【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編7
  • 表示切替
  • 使い方

第十四話 掛け軸

「木村、切削時のむしれって何だ?」

「やべぇ講義寝てたっぽいな」

 俺の部屋で課題をやる

「熱膨張係数って合金によって変化がデカすぎるぜ、面倒くせぇ……」

「cncの基本でこれだけ条件あるんだな……」

 が2時間もすれば

「そういや神崎?シラヌシさんだけどよ?」

「そうだ、山の時に呼べば良かったかも」

「いやそれじゃなくてな?俺には森瀬ちゃんになったろ?お前は誰が理想なんだ?」

「……(某アニメキャラ)」

「神崎、お前はオタクの鑑だw」

 どういう意味だ?しかしシラヌシさんも困っただろうな、俺の理想の女性2次元だし

 マスケット銃を振り回す魔法少女……

 と、

「ピンポーン」

「ん?隣か?」

「あ?俺の部屋か?」

 木村が出てみると

「あれ?アタシ部屋番間違った?」

「なんで来てんだよ」

 なぜに女の声?

「志織、こっちだ」

 なぜ俺の部屋に

「へぇ、新しくて」

 俺を見た途端に

「キモっ」

 小さく呟いた

「わりぃ神崎、コイツ妹だw」

 うん、話の流れから想像出来るよ?けど木村、聞いてないよ?こんな可愛い妹さん、何?色白で少しタレ目の柔和なお嬢さん、デニムスタイルで3次元化してるじゃん、小学生の時に動画サイトで偶然出会い初恋と壮絶な最期で俺の心に消えないトラウマを残した金pa

「何見てんのよ?」

 不機嫌

 …………そうだよね、そんな都合良い事無いよね

「コンニチワ」

 言うだけで精一杯の俺

 話を聞くと郵便物が返送され、大学に住所を問い合わせたら変わっていた、だから確認に来たそうだ

「お兄ぃはさ、ちゃんとしたカッコすればそれなりなのにいつまでオタクやってんのよ?」

「バカ、日本のアニメは今や世界で……」

 

 何だろう、耳が痛い

 言いたい事を言うとマミ〇ソは帰って行った

「ワリィな突然w」

「性格キツそうだなお兄様w」

「ちょ!やめろw」

 

「ガチャッ!」

「そうだお兄ぃ!これ持って行けって!」

 細長い何かを投げて来る

「何だよコレ?」

「神棚から出て来たんだって!じゃあね!」

「バタン!」

 現役JKって遠慮ないな……

「何だコレ?」

「箱?」

 細長い白木の箱に紐、解くと

「掛け軸だな」

「にしては小さいな」

 長さ二十センチ程度の短い掛け軸が出て来た、広げても…コレA4より小さくないか?

「こんなもん神棚にあったのか?俺開けた事あるけど知らねぇぞ?」

 まじまじと見るが

「これ…沖縄の屋根のアレじゃね?何だっけか?」

「シーサーな?俺には神社の狛犬に見えるけど?」

「婆さんに見てもらうか」

 

 ………………………………

 

 駅前、シャッターが閉まり寂れた一角

「何てモン持って来てんだお前ら…」

 いきなり咥えタバコで顰めっ面の婆さん

「婆さん分かるのかよ?」

 まだ箱さえ見せてない

「掛け軸だろ?絵は饕餮」

 嫌そうな顔で煙を吐く

「トウテツ?」

「昔の偉い坊さんだかが描いて全国に残ってんだよ」

「何かよ、妹が家から持って来たんだ」

「家だぁ?!」

 立ち上がる……がまた座ると黙り込む

「…尾形さん?」

「木村、この掛け軸あった場所に戻せ、父親に悪い事が起きるかも知れない」

「…オヤジ?」

「いや……もう起きてるかもな」

 苦々しい顔で煙を吐く

「?」

 馴れた手つきでスマホを操作して

「…神崎、一応電話番号教えろ」

 なぜ俺の?

 そのまま電車に乗り近くの駅へ、木村の実家はこの辺りらしい

「お?児島さんか?……何だアイツか」

 スマホに出る木村

「お兄ぃ!お父さんが倒れた!」

「今何処だ?!」

 …………………………………………

 近くの総合病院、救急と書かれた部屋の前に

「お袋!志織!」

「お兄ぃ!」

「一志!」

「何で倒れた?!」

「まだ原因が分からないのよ、これから精密検査するって」

「クモマッカ?とか言ってた!」

 

 俺…来ても良かったんだろうか

 

扉を開けると数人のスタッフ、ベッドには様々な機材に繋がれた人、それを見た木村が

「このオッサン!!」

 

「は?」

 俺含め全員がそんな顔をしただろう

 

「コイツ昔から家にいるオッサンだ!!」

 指を指す木村、いや何言ってんだ?実の父親にオッサンは無いだろ?

「一志!まだ治らないの?!いい加減にして!!」

「お兄ぃ!こんな時までフザケないでよ!」

 

 ちょっとこれ何?他人の家族の修羅場なんて見たくないんだが?お母さんヒステリー起こしてない?

 それに俺も場違いで何か恥ずかしいんだけど?

「き…木村?」

 ほ…ほらスタッフの目もあることだし……と

「神崎っ!手!」

 俺の手を掴む…数秒で

 

「うわぁっ!!」

 一気に俺に注目が集まるが気にしてられん!

 胸の上に正座してる人影!

 

「木村!何してんだコレ?!」

 

「くっそ!離れろ!!」

 バタバタ空間を叩く

「俺達見てニタニタ笑ってやがる!分かっててやってんぞ!」

 

「一志っ!何なの?!」

「お兄ぃっ!」

「何してるんですか?!」

「止めなさい!」

 木村の手を抑えようとする二人にスタッフまで加わる

 

 ……もしかしたら! 

「そうだ!コレ!」

 バックパックから箱を出すと

 

「うおっ!逃げやがった!」

 壁の方を見る木村、と、途端に機材が鳴り出し

「うむぅっ!!」

 苦しそうに酸素マスクを取る木村のオヤジさん

「オヤジ!」

「お父さん!」

 バタバタと慌ただしく看護師や医者が集まる

「急に意識が!」

「木村さん!聞こえますか!?」

 

 

…………………………………………

 

 部屋から出された、中からは普通に会話している声がする

「一志、アンタまだ幽霊とか……」

 嫌そうな顔の母親

「お兄ぃ…いい加減にしなよ…」

 こっちも

「……あー…待て、どう説明するのが良いのか俺も…」

 頭をガリガリする木村

 

 家族と折り合い悪いって話だったからな……

「あ、あの、コレを神棚から出した事が原因らしいです」

 箱を見せる、居辛い

 

「貴方は?」

「あ、木村の同期で神崎です、尾形さんって人にこの箱の」

「尾形っ!!?」

 顔が強張る……が

「お母さん?」

「……お袋?」

 

 何か更にマズイ空気、そうだよ霊感なんてどう説明する…ん?

「ん、あれ?すいません電話です」

 何か助かった!通話可能な場所へ走る

「尾形さん」

「おう、木村の家はどうだ?」

 

 事の経緯を説明して

「何か助かったみたいです、あの箱出したら」

「……そうかい」

「あの掛け軸何なんですか?」

 間が空く、多分タバコ吸ってる

「だからお守りだ、それと大事な事だ良く聞きな、あの掛け軸は気配だけで効くんだ、広げて使うな」

  

 …………………………………………

 

 戻ると

「神崎も見えるヤツなんだ」

「お兄ぃが言ってたことって構ってちゃんとか不思議ちゃんやってただけじゃないの?」

「本当に見えてんだよ、神崎も俺に触ってると見えるんだ」

 母親は座ったまま俯いている、聞ける雰囲気じゃないから志織ちゃんから話を聞いてみると、神棚を取った原因は志織ちゃん、クライミング?をやりたいとお父さんに言ったら壁に突起を取り付ける為に神棚を外し、壊してしまったそうだ

 と、

「ピーーーーー」

「木村さん!」

「木村さーん!!」

「聞こえますかー!!」

 部屋から医者達が叫んでいる

 

「またかよ!」

「木村!」

 二人で飛び込むと

「ご家族の方は外で!」

「邪魔だっ!」

 スタッフを押し退けるとオヤジさんの上を見る木村

「またかテメェ!」

 そのオッサンが居るらしい

 

「木村!コレ!広げて使うなだって!」

「おう!」

 掛け軸を渡すと短刀のように、と

「また逃げやがった!」

 すると

「うおっ!」

 起き上がる父親

「何が起きてるんだ?!」

「木村さん!大丈夫ですか?!」

「おい!MRIかCT早く空けさせろ!」

 大騒ぎのスタッフ

 

「オヤジ、コレはオヤジを守ってる、持ってた方が良いらしい」

「あ、あの、広げたらダメらしいです」

 箱に入れて渡す

 

「………………そうか……」

 箱を見る

 

 …………………………………………

 

 一応明日まで入院して様子を見るらしい、俺達は尾形さんの所へ

「おや、どうだった?」

 咥えタバコ

「婆さん……あのよ……」

 

 

 何この間、無言が辛いんだけど?

「あの!広げたらダメってなんですか?」

「そもそもあの絵、あれは中国に伝わる四凶と呼ばれる内の一匹、饕餮って言ってな?悪霊を喰うんだ」

「じゃあ人の味方なんですね?そんなのが居るんだ」

 凶?ダークヒーロー的な?

「そうは問屋が卸さないw」

「?」

「饕餮は財産も喰うんだ、つまり決して人の味方なんかじゃない、見境が無いバケモンだ、だから気配だけで良いんだよw」

 

「……なぁ婆さん、何でオヤジが…危ないって分かった?」

 煙を吐くと

「…あー……木村…マジな話だ良く聞きな?お前の何代か前が殺人やってる、それも酷い殺し方したんだろ、だから恨まれてんのさ」

「殺人…」

「あの掛け軸はね、金持ちや権力者…恨みを買いやすい奴等に人気があったお守りだ、お前の家は金持ちじゃないだろ?だったら残る可能性はそれだ」

 タバコを挟んだ指で指す

「俺の家は…恨まれてんだな?」

「お前の家の断絶が目的だろうからね、いいか?親が死んだら次はお前だよ?覚悟しとけよ?」

「俺かよ……」

「だから神棚に入れるんだ、そうすりゃお前の『家』を守る『意味』が生まれる」

 

…………なんだ?この違和感?

 尾形さんって占い師……だよな?

 木村の家に詳しくないか?

 

Concrete
コメント怖い
1
4
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

サービス終了だし、他のサイトに転載して続きを書くか打ち切るか。

返信