偽者だよ」

「え?偽者?どういうことだよ?」

「説明すると長くなる、本物と偽物が入れ替わる途中で俺たちが見つけてしまったんだよ、だから本物はああいう状態で白い塊の中へ閉じ込められたんだよ、あと半日で入れ替わっていたはずだ」

「よくわからん、入れ替わるってどういうことだ?」

「あいつよ、こともあろうに悪魔と契約してやがったんだよ、それがいよいよもって今日が契約の最終日だったんだろうな・・・愚かだよ、自業自得だ、ちっ!」

オヤジは落胆の顔をしながら話してくれた

「俺は、こいつを始末する、まだ、成体の途中だ、力が弱いうちに片づける、家の中にいる者全員外へ出てくれ」

警察官や消防隊員は茫然としていた

オヤジの言った意味が全然理解されていない

私はおふくろへ連絡をして所轄の署長から現場にいる警官全員を撤収するようにと頼んだ

およそ10分後に全警官たちは家から出て行った

それと消防隊員も家から出て行った

1時間後にオヤジが出てきた

「せがれ、始末した、本物の方も死んだろ」

警官と消防隊員は再び現場検証をはじめた

「おい!君たち、2階の人はどこだ?」と警察の責任者がオヤジに言ってきた

「あいつなら・・もう・・・この世にはいないぜ、2人ともな」

「意味が分からん、怪しいな、署へ来てくれ、詳しい説明をしてもらう」

「いや、行かんよ、詳しいことは署長に聞け、せがれ、帰るぞ」

「オヤジ・・・」

「おい!待て!」

「警部!署長から連絡です」

「なに!署長から・・」

「はい!」

「あ・・はい・・・はい・・・わかりました・・・」

「警部?」

「署長から連絡があった・・・おまえら、もう帰っていいぞ」

「あぁ・・そうするよ」

「警部!!いいんですか?」

「仕方ないだろ、署長命令だ」

「あ、はい!」

騒然とした現場から病院へ向かった

オヤジが言った通り先輩は息を引き取っていた

「一番最悪のパターンだ、悪魔に甘い言葉をかけられたんだろうな・・・」

「悪魔との契約って何だよ?」

「あぁ・・・・家へ帰ってから話すよ、せがれ、家へ帰ろう」

ちょうど夕食の時間帯に帰ってきた

「オヤジよ、一体どうなってるんだよ、全然わからん」

「いや、今は食事中だろ、後で話すよ」

「今話してくれ、オヤジ」

オヤジはしばらく黙り込んでしまった

子供たちも何の話なんだろうとオヤジを見ていた

オヤジがゆっくりと今日の出来事や先輩のことなど詳しく話してくれた

けれど・・・これが家族にとって最悪の食事になった

「じいちゃ!!!もう話はやめてくれ」と匠があわててトイレへ駆け込んだ

「じいちゃ・・・」仁も慌ててトイレへ

この化物屋敷に慣れてる子供たちでさえ気分が悪くなった

3人娘たちは気持ち悪さで体調不良を起こしてしまった

「あかん、もういいよ、オヤジ、この話はやめよう」

「だから言ったろ!こういうことになるから俺は後で話すといったんだぞ」とオヤジは怒っていた

これは完全に私が悪い

急いで今日の出来事を聞きたかった

家族全員が体調不良になってしまった

話をまとめると

先輩は前の仕事で大きな失敗をしてクビになっていた

会社からすごい責任追及の圧力がありうつ病になってしまった

自殺をしようと夜中に外へ出た

なかなか自殺する場所が見つからずに家へ戻った

それから家に閉じこもり会社へ行かなくなりクビになった

その状態が1年間続き春の暖かい夜の時に耳元でだれかに囁かれた

悪魔の甘い声だ

はじめは拒否をしていたが毎日耳元でささやかれていた

段々と思考能力がなくなり悪魔と契約をしてしまった

体の調子がよくなり再就職先を探した

その再就職先が私の会社だった

はじめはなかなか契約が取れなかった

それを悪魔に相談すると次の日には契約が取れた

まだ月の契約数のノルマに達していないためにまた悪魔に相談をした

すぐにノルマが達成された

順調にノルマが達成されて会社のNo1と呼ばれるようになった

3年目には係長になった

これで悪魔との相談が2つになっていた

あともう一つ相談されたら悪魔との契約で悪魔が人間になるという契約内容だった

要は悪魔との入れ替えの契約をしていたのだ

もうあと相談事は一つだけど生活や仕事は順調で相談することはなかった

ところが今年のはじめに大きなドラブルが起きた

契約された会社から訴えられたのだ

それを先輩は会社へ連絡をしなかった

その訴えられた内容は教えてもらえなかったとオヤジは言っていた

ただ、会社に知れると間違いなくクビになる

相手からの損害賠償金が5000万円だった

オヤジはその金額に驚いて訴えられた内容を教えてほしいと何度も頼んだが結局は教えてもらえなかった

支払日もどんどん迫ってきてついに3度目の相談をしてしまった

相談をし終えて我に返った

もう手遅れ

先輩は後悔をした

悪魔は家中に悪魔の巣窟を作り始めた

段々と変わっていく我が家を見て先輩は再び自殺しようとした

だが悪魔は自殺をさせなかった

悪魔は「体を交換するのだから死なれては困る」と言い放った

どんどんと自分の体に異変が生じてきた

体がどんどん細くなり食事も出来なくなってしまった

顔つきも段々悪魔の顔になっていった

精神的にもおかしくなっていく

ついに体の交換が最終段階に入った

それが今日だった

それを知らずに私とオヤジはM先輩の家へ来てしまった

悪魔は急いで体の交換をしようと先輩を白い塊の中へ閉じ込めてしまった

それが結果的に先輩を死なせてしまったわけなのだ

私はオヤジから詳しい話を聞いて涙が出てしまった

あの契約数の異常はこういうことだったんだとため息が出た

良い人間は本当に早死にする

お通夜にオヤジと一緒に出席をした

もちろん社長も来ていた

喪主は先輩の妹さんだ

もう両親は他界されていた

遠くに住んでいるので今日のお通夜が最後のお別れの日になった

妹さんは一目兄の顔を見ようと棺桶の小窓を開けた

ものすごい悲鳴を上げて倒れてしまった

無理もない・・・・

普通の状態ではないから

顔半分は骨になっていて皮膚はどす黒く体はもはやミイラみたいになっていた

葬儀の人もどうしたらよいのか困っていた

妹さんが来るまでは我が家が葬儀の準備をしていた

オヤジが「もうそのままでいいだろ」と言うことでそのままでお通夜の日を迎えた

お通夜、葬儀も無事に終わった

何かモヤモヤとしたすっきりとしない気分だ

Concrete
コメント怖い
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