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中編3
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輪廻転生

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小学校4年生だった私は、帰宅してすぐに家の違和感に気付きました。

『何か、おかしい。』

その瞬間はその違和感の正体に気付かなかったのですが、玄関を上がり、廊下を歩いて、自室へ入ろうとした時に、感じた違和感の正体に気付きました。

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一人っ子の私の家にあった、自分のものではない子供用の靴。

自室のドアノブに手を掛けたまま、玄関に目をやります。

___ある。自分のモノではない子供用の白い靴が一足。

当時、両親は共働きだったので私が家に帰る時間帯は大概一人でした。

両親がいない。自分一人。自室から感じる空気感。

じっとりと手に汗が滲みます。

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意を決してドアノブを回しました。

怖さに伏せていた目をゆっくりと上げると、そこには私より少しお姉さんに見える女の子が一人、私の部屋の真ん中に座り、私を見上げていました。

«おかえり。»

「え、あ…た、ただいま…。」

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唐突に話しかけられた驚きから、普通に返事を返してしまいます。

その少女が人間ではないことは分かっていました。

以前、母親に言われていたこと。

__人ではないモノと目を合わせてはいけない。

__自分がソレに気付いてると思われてはいけない。

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『返事しちゃった。しかも思いっきり目合ってるし。』

薄っすらと冷や汗が流れ、開けたままの扉の前で立ち竦んでしまっていた私に、その少女はまた話掛けます。屈託のない笑顔を向けて。

«そんなところに居ないで、こっちにおいで?»

«一緒に遊ぼうや。»

«大丈夫、怖いかもせんけど、怖くないから。»

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恐る恐る近付き、その少女の横に腰を下ろします。

「な、名前は…?」

«ん?んー、名前は無いねんよ。»

「名前が無いの?」

«うん。まあうちのが年上やし、お姉ちゃんって呼びよ。»

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話しているうちに、自然と緊張は解け恐怖心も薄れ、私はいつの間にか夢中になって、その少女。もとい、お姉ちゃんと遊ぶことが楽しくて楽しくて仕方無くなっていました。

___ガチャガチャ。カチャン。

玄関の鍵が開く音がしました。母親の帰宅を告げる音です。

「あ、お母さん帰って来た。おかえりー。今、友達遊びに来てるんやし。」

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帰宅した母が、私の部屋を覗きます。

「友達?どこ?」

「は…?どこって、ここ、に…???」

そこにはもうお姉ちゃんはいませんでした。

お姉ちゃんと遊んだ形跡は、ちゃんと残っているのに…

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慌てて玄関へ向かうも、先程見た白い靴がありません。

『???』

疑問符が飛び交う私の背後から母親が言いました。

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___遊びに来たんかな。

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その時に初めて聞いたのですが、私の2つ上には本来、子供が一人いたそうなのです。

妊娠初期に様々な原因があり流産してしまったそうで。

母は嬉しそうに、時々悲しそうに、そして寂しそうにと表情を変えながらその話をしてくれました。

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__あの子を産んでやれんかった時は、凄い悲しかったし自分をめっちゃ恨んだわ。次にアンタが出来て、あの子の生まれ変わりなんかなって思ったけど…お姉ちゃんとして、アンタと遊びたかったんやろうな。女の子やったんか。そうか。女の子か。

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その3ヶ月後、母の妊娠が発覚しました。

私に妹が出来ました。

姉として遊んだあと、次は妹として私と遊んでくれるのかな。

なんて、そんなロマンチックな事を考えてしまう私なのでした。

Concrete
コメント怖い
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ふたば様

コメントありがとうございます。
霊=怖いもの
と考えがちなのですが、そんな中で暖かいお話しを皆様にお聞かせ出来ればと思い今回投稿させて頂きました。

励まし&応援コール…
胸に染みます。
ですが、夜中に釘を打つとは…ふたば様がお風邪でも召されたら大変です!!

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ともすけ様

お返事が遅れてしまい、すいません…
本当にそうだったら嬉しいのですが、妹とはなかなかに貶し合いをしながら、それでも仲良くしていってると思います。ツンデレな私ですが、何やかんやと妹には甘い姉ですから…(笑)

素敵な評価をありがとうございました♬

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雪さん、こんにちは!
大変良いお話ですね。
読んでいて涙しました。
生まれてこられた妹さんには、もしかしたらあの時のお姉さんの想い、優しさを継いで来るのではないかと思います。
そんな奇跡とロマンチックな話に評価したいと思います!

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月舟様

月舟様にもそういう対象の方がいらっしゃるのですね…
何とお声を掛けて良いか分かりませんが…
すいません、語彙が足らずに…

今後とも、私のような駄文錬金術師ではありますが、飽きずにお付き合い頂ければ嬉しい限りです…!!!

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ゆかちん様

遊んだ内容や、お姉ちゃんの顔までははっきり覚えてないのですが、純粋に≪楽しかった≫という感情は今でも忘れることが出来ません。

ゆかちん様の優しく、素敵なお言葉を胸に…
今後も作品を投稿していければと思います…!!!
私はこんなにも慈悲深い方々に恵まれて幸せです!!

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むぅ様

このような体験が出来た私は、本当に家族に愛されていたんだなと思いました。
ええ、もう自分でも引くレベルの≪家族愛好者≫です。
嫁に出た時、ホームシックで毎晩悪夢にうなされたレベルですよ…

むぅ様にも是非読んで頂きたかった…
私の中でも、削除した作品は大きく心に残った出来事の一つでした…
今後も、精進して参りますのでよろしくお願いします!

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マコ様

本当に、生きているって素晴らしい。
この世に生を受けたことに感謝を持って。とはよく聞きますが、この話を投稿して改めて考えることになりました…

お優しいお言葉ありがとうございます。
読者様あってこその私です…素敵な方々に囲まれて私は幸せものだ…

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ロビン様

んな!?
あの有名なロビン様が…!?
コメントを…!?
私如き駄民に…!?

ひえええ……
ありがとうございますありがとうございます!!
ロビン様の作品拝見させて頂いています!
大好きです!

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ろっこめ様

泣いてくれるなんて…!!
嬉しい、嬉しすぎます…そして何て心優しいんや…
ろっこめ様は天使なのですね…
ああ、どんどんろっこめ様に惹かれてゆく…(気持ち悪い←

カツオ友達に笑いましたw
素敵ですw今後、そういう謎の同盟でいきましょうw
と、いうか…勝手に「お友達」なんて言ってしまって、ごめんなさいですよ…!
恥ずかしげもなくぅううう(*_*)。。

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なんだか心暖まるお話ですね(๑´ㅂ`๑)♡*.+゜
雪サンと遊べて嬉しかったでしょうね(๑´`๑)♡

誹謗中傷する人とか余程の暇人なんでしょう。
そんな暇人はシカトですよ(о´∀`о)
雪サンのお話大好きだからこれからも続けて欲しいです(*´ω`*)
次回作も楽しみにしてますね٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

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