思い出してはいけない 追憶1

中編3
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思い出してはいけない 追憶1

この話は       の為にも真面目に語りたい内容であるので敢えて画像を添えたり等の脚色はやらない事にした

連作である為「思い出してはいけない1」から順に読まれる事を薦める

前置きが長くなるのといけないので今宵の話を始めよう

前回の投稿を終えた後、また少し記憶が戻ってきた

どうやら思い違いをしていた様だ

改めて思い出した記憶はこうだ

私はB寺ではお祓いはしなかったと思っていたがそうではなかった

記憶にあるのは一度のお祓いの様子だけ

その場所には夕陽が差し込んでおり私は畳の敷かれた広い和室に正座して住職さんの話を聞いていた

話の内容は前回投稿した通りだ

しかしそのお話を聞かされた場所はB寺ではない

私が最初に車に乗せられてB寺に着いた時には日は暮れており辺りは闇に包まれていた

途中の車内での会話の記憶はある、しかしそれから先の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっていた

辛うじて覚えているのは本堂に通された事だけ

その為、印象が薄くなり記憶違いに繋がったのだと思う

B寺で私はお祓いをしてもらい

それから間を置かずにその住職さんが体調を崩された

その後私はA寺に通い続け住職さんが大丈夫だと判断したタイミングで本堂に通され、そこであのお話を聞かされたのだ

夕方に差し掛かり弱い陽射しが差し込む本堂の座敷

襖(ふすま)を少しだけ開いたそこは薄ら暗くなっておりやや不気味さを感じつつその場に正座すると住職さんは柔らかい語り口で話を始められた

「先ず最初に知っていて欲しい事はね、一緒にいたい、友達になりたいと思うのは人間だけじゃないの。難しい事だと思うけど分かってあげて欲しい。」

それが生きていない存在の事を示すのだと直ぐに理解した

身体が恐怖で震えだしたのがわかった

襖の少しの影がとても恐ろしいものに思えて心細さを感じた

しかし、震えながらこうも思った

「生きていない存在が一緒に居たいと思ってもいいじゃないか。命がある無しで区別するのは良くない」

そう思ったら不思議と不安は無くなった

今思えば私はあの瞬間、憑いている存在を認め受け入れたのだと思う

あれから時は流れすっかり歳を重ねいい大人となった

その間、私や家族、親戚、私が大切に思う人達に対して特に何も無い

そればかりか不気味な現象や気配を感じる事すら一度も無い

自分の悪運が強過ぎると思う位だ

今まで何度も命が危険に晒されたり自分に大きな損害が起こりそうな場面があったが

偶然が重なった事で事なきを得ている

しかし私が関わってきた中であまり良く思っていない人達に関しては

大なり小なり厄災に遭われ、中には命を落とされた方もいらっしゃるので力は本当に強いのだと思う

そんな名前も知らない       であるが

今ではもう長い付き合い、というか家族よりも誰よりも長い時間共に過ごした存在となった

周りに厄災をもたらす程強い力を持っているのだ

やろうと思えば私含めて家族皆殺し位はやってのけるだろうと思う

取り殺そうとしている相手に10年、20年、30年〜と時間をかけるほど気長な霊はいないだろうと思う

自分が霊なら憎くて取り憑いて殺そうとしている相手にそんな膨大な時間はかけないから

だから

それをせず、驚かせようともせず、夢にも出てこず、ただ

ただ一緒に過ごしているのは

多分、確証は無いんだけど

見守ってくれているのだと思う

なので周りの人間には悪いんだけど今更

離そうとは思っていない

だって自分だったら何十年も見守ってきた相手が

これから先もそうしていきたいと思っている相手が

ある日突然自分を拒絶して離そうとしてきたら悲しいから

いや、ここには書けない気持ちになると思う

それを考えると私にはお祓いを選ぶ事はとてもできない、やりたくない

これから先も        と住んでいる世界は違うけれど共に生きていく家族として

同じ時間を歩んでいけたら良いな

そんな事を考えている

続く

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