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中編3
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コンプラ怪談

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 とあるタクシー会社の運転手から聞いた話。

 歌舞伎町を、あ、土地が特定されるのは良くないので、某繁華街を流していたタクシードライバーのおじさん、いや、運転士の一般従業員の男性が、髪の長い女性、あるいは本人の認識的には男性あるいはそれ意外の、見た目としては幽霊としか思えないけれどそれはルッキズムに繋がるので本人に確認が取れていない以上はとりあえず、まだ生きているような気がする人物をタクシーに乗せました。

 彼女(あるいは彼。あるいはQ)はこう言いました。

「青山墓地まで行ってください」

 けれど互いの素姓も知らない間柄で、いきなり住所らしき場所を受け入れることはできません。

 聴こえなかったふりをして、「某墓地でいいですか?」と尋ねると、「じゃあもうそれで」と答えられたので、某青山墓地を目指しました。

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 後部座席に座る女性の幽霊らしき人物は当然ながら、女性ではない可能性もあるし生きている可能性もあるのでどうお呼びすればいいか迷っていたところ、その人物はこう語り出しました。

「あたいの彼ってのがヤクザでねぇ、ちょっとパチンコでスッたからってヤケクソにあたいを殴って、それで息ができなくてポックリよ。

 彼はその時も、マルボロ吸いながらダウンタウンのお笑い番組で笑ってたよ」

深く暗い声で嘆くように語った後部座席の人物の話を要約すると、

「私の交際関係にあった自称男性が反社会的勢力の構成員で、少しばかり公営ギャンブルであくまでも合法のもとに損益を出したことで気分を損ねた可能性があり、それがもとによる(まだ検察による調査は不十分とはいえ)暴行がおこなわれたことにより私は死亡。

 その自称男性は合法的な煙草(商品名は添削)を服用しながら、ダウ90000の公認チャンネルの動画で口角を上げていたのよ」

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 つまり死者であることは御本人がおっしゃっているので、では運賃のお支払い方法について確認する必要に迫られた運転士。

「あなたの事情はわかりますが、もう某繁華街からこの某青山墓地までにそれなりの料金が発生しています。

お客様のイデオロギー及び宗教的に死後の状態をどうお呼びすればいいのか存じないのでコンプライアンス的に不適切かもしれませんが、こうお呼びして過失にならなければ幽霊様はどういったお支払い方法を御用意していらっしゃいますか?」

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 すると、後部座席の幽霊らしき人物は

「あたいが何したって勝手じゃない! クソが!」

と言って、霧のようになって消えた。

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 それから数日後、某繁華街で、スーツ姿の男性を乗せた。

 「どちらへいらっしゃいますか?」と尋ねると「某青山墓地まで」と指定された。

 ああ、あの日の、霧のようになって消えたお客様のパターンか。

 どうせまた消える客なんだと思って投げやりにタクシーを走らせていると、後部座席の男性はこう語り始めた。

「私がまだ公営ギャンブルによく似たものを経営していた自称非営利団体だった頃にですね、街の反社会的勢力と武力的交渉の段階に入り込んだ日々がありまして、まぁ仕方なく何名かの戸籍を現世から移譲していただいた過程で、ひとりの男に辿り着いたんです。

私が以前、個人的な交際をしていた女性を、殺したやつ。

 でね、いろいろ調べたんですけどね、その男って、あなたですよね」

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 運転士はこう答えた。

「ちょっとそれ、コンプラ的に言えませんね」

 

 

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