和室で女が寝ていた
丑の刻、押入れの引き戸がひとりでに開いた
音も無く押入れの中から長く青白い腕があらわれ、女の手首を掴んだ
女は目を閉じながらゆらりと立ちあがった
腕にいざなわれるがままふらふらと押入れ歩み寄り、その中へと潜りこんでいく
ひとときおいて女は腹をジャラジャラ鳴らしなが這い出てきた
そして布団まで戻るやいなや
ネジやボルトやメダルやらの金具をひと抱えほども嘔吐した
朝陽が昇るころ鉄屑の山からは腕が生え
おぎゃあおぎゃあと赤子の泣き声が響き渡った
そうして産まれたのがお前だよ
押入れの中の父は俺にそう告げた
作者退会会員
こうして産まれた彼は公認会計士になりました
趣味は縁もゆかりもない大学合気道部にOBのふりをして手紙を送ることだそうです。