「ただいま」「おかえり」

短編2
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「ただいま」「おかえり」

S君とF子が久しぶりに家に来た

相変わらず元気のいいF子

完全に尻に敷かれてるS君

まさにおやじとおふくろそっくり

久々に4人の深夜の酒盛り

といっても3人娘たちがおまけとして参加

お酒は今回は無しになった

S君の知り合いのお話として語ってくれた

そのお知り合いは独身でサラーリマンをしている

家賃の安いアパートを借りて車で30分ほどの会社に行っている

いつものように疲れて家へ着いた

「ただいま」

もちろん一人だから返事は無い

ある蒸し暑い夏の日

その日は残業で家に着いたのが午後10時過ぎ

いつもの癖で

「ただいま」と言った時に

((おかえり))

寝室の方から聞こえた

はじめは空耳かと思った

明かりを点けリビングを見たが何も異常はない

やはり「寝室」なのかと思い

寝室の襖を開けた

誰もいなかった

やはり気のせいだとホッとした

1週間後

その日は蒸し暑さと大雨で非常にムシムシとしていた

その日は会社の休みで友達と一緒に飲み歩いていた

その友達と一緒に部屋で飲むことにした

家に着き

玄関のドアを開けて

「ただいま」

((おかえり))

2人は一瞬立ち止まった

お互いの顔を見た

その友達も聞こえていた

2人は早々に友達の家へ

すぐにそのお知り合いは引っ越しの準備をしてさっさと引っ越しをした

3人娘たちの表情が固まった

どうやら意味が分かったのだろう

「Sおじさん、誰かが部屋にいたの?」

「いや、いないよ、一人、独身だからね」

「え・・・じゃあ誰が「ただいま」と言ったの?」

「さぁ・・・」

「Sおじさん、本当に聞こえたのかな?」

「聞こえたらしいよ」

「ね・・・もしかしたら、天井裏に住んでるんじゃないの?」

「え?まさかね・・・」

「だって・・・はっきりと聞こえたんでしょ、私、幽霊の仕業じゃないと感じたよ」

「どういうこと?」

「なんか人間かなと感じたんだよ、もし幽霊なら私、体に反応があるんだよ、でも反応が無かった」

「話だけでわかるの?楓?」

「うん、わかるよ、パパ」

「すごいな・・・」

後日、S君はそのお知り合いと元のアパートに行き天井裏を見た

2人は唖然とした

生活の跡があったのだ

そう・・間違いなく天井裏の住人が「ただいま」と返事したと思う

これを聞いて家族全員が沈黙した

幽霊より人間の方が怖い

私生活を覗かれていた

Concrete
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