wallpaper:7487
sep.11th,2001
to:my petit prince
from:only your's pilot
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以下、翻訳。
「人差し指を近づけると、君はそのちいさなてのひらで私のその指を握って、
そうして少し笑って、それからなんだか咳き込んだ。
お母さんの胸に抱かれて眠っている君はとても温かくて、とても大きく息を吸って、とても大きく息を吐いた。
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今、隣の副操縦士が、息をしなくなった。
テロリストはどういうわけか、操縦室の近くをうろうろするだけ。
こちらに注意を向けていないので、あと少し書く。
客席のほうで何か騒ぎが起きている。
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いつか死ぬ、ことは知っていた。当然だけど。
これを読んで理解できるようになるまでに、まだ10年は必要だろうから、
できるだけ簡単に、具体的に、「いつか死ぬ」ことについて書いてみるよ。
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それはたとえば君のママに初めて会った日。
彼女は文化祭の企画で日本の着物姿だった。
若葉色の綺麗な和服でゆらりと歩いている君のママは、
あの日、誰よりも輝いていた。
ほんとうに誰よりも。
この世界の誰よりも。
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フライトのたびにいつも考えていたことがある。
たとえば夕日に映える海を飛びながら、
雲海に埋もる山脈を縫いながら、
ああ、こんなにも綺麗なものを眺めてしまったら、
あとで何か酷いめに合うかもしれない。
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君が産まれるより10年も前に、
私が君のママにたいして感じていたこと。
そうして、君が生まれてからこの1年、
ずっと君について感じていたこと。
ああ、こんなにも綺麗なものを眺めてしまったら、
あとで何か酷いめに合うかもしれない。
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もう助からないのはわかっている。
できるだけ都市部から離れたところへ落ちるつもりだ。
もしこの手紙が君に届くなら、そ」
作者肩コリ酷太郎
またこの日が来ました。