オヤジが帰ってきた
「おーいい、帰ってきてやったぞ」
その声に反応して3人娘たちが迎えに行った
夕食時にオヤジはうれしそうに8ミリビデオを見せびらかしていた
「これな・・駅前のリサイクルセンターに行ってよ、安かったから買ってきたぜ」
「オヤジ、いくらだ?」
「1000円!!!」
「ええ!!!1000円!?マジかよ、でもよ8ミリビデオテープはどうするんだ?」
「え?ビデオテープ?」
「そうだよ、ビデオテープ・・まさか・・・知らないのかよ」
「いや・・てっきり・・・そのまま撮影できるのかと思ってた」
家族全員、腹を抱えて大笑い
「おやっさん、大丈夫っすか!」
「あんたさ・・・いつも思うけど計画性無いのよね」
「パパ・・」
家族全員が呆れた
「おやっさん、その8ミリ見せてください」
オヤジは8ミリビデオをS君に渡した
「え・・これが8ミリか・・一度触ってみたかったんだよな・・・昔、俺のオヤジも持ってたんだよな・・」
「Sアニキ!ほんとなんだぞ?私、知らなかったんだぞ」
「あぁ・・記憶にないかな・・・俺等兄妹を撮ってたんだぜ、今でも実家にあるはずだ、今度探そう」
私も興味があったんでS君から渡してもらった
相当年季が入ってる
使い込まれてる感じがした
昔はこれで撮影してたんだ
あれ・・・おお・・・テープが入ってる
「テープが入ってるよ、これ」
「ほんとか、せがれ」
「ほんとだ、ちょっとまって、取り出すから」
テープを本体から取り出した
傷んではなさそう
「よぉし、これを・・・どうしたらいいんだ?」
「今から実家へ行ってダビング機械を持ってくるから」と言いS君は出て行った
30分後に帰ってきた
「あったよ、オヤジに聞いたら書斎にあるデスクの奥にしまってあったよ、これで見れるよ」
TVに繋げた
「なにか映るかな・・・」
映ったのは砂嵐
「あれ・・砂嵐・・・何も撮影してないのかな・・・」
何回、再生しても砂嵐
「なんだこりゃ、まぁ・・上書きして使えばいいか、おやっさん、そのまま使えばいいよ」
「おう、ラッキーー」
私は砂嵐を見て・・・少しおかしいなと思った
もしや・・・
「ちょいまち、これは、もしかしたら・・・」
私はそのテープを持って書斎室へ行った
私は趣味としてPCをいじくってる
自作もしたことがある
今使っているPCがそれだ
「もしかしたらこれは・・・テープに映像データを入れてるかもしれん」
昔はプログラムデータを記録する時にカセットテープを使っていた
8ミリテープも応用すれば出来たはずだ
おそらくね
それで・・・どうしたらデータを取り出せるかだ
音声を取り出せればいいはず
S君が持ってきた機器に音声出力が付いていた
これをPCにつなげて音声ソフトに取り込めばいいはずだ
(音声といっても「ピーヒョロヒョロという感じでハイとローの音が聞こえる、つまり0と1のデータ音かな)
案の定、音声データが現れた
おそらくプログラムデータではなく映像データだと思う
それをアナログからデジタル変換すれば見れるはずだ
色々と手順を踏んだ
詳細は省くけどね
どんどん音声データの波形が出てきた
それを16進数の表示が出来るソフトへ入れてみた
16進数のデータがずらり
おそらく昔ならAVIの形式だと思う
そのままAVI形式にして出力してみた
エラーは出なかった
さてと・・・動画再生ソフトを立ち上げてロードした
ノイズが酷い
時間数を見たらおそよ20分ほど
大丈夫かな・・・
ノイズや砂嵐
何か映像が出てきた
う・・・なんだこりゃ・・・
家族の映像だ
恐らくこの8ミリの持ち主の家族だと思うけど
しばらく見てると・・・え!となった
録画を切り忘れたのだろうか
そのまま録画されていた
音声もノイズがひどいが聞こえた
ガタン
ドン
なにかの音がした
まるで我が家のお化け屋敷と同じ音・・同じ音!?・・・え・・・
まさか・・・
すると・・・襖が開いた・・・
ドン
テーブルの上の皿が少し動いたように見えた
すると黒い影が横切り画面に映った
それを見て思わず叫んでしまった
人の顔だった・・・・
3人娘たちも横から見ていた
最後の顔でギャーーーと叫んでいた
「パパ!!!何、今の?最後、あれ、絶対に人の顔だったよね?」
「うん・・人の顔に見えた・・・」
「パパ、これ・・・もしかしたら・・・呪物かもしれないよ・・・」
「まさか・・・」
私はS君を連れてきて見させた
やはり最後の顔で叫んだ
「なんだこりゃ、お化け映像じゃないかよ、それも最後は顔だったぞ・・・おいおい・・
おやっさん、とんでもないもの買ってきたな・・・」
「これ合成かな?」
「いや・・わからん・・・昔からでも加工は出来ていたからな・・・でもな・・この映像を見ると自然なんだよな・・・はじめの家族団欒の映像からすると加工してるとは思えない・・切り忘れてそのまま録画という感じだな・・・もし加工するのならもっと加工しやすいようにカメラの位置を考えて撮影するはずだ・・・この角度からだと加工しにくいんだよ・・・こりゃあかんぞ」
私はオヤジを呼んだ
「おう!どうだ、見れるようになったか?」
「一応な、オヤジ、見るか?」
「おうよ、見るぜ」
「じいちゃ・・見ないほうがいいよ」
「楓ちゃん・・・どうして?」
「あんまし・・よくないよ」
「そっか、見せてくれ」
「お・・・家族団欒だな・・・こりゃ1960年代か1970年代だな、懐かしのブラウン管テレビだ・・・家族4人か・・美味しい料理がそろってるよな・・懐かしいな・・・
おれのところもよ、こんな感じだったぜ、まぁ、俺は一人っ子だったけどよ・・・オヤジとおふくろがお喋りしてるのを思い出すぜ、・・・・えっ・・・なんか音がしたぞ、「ドン」と・・・う・・・ふ・・襖が勝手に開いたぞ・・・皿が・・・動いたぞ・・・うわっーーーー」
オヤジも最後で叫んだよ
「おい!!!せがれよ、なんだこりゃ、最後の何だよ、顔だったぞ、なんか血の気のない顔だったぞ!、襖は勝手に開くし、皿は動いたし・・・まるで化け物屋敷じゃないかよ」
「そう・・我が家と同じだよ、オヤジ」
「うっ・・・それを言うなよ、せがれよ・・・何だよ、こりゃ・・・」
「じいちゃ・・・だから言ったでしょ」
「楓ちゃん・・・」
「オヤジよ、安いからといって買ってくるなよ、こりゃもしかしたら呪物かもしれんぞ・・」
「うっ・・・ありえるかもな・・・あかんな・・クソ坊主を呼べ」
「わかった」
私はメールで事の詳細を書き送った
しばらくしてから返事が来た
明日来てくれるそう
「返事が来たよ、明日来るそうだよ」
「そっか・・・」
「それとな・・・オヤジ、和尚様から・・・この8ミリを仏間に置いてほしいと書いてあった、封印しないといけないそうだよ、必ず傍にはオヤジがいるようにと書いてあったよ」
「そっか・・・めんどくせーな・・・」
ドン
パチッ
「ラップ音がしたな」
「じいちゃんが言った言葉に反応した気がするよ」
「え・・・まさかよ・・・」
ドンドン
ダン
「うっ・・・反応してる・・・」
「じいちゃ・・」
「8ミリ持って仏間へ行くぜ」
全員仏間へ
電灯を消す時にふと誰かが居たような気がした
気のせいかな
オヤジはラジオを聞き始めた
いつものお笑い番組だ
リビングでは女子たちのおしゃべりが聞こえていた
カナちゃんママが顔をのぞかせて「あのぉ・・今から洗濯場で洗濯物を干しますね」と言ってきた
もうこんな時間か・・・
カナちゃんママが「洗濯物干すの終わりました」と挨拶してリビングへ行った
「あっ、そうだ、忘れてた、おやっさん、忘れ物あった、車に置いてあるから持ってくるよ」と言い出て行った
しばらくして戻ってきた
「よいしょと・・・うちにあった8ミリテープ、オヤジの書斎から持ってきたよ」
「お・・・そっか、見ようぜ」
リビングへ行った
TVに繋いだ
S君家族の映像だ
「懐かしいな・・・オヤジやおふくろが若い!お!!俺だ、3歳ころかな・・・」
「おっちーー!!!懐かしいんだぞ、パパ、ママ、若い!ママ、かわいいんだぞ、パパ、メガネかけてないとハンサムなんだぞ」
「本当だ、お、S君、転んだぞ、あははははは!!!」
「笑うなよ・・・お・・・懐かしい・・引っ越しする前の我が家だぜ、おお、駄菓子屋だ、ここでよくお菓子を買ってもらった・・・」
「パパ、赤ちゃんだよ、かわいい!!!ママかな?」
「わたしなんだぞ、かわいいんだぞ」
懐かしい映像を見て今さっきの怖さが消えた・・・消えたはず・・・
ふっと隣を見た、オヤジが居た
え・・えええええ!!!!
「お、オヤジ、なんでここに居るんだよ!!」
「え・・居るよ、映像が見たいから・・・」
「いや・・仏間に居ないといけないだろ!」
「なんで?」
「はぁ・・・今さっき話したろ、仏間に居ないといけないって」
「あああ!!!そうだった・・・しまった・・・」
オヤジは慌てて仏間へ走って行った
「うわーーー!!!ラジオが!!!」というオヤジの叫び声が聞こえてきた
ラジオが八つ裂きにあったようにボコボコになっていた
「あれ・・オヤジ・・8ミリはどこだ?」
「8ミリ?・・・え・・ないぜ」
8ミリビデオが消えた
仏間をくまなく探したけれど無かった
消えた8ミリはどこへ・・・
作者名無しの幽霊
とんでもないものを買ってきたオヤジ
最後の顔が印象的だった
血の気の無い無表情の顔が画面いっぱいに映っていた
8ミリビデオはどこへ行ったんだろ・・・
もしかして・・・どこぞのリサイクルセンターへ・・・行ったのかな・・・