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小学校4年生だった私は、帰宅してすぐに家の違和感に気付きました。
『何か、おかしい。』
その瞬間はその違和感の正体に気付かなかったのですが、玄関を上がり、廊下を歩いて、自室へ入ろうとした時に、感じた違和感の正体に気付きました。
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一人っ子の私の家にあった、自分のものではない子供用の靴。
自室のドアノブに手を掛けたまま、玄関に目をやります。
___ある。自分のモノではない子供用の白い靴が一足。
当時、両親は共働きだったので私が家に帰る時間帯は大概一人でした。
両親がいない。自分一人。自室から感じる空気感。
じっとりと手に汗が滲みます。
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意を決してドアノブを回しました。
怖さに伏せていた目をゆっくりと上げると、そこには私より少しお姉さんに見える女の子が一人、私の部屋の真ん中に座り、私を見上げていました。
«おかえり。»
「え、あ…た、ただいま…。」
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唐突に話しかけられた驚きから、普通に返事を返してしまいます。
その少女が人間ではないことは分かっていました。
以前、母親に言われていたこと。
__人ではないモノと目を合わせてはいけない。
__自分がソレに気付いてると思われてはいけない。
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『返事しちゃった。しかも思いっきり目合ってるし。』
薄っすらと冷や汗が流れ、開けたままの扉の前で立ち竦んでしまっていた私に、その少女はまた話掛けます。屈託のない笑顔を向けて。
«そんなところに居ないで、こっちにおいで?»
«一緒に遊ぼうや。»
«大丈夫、怖いかもせんけど、怖くないから。»
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恐る恐る近付き、その少女の横に腰を下ろします。
「な、名前は…?」
«ん?んー、名前は無いねんよ。»
「名前が無いの?」
«うん。まあうちのが年上やし、お姉ちゃんって呼びよ。»
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話しているうちに、自然と緊張は解け恐怖心も薄れ、私はいつの間にか夢中になって、その少女。もとい、お姉ちゃんと遊ぶことが楽しくて楽しくて仕方無くなっていました。
___ガチャガチャ。カチャン。
玄関の鍵が開く音がしました。母親の帰宅を告げる音です。
「あ、お母さん帰って来た。おかえりー。今、友達遊びに来てるんやし。」
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帰宅した母が、私の部屋を覗きます。
「友達?どこ?」
「は…?どこって、ここ、に…???」
そこにはもうお姉ちゃんはいませんでした。
お姉ちゃんと遊んだ形跡は、ちゃんと残っているのに…
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慌てて玄関へ向かうも、先程見た白い靴がありません。
『???』
疑問符が飛び交う私の背後から母親が言いました。
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___遊びに来たんかな。
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その時に初めて聞いたのですが、私の2つ上には本来、子供が一人いたそうなのです。
妊娠初期に様々な原因があり流産してしまったそうで。
母は嬉しそうに、時々悲しそうに、そして寂しそうにと表情を変えながらその話をしてくれました。
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__あの子を産んでやれんかった時は、凄い悲しかったし自分をめっちゃ恨んだわ。次にアンタが出来て、あの子の生まれ変わりなんかなって思ったけど…お姉ちゃんとして、アンタと遊びたかったんやろうな。女の子やったんか。そうか。女の子か。
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その3ヶ月後、母の妊娠が発覚しました。
私に妹が出来ました。
姉として遊んだあと、次は妹として私と遊んでくれるのかな。
なんて、そんなロマンチックな事を考えてしまう私なのでした。
作者雪-2
15話目になる作品です。
今回は、ほっこり心温まるようなお話を投稿させて頂きました。
怖く…はないので、怖ポチはあくまでこのお話の「評価」としてポチって頂ければ嬉しく思います。
昨日は、ちょっとしたトラブルやメッセージ欄での呟き的誹謗中傷などありまして、このサイトの退会も考えたのですが、皆様とまだ触れていたい。という私のワガママから、もう少しお世話になることにしました。
※原因となった作品は削除させて頂きました※
不束者ではございますが、よろしくお願いします。いつも私の作品をお読み頂いてくれる読者様、大好きです。
↓2月高評価を頂けました作品達です↓
【赤ちゃん】
http://kowabana.jp/stories/28114
【お嬢ちゃん、遊ぼう】
http://kowabana.jp/stories/28146
【のろす】
http://kowabana.jp/stories/28156
お暇の際に、お目汚しになればと思います。
※駄文失礼しました。
素敵な読者様、かつお友達のろっこめ様が私のキャラを作品内に登場させてくれました!
感謝が降り注ぎます。嬉しさに震えます。僭越ながら、リンクを貼らせて頂きます。
本当にありがとうございます(*'▽')☆
【勧善懲悪】
http://kowabana.jp/stories/28186