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霊感診断として有名なひとつは、
「今、自分の部屋を想像してください」というもの。
そこに誰もいなければ霊感は無く、そこに”たとえ自分自身であろうと”誰かがいれば霊感が有る。
”たとえ自分自身であろうと”というのは何故ならば、
自分自身を俯瞰で想像できるのは、
一時的であれ自分が自分の外に出た経験が有るから。
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この実験をあまり安易に行うべきでない理由としては、
友人・佐藤くんの体験がある。
興味本位で午前2時、まさに自分の部屋でビールを飲みながら
「自分の部屋を想像」してみたという。
真後ろに誰かいた。
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私も先日、ふと山田うどんの店内で唐突に、自分のワンルームの部屋が脳裏に浮かんだ。
韓国製32型テレビ、フィリピン製の小さな机、松田好花写真集、中国製ノートPC。
そこへ向かうキャスター付き日本製の椅子に、誰かが座っている。
浮かんでパッと消えたその光景の内の誰かは、
私自身のようにも思えたし、そうではない何かのようにも感じた。
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なんとなく不安になったので帰りに不動産屋へ寄って、
「ちょっとおかしなことをお尋ねしますが」と前置きした上で、住んでいる部屋について質問しようとしたところ、
「201号のお客様ですね?」と担当者の方から切り出された。
「え、はい。そうですけども」
まず最初に説明されたのは”事故物件ではない”ということ。
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私の部屋、201号で人が死んだことはこれまで一度もないし、マンションが建つ前はただの駐車場であって歴史的な因縁も別にない。
けれどあの部屋は、だいたい1年くらい住んでいると入居者に何かが聞こえ始める。
それを理由に退去した人がこれまでに5人いた、という。
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たとえば蝶々には紫外線が目視できるように、
そしてライオンの色覚では世界がほとんどモノクロに見えているように、
ほんの視覚ひとつとっても生物によってこの世界の彩りは大きく違う。
蝶々は脚や触覚で花の香りや風の動きを読むことができるし、
ライオンは聴覚や嗅覚で獲物を狩ることに備える。
人間も同じ。
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誰でもきっと特殊な環境に置かれれば、適応のために研ぎ澄まされていく。
霊的な空気がある場所にずっと置かれていたならば、
よく言われることだけれど「周波数」が合致してくる。
それがこの部屋の場合、たぶん1年くらいかかる。
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部屋に帰り着くのはいつも、だいたい午後9時過ぎ。
シャワーを浴びて、ストロングゼロを飲みながら夜食。
録画していた日向坂46の番組を観て「やっぱ春日ってツッコミが本当のところなんだよな」なんて独り言をこぼしてから、
ベッドに横になる。
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午前2時、ワンルームの部屋。
まず左の壁から数人の足音が迫ってくる。
とん、ととん、とんととんとん。
とん、ととん、きゅっ、きゅっ、とんとん。
おそらくバスケシューズのようなものを履いた数人の人物が、
一定のリズムで迫ってくる。
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すると次に、右の壁からひとりだけの足音が迫ってくる。
とん、ととん、とんととんとん。
とん、ととん、きゅっ、きゅっ「カバディ」
え?カバディ!?
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右の壁からひとりの人物の声で
「カバディ カバディ カバディ カバディ」
と発しながら迫ってくる。
え、カバディ? 何それ? え?
すると左の壁からの足音が激しくなり、その「カバディ」とぶつかる。
ちょうど私のベッドの真上で。
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霊が何か言う。
「カバデ…くっそ! またかよ!」
またかよって、え、何が?
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それが終わると次に、右の壁から複数人の足音が聞こえ始める。
左の壁からひとりだけの声で「カバディ」と連呼している。
そして私の上で衝突する。
「あー ハイかローちょっと見分けつかなかった。
あいつ上手いなぁ!」
なんて普通に会話していやがる。
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どうしてインド発祥のスポーツであるカバディをここでするんだよ!
この部屋にインド製のものなんてないだろ!
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毎朝寝不足だし、
そりゃこんなとこ引っ越すよな、とは思うけれど
最近は彼らの試合を楽しみにしている。
作者肩コリ酷太郎
これを書くためだけにカバディについて3時間くらい調べました。
いろんな試合の動画を観てみると、こんなにもエキサイティングなスポーツだったのかと。
最初はほんと いつもの悪ふざけを書くためだけにリサーチしてたんだけども、
様々な環境の内でこのスポーツにうちこんでいる選手たちの情熱に熱くなりました。
カバディおすすめ。